第21話『一件落着? そして――』
さて、現在女王様であり、主人公召喚士でもあるペルシーはセンカと仲良くお話中だ。(洗脳されている最中とも言うかもしれない)
一つの激しい戦いが終わり、着実に良い方向へと進んでいる。
しかし、忘れてはいけない。
まだ全てのラスボスと主人公の戦いが終わった訳ではないのだ。
「ただいま、ラース。そちらも終わったようね」
「あぁ、お帰りルゼルス。……ってあれ? ボルスタイン? 一体どうしたんだ? 眠っているように見えるけど……それにリリィさんは……」
ルゼルスを倒した主人公優馬。
そんな彼を足止めすべく、ルゼルス、ボルスタイン、リリィさんの三名は別の空間で戦っていたのだが……どうやらそれも決着し、ルゼルスはこうして無事戻ってきてくれたらしい。
しかし、他の二人は?
ボルスタインは目をつぶったままルゼルスの魔術によって運ばれているし、何よりリリィさんの姿も見えない。
まさか――
「ああ、リリィなら私の影の中に潜って寝ているわ。未来視を使い過ぎて少しだるいと言っていたわね。ボルスタインの方も大丈夫。優馬に何かされていたけれど、眠っているだけみたい」
「ほっ。そうなのか」
どうやらボルスタインもリリィさんも無事らしい。
つまり、こっちの損害は今のところ0か……。本当に良かった……。
「それにしても……ラース、アレは何? 放っておいていいの?」
そうしてルゼルスは視線をペルシーとセンカの居る方向へとなげる。
そこでは絶賛センカの有難いお話を聞くペルシーさんの姿があり。
「主人公召喚士のペルシーを倒したまでは良かったんだけどな……。その後で――」
と、そこまで俺が言いかけ。
「――その後で我らが女王様が少し暴走してしまってねぇ。君たちが相手していた優馬君の召喚を取り消してはくれたものの、このラース君に交友関係の広げ方を聞き始めたのさ。それでどもるラース君に代わり、今はレディセンカがああして女王様のお相手中さ」
そう言って俺のセリフを取るジェスト。
ウルウェイ・オルゼレヴを倒した主人公である彼だが、その彼自身あまり争いを好む主人公ではない。この場で警戒する必要はほぼ無いだろう。
「ジェスト……まぁいいわ。それにしても……センカも
「それは同感だなぁ。最初の頃は引っ込み試案というかなんというか……あまりにも自分に自信がない子だったからなぁ。それを思えばかなり変わったと思うよ」
「くすくす。そう言うあなたもかなり変わったと思うわよ、ラース」
「え、そうか? 自分ではそんな実感ないけど……例えばどんなところが変わった?」
「そうね……愉快な馬鹿が愉快な大馬鹿になったわね」
「ダメじゃねぇかっ!?」
そうして笑い合う俺とルゼルス。
さて――
ルゼルスやボルスタインの無事を確認できたところで、本題に戻ろうか。
俺は、未だに戦いを継続しているラスボスと主人公達に目を向ける。
ココウVSルクツァー。
セバーヌVSサーカシー。
クルベックVS
等々。
ふぅ――
「なぁ、ルゼルス。ついでにジェストもさ。一応聞いておきたいんだけど……あいつら、どうすればいいと思う?」
「どうにもならないわよ」
「どうにもならないねぇ」
即答かつ満場一致。
薄々分かっていた事だが、放置しておくしかないらしい。
「そもそも、心情的にも私は彼らの中に介入したくないわ。なにせ、今の彼らはゲーム内では成し得なかった物をここで果たさんと猛っている。
実力だけで言えば……そうね。ココウとルクツァーの戦いに関してだけなら私が介入すればなんとかなると思うわよ? でも、他は心情的な理由を抜きにしても遠慮したいわね。斬人の邪魔をすると私でも消滅させられてしまうかもしれないし……特にサーカシーとセバーヌの戦いは誰にも止められないでしょう?」
「そうだねぇ。特にウチのセバーヌ君はチート野郎だからねぇ。覚醒しちゃった今、彼を止められる人なんて居ないんじゃないかな?」
「……だよなぁ。ならやっぱり見守るしかないかぁ。こんな光景滅多にみられるものでもなし。この演目を客として楽しむのも悪くはない……か」
ラスボスと主人公はどれもこれも規格外すぎる。
同じラスボスであるルゼルスが介入したとしても、その争いを止められるかは未知数だ。
その中で特にインチキなセバーヌとサーカシーに至っては……誰もその戦いを止める事など出来ない。どうにもできる訳がない。
なので――
どうにもなんねぇなと悟った俺は、開き直って生で展開される主人公VSラスボスという熱きバトルを遠目に見て楽しむ事にした。
――――――あ、ルゼルスさんっ。とびっきり強力な防御結界的なのお願いしますっ。俺も防御結界張るけど、とばっちりの一撃で割れる未来しか見えないんだっ!
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