第35話『今後の方針』
「居たな」
アニメ『コード・アミデロヒー』の主人公であるコウが消えた。
俺たちは健一の家に押しかけ、その事も交えながら今後の方針について話し合っていた。
ちなみに、リリィさんは現在自由の身だが、コウが消えて放心状態になってしまっていたため、センカが手を繋いでここまで引っ張ってきた。
「少なくとも俺の目にはコウが自分から消えたようには見えなかった。それに、あいつの力は俺もよく知ってるけど、あんなふうに消える力なんてなかったはずだ。だから俺はさっきのアレを召喚が解除されたから消えたんだって思ってる。つまり……主人公召喚みたいな能力を持ってるやつは居る。俺はそう考えている」
「そうね……。私はそれを見ていないけれど、そう考えておいた方がいいと思うわ」
ルゼルスが俺の意見に賛同してくれる。
主人公……それは味方となれば頼もしい仲間と成り得る奴らだが、敵にすると厄介極まりない者達。
別に序盤はいいのだ。基本的に主人公は序盤は弱いものだからな。
だが、あいつらはそれでも絶対に諦めない。敵がどれだけ強大で、自分が弱いと自覚していても絶対に折れないのだ。
そうして物語が進むごとに成長し、果てには謎の覚醒で強くなったりもする理不尽な存在。それが主人公だ。
「さて、そんな奴らが居ると仮定したうえでだ。俺は……その召喚者の捜索に本腰を入れたいと思ってるんだが……どうだろう? リリィさんとの契約は果たしたけど、それとは関係なしに俺はコウとリリィさんを会わせたい」
「――っ」
静かに息を飲むリリィさん。
リリィさんは自分の身を犠牲にして兄を助けた。
そんな二人の感動の再開に水を差すなど、天が許しても俺が許さない。おそらくたまたま召喚解除のタイミングが悪かっただけだと思うが、それでも俺はコウ探しに協力したいと思うのだ。
「――――――ふぅっ。おせっかいな人ですね。一歩間違えればストーカーですよ?」
「自分の兄をストーキングしてた妹さんにだけは言われたくないな……」
「ストーキング? 馬鹿を言わないでください。私は影ながら兄さんを警護していただけです」
超絶ブラコン妹であり、設定資料集にて幼いころは兄の後を決して気づかれないように追跡していて、兄が利用したもの全てをコレクションしていると記載されていたリリィさんが語る。
「それを世間ではストーキングって言うんだよ……」
力なく項垂れる俺。
本当にこの妹(リリィさん)ときたら……兄であるコウに対する愛情が深すぎて凄いんだからなぁ。
「ラース様がそう言うならセンカは賛成ですよ?」
「お姉さまがそう言うなら私も賛成」
「ラー君がそう言うならルールルもいい……よ?」
「アリスは楽しそうならなんでもOKだよ~♪」
口々に賛同してくれるみんな。
そして――
「くすくす。面白くなってきたわね。私も異論はないわ。――私も、またあの男に会う事になるのかしら……」
賛同し、かつてまみえた敵の姿を思い返しているであろうルゼルス。
――そう。リリィさんの兄がこの世界に居たという事は、同時にルゼルスを含む他のラスボスと相対していた主人公達もまたこの世界に居る可能性があるという事。
もちろん、主人公召喚なんて言う能力を持っている奴が居たと仮定しても、そいつが俺が召喚したラスボスと同じ世界線の主人公を召喚するとは限らない。
しかし、可能性はゼロではない。
少なくとも今回コウの姿を確認したことで、その可能性は少し上昇した。
「ひっ、ル……ルールルは怖い……です。マサキには……会いたくない……です」
びくっと身を震わせるルールル。
気持ちは分かるが……しかしどうしたものか……。
――なんてことを少し考えていたのだが。
「で、でも……ルールルはラー君と離れたく……ない。マサキに会うかもしれないって思うと怖いけど……でも……今は一人でいる方が怖いかも……です」
きゅっと俺の手を握るルールル。
いや……ホント誰ですかアナタ?
ルルルール・ルールルさんですよねぇ? 狂ってなかったらこんなキャラだったんですか? 今までと全然違うじゃないですか。
なんて思いながらももちろん口には出さない。
代わりに俺は子供をあやすようにルールルの髪を優しく撫で、
「大丈夫だ、ルールル。今のルールルならマサキに目を付けられることもないだろ。あれは敵対する奴には容赦ない主人公だが、そうじゃない奴には興味すら示さない。そういう奴だよ」
ゲームを通して、主人公マサキの考え方も俺は分かっているつもりだ。仮に奴がルールルとこの世界で再会してもそこまで酷い事にはならないと思う。
そう言ってルールルを安心させる。
「――という訳でだ。まずはその主人公召喚持ってるやつの捜索に本腰を入れつつ、生意気にも魔王とか呼称されてるエセ魔王達の殲滅を進めていきたいと思うんだが――」
「さらっと目的が増えてるわね(ボソッ)」
小さく突っ込みを入れてくるルゼルス。そこ、うるさいですよ?
そんな突っ込みをスルーして俺は次にどこへ行くか提示した。
そう――
「次こそは――魔人国に行こうと思う」
魔人国。
その実態が謎に包まれた国。
国交も何もなく、しかし魔人という種の存在だけはハッキリと確認されており、国もあるとだけ分かっているだけの国家。
オラ、ワクワクすんぞ?
当然、ここでも仲間全員が賛成してくれた。
チェシャだけは賛同してくれるかは少し読めなかったが、センカが賛同したのを確認した彼女は自身もすぐに賛同していた。一体二人に何があったのやらだ。(聞いても教えてくれなかった)
そうして次の目的地を定めた俺たちだったのだが、
「あーー、少しいいか?」
それまで口を挟んでいなかった健一(人間ver)がそこで間に入ってきた。
「お前ら、魔人国に行くって言ってたけどよ……どうやって行くつもり……いや、違うな。魔人国ってのがどこにあるのか分かってんのか?」
そんなよく分からない事を健一は聞いてきたのだった――
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