第45話『ラースの決断』
――数日後
「ラースさん……」
「ペルシーか……数日しか経ってないのに随分久しぶりな気がするな。色々と大活躍だったそうじゃないか。お疲れさん」
「はい……」
魔人国、女王の屋敷にて。
トゥルースコア所持者やら何やらのゴタゴタとした問題を解決し、帰還したペルシー。
彼女は幾人かの主人公達を連れて俺の下へとやってきた。
そんな彼女だが、随分と元気がない。
「ラースさん……私、夢でこの世界の神様と会いました」
「奇遇だな、俺もだ」
「そう……ですか。なら、あの事も?」
「俺とお前、ついでにラスボスと主人公が全員死なないとこの世界は救われないっていうアレか? もちろん聞いたよ」
「どうするか……ラースさんの方で答えは出たんですか?」
「――そう言うお前はまだ答えを出してないようだな。さしずめ解決策が全く見つからず途方にくれてたって所か?」
ペルシーに限らず、彼女に連れられた主人公達の顔色もあまり良くない。
その事から、主人公達といろいろ相談をしたが解決策が出なかったという事くらい容易に読み取れる。
「……何度もみんなと話し合ったんです。でも……私たちではどうすればいいか分かりませんでした。だから、私とラースさん。主人公達とラスボス達で協力し合って――」
そう言いながら、おずおずと手を差し出してくるペルシー。
それを俺は――
パァンッ――
「………………………………え?」
信じられない物でも見るような目で俺の事を見るペルシー。
当たり前だ。
救いを求めて差し出したその手を……分かり合えたと思っていた相手の俺にはねのけられたんだから。
「兄弟……これはどういうつもりだ?」
「ラースさん!? 一体なぜ……」
主人公達にとっても今の行為は見過ごせなかったものなのだろう。
だが……もう後には退けない。
――退くわけにはいかない。
「さっきの問いに答えてやるよペルシー。俺は答えを出した」
そうして俺はその場に居るペルシーと主人公達を見据え。
「俺は……俺達ラスボスはこの世界に住む奴らを全員殺す事にした」
「………………………………へ?」
何を言っているんですか?
正気か?
なぜ?
そう言いたげに俺を見るペルシーと主人公達。
そんな彼らに、俺は続ける。
「俺やお前が死ななきゃいけない理由。それはこの世界が既に許容量をオーバーしてるからだ。超常の力を持つ俺達がこの世界を圧迫してしまっているって話だな。
――となれば話は簡単だ。それ以外の奴らを全員片づければいい。お前ら主人公達と、この世界に住まう奴ら全員。それだけ片づければ俺達ラスボスはこの世界に定住できると……そうボルスタインは断言した。だから――」
俺は話もそこそこにして、屋敷の壁に向かって魔弾を打ち込む。
当然のように壁には穴が開き、その先には既に出立する用意を終えたラスボス達、センカ、チェシャの姿があった。
俺は自分が空けた壁の穴へと向かいながら、ペルシーと主人公達の方を振り返る。
未だに信じられないのか。青い顔をして震えながらこちらを見るペルシー。
そんなペルシーと視線が重なり。
「俺たちはお前ら含め、この世界に住む奴らを全員殺す。理由は単純で、ただ俺が生き残りたいからだ。とはいえ、この場でやり合うって訳じゃない。幸い、放っておいてもこの世界は半年くらい保つらしいからな。だから……三か月後だ。三か月後から俺たちは片っ端からこの世界の人間を殺していく。そうだな……その時はラスボスらしくトゥルースコア所持者が構えてたっていう居城からスタートするとしよう。手始めに魔人国の人間から皆殺しにしてやる。
それを止めたければ三か月後、トゥルースコア所持者が居座ってたという居城に来い。俺達を止められるとすれば主人公であるお前らだけ。邪魔しに来たならその時こそ決着をつけよう」
俺はペルシーの返事も聞かないまま、ラスボス達を引き連れて飛ぶ。
「待って!!」
静止の声を張り上げるペルシー。
しかし、俺たちは止まらない。
もう
今の俺にとって一番大切な物。
それは、俺を救ってくれた愛しい人。ルゼルスに他ならない。
彼女にはずっと傍に居て欲しい。彼女の願いは全て叶えてやりたい。それこそが俺の望み。
その為なら俺は、この世界を滅ぼす事だって
さぁ、ラスボスらしく始めよう。
大切な何かを守るため。絶対に揺るがない信念を胸に。
そうして、俺達はこの世界の敵となった――
★ ★ ★
これにて第四章完です!
次から最終章となります。
そんなに長くならないと思うのでこのまま連載……といきたいところですが、出張だったり体調崩したりで筆が重くなってしまいストックがまたまた不安な量になってるので少し間を空けます。
一週間くらいしたら連載しようと思ってるのでどうかよろしくお願いいたしますです)汗
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