第22話『セバーヌVSサーカシー』
今回からラース目線でのラスボスVS主人公の戦いです。(しばらく続きます)
ラース達の物語とは関係あるようであまりない気もするので、特に興味ない方はスルーしちゃっていいかもです。
★ ★ ★
「喰らいなサーいっ。大罪の七つ道具フル展・開☆。僕ちんの絶技に酔いしれろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
繰り出されるサーカシーの大罪の七つ道具。七つの拷問道具。
絶対不可避。脱出不可能。そんな能力を備えた物も含む拷問道具がセバーヌに襲い掛かる。
だが――
「――その拷問道具でいったい何人の人間を苦しめてきたんだ?」
それらはセバーヌの横を通り過ぎるだけ。
セバーヌが避けた……のではない。標的を見失ったかのごとく拷問道具は彼を素通りしてしまっているのだ。
「ヂクショォォォォォォォォォッ。当たれ当たれ当たれ当たりさえすればァァァァァァァァァッ」
十字架、杭、アイアンメイデン。
数多の血を吸った拷問道具。それらは今、たった一人の青年に向けられている。
しかし――
「思えば俺の両親もそのどれかにやられたんだよな……。あぁ、どの拷問道具にやられたのか、今の俺なら分かる。
勝ち目の薄い戦いだった……。それでも俺の両親は壊れたお前をどうにかするべく、戦いを挑んだんだな。それでも無理だった場合に備え、人道的じゃないと自らを呪いながら俺にこんな力を残してくれたんだ」
どの拷問道具もセバーヌには当たらない。
そんな中、セバーヌの手が虚空から何かを掴む。
そこには、先ほどセバーヌめがけて投げられ、遥か後方にあったはずの大罪の拷問道具の一つ。嫉妬の拷問道具があった。
それは風呂敷だった。
一見、何の変哲もないただの風呂敷。とても拷問道具には見えない。
しかし、それは嫉妬の拷問道具の名に相応しい能力を秘めていた。
「外見からは拷問道具とは認識できないな。血がこびり付いてるわけでもないし、綺麗な風呂敷だ。でも、こいつに俺の両親は壊されたんだろ? 俺の両親だけじゃない。多くの人がこいつに苦しめられた。お前も、自分で一回体験してみるべきじゃないか?」
そうしてセバーヌは手にした嫉妬の拷問道具をサーカシーに向けて軽く放り投げる。
嫉妬の拷問道具は包んだ対象を絶対に逃がさないという特性を秘めている。
しかし、絶対不可避というわけではない。あくまで包んだ相手を逃がさないだけであって、包むまではただの風呂敷と大差ない。
ゆえに、サーカシーがそんなものにくるまれるわけがない。
はずだった――
「ぴぎゃぁっ!! おのれおのれおのれおのれおのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!! こざかしいこざかしいコザカシイイィィィィィィィィィィィィ。なんてチート能力ですかっ!! いんちきだいんちきだいんちきだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 僕ちんと正々堂々勝負しやがれセバーーーーヌゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」
ふわりと投げられた風呂敷に、なぜかくるまれ始めるサーカシー。
その中にくるまれながら、サーカシーはセバーヌをこれでもかと非難するが――
「圧倒的なまでに強いくせにだまし討ちだったりの卑怯な戦法を好むお前には言われたくないよ。それに、お前も十分チート枠だ」
静かにそんなサーカシーを心底軽蔑した目で見ながら言い放つセバーヌ。
とは言っても……サーカシーの言い分も間違ってはいないんだよなぁ。
先ほどから不可思議な現象しか起こしていないセバーヌ。
そんな彼の能力、それは――『自身が望んだ未来を現実にする』という能力だ。
セバーヌがそうあるべきと望むだけで、彼の想いのままに現実は歪められる。
一応、設定では可能性すらない未来を引き寄せることは出来ないとの事だったが、この世に絶対なんてないと豪語するセバーヌさんに不可能なんてない。
それこそがセバーヌというウルトラチート主人公だ。
そういう能力だからこそ、絶対不可避であるはずの拷問道具は彼にあたらないという結果に終わった。彼がそう望んだからだ。
彼がその手に拷問道具を握るという未来を選択したからこそ、彼の手にはいつの間にか拷問道具が握られているという結果が現実となった。
更には『軽く放り投げた嫉妬の拷問道具がサーカシーを捕らえる』という未来を彼が望んだからこそ、サーカシーはあっけなく嫉妬の拷問道具に捕らえられたという結果が現実となった。
正直、対策なんて打ちようがない程のチートだ。
本当の本当の本当にどうしようもない。
「僕ちんの道具ごときが僕ちんを捕らえられると本当におもってるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? えぇい、こんなもの……こんなものぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
しかし、サーカシーもただでは終わらない。
所有者の特権ともいうべきなのだろうか。包まれれば絶対に出られないはずの嫉妬の拷問道具から徐々に抜け出してきていて――
「さすが外道とはいえ、最強の力を持ったラスボスだな。なら――そんなお前が永遠に苦しめられるっていう未来を俺がくれてやる。今までお前が苦しめてきた人たち、その苦しみを今度はお前が味わえ。お前には死すら生ぬるい。こうして二度と会う事がないよう、あらゆる因果を徹底的になくしてやる」
嫉妬の拷問道具が再びサーカシーを包み始める。
更に、その嫉妬の拷問道具の中に吸い込まれるようにして他の拷問道具までもが姿を消していく。
「ぎぃっぐっぎゃはぁぁぁぁぁぁっ。ぎひっ、ぎゃははハハハハハハハ。よくも、ヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモォォォォォォォッ!! ゼッタイにゼッタイにゼーーーーーッタイにゆるちませんからねぇぇぇぇぇえぇぇぇぇっ!! オボエテナサイセバーヌゥゥゥッ。次に会ったら問答無用で僕ちんが殺してやるっ。もう遊んだりしないもんっ。次に会う時が楽しみですねええええええ。ぎゃひっ。ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
そんな断末魔の叫び声を上げながら、嫉妬の拷問道具に包まれるサーカシー。
後に残ったのは嫉妬の拷問道具のみ。
それを――
「俺を殺す……か。いっそ、そうしてくれていたら良かったかもしれないのにな。
――と言っても、そもそもお前は人を殺せないか。まったく、その悪辣な力のせいでどれだけの人が苦しめられたか……。けど、生きる意味を見つけてしまった俺は複雑な気分だよ。お前のその制約に感謝するべきなのか、それとも恨むべきなのか……どうすればいいんだろうな?」
そうして、サーカシーを取り込んだ嫉妬の拷問道具に語り掛けたセバーヌは腕を横に振るう。
そうすると次の瞬間、先ほどまであったはずの風呂敷こと嫉妬の拷問道具はその姿を消した。
かくして、セバーヌVSサーカシーという世界を持ち越しての二度目の勝負はセバーヌの勝利で幕を閉じたのであった――
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