第24話『ルルルール・ルールルの始まりと終わり』
奇妙な感覚だった。
知らないはずなのに知っている事。
まるでゲーム画面の中で動く自分自身の事を第三者目線でみているような……そんな感覚。
そうして俺が見ているのは他でもない。ルルルール・ルールルの記憶だ。
彼女のこれまでの経験が、感じた物が、まるで自分の身に起こったことであるかのように脳裏に刻み込まれる。
「もうやめてよぉぉっ! もう何度も何度も……やなのぉ……もう終わってぇぇぇっ!!!」
「あぁ? 何言ってんだこのアマ?」
これがルールルの始まりの記憶。
何度も何度も殺され、しかし自身の祝福によって何度もリスタートさせられる。
ルールルを殺し続ける男にとっては一度の殺害だったとしても、ルールルにとってそれは何万回も繰り返し続けられる拷問だ。
「あは。終わらない。おわ、あは、アハハハハハハハハハハハハハハハハ」
そんな事を続けられれば肉体が死なずとも心が死ぬ。
そうして廃人となるはずのルールルだったが、彼女はこの時、幸か不幸か新たな力を手に入れた。
「いっでぇっ! な、なんで!? 俺の胸に穴がぁぁぁぁぁぁ!?」
「………………ル?」
それが平等であると認められたのなら、ルールルを中心とした空間の概念を書き換える異能。
最初にルールルが作成した
そうして受けた絶望、受けた痛み、受けた痛みをルールルと襲撃者の男は共有し合い――結果、両者は壊れた。
「ふ、へへ。オワ……しなせ……ひへ、ひへへへへへへ」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハ! 平等平等平等! 人類皆平等ですぅぅぅぅぅ! ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルゥゥゥゥゥゥゥ♪♪♪♪♪♪」
男は壊れ、再起不能。
しかし少女――ルルルール・ルールルは平等を愛する狂気そのものとなり果てた。
だが――
「死ねない」
多くの人間を殺しても、自分が死ぬことはない。――否、終わる事はない。
死んでも時は巻き戻り、運命が彼女を終わらせてくれない。
「ルールールルルールルルルルー。誰も彼もが平等な世界。右の頬を叩かれれば左の頬を打たれる。アァ、スバラシキセカイ」
ルールルの定めた
自分がどれほどつらい目に遭っても大丈夫。
だって、世界は平等だから。全員が同じだけの痛苦をいずれ味わう。もしくはこの痛みを忘れるほどの幸福がルールルに訪れる。そうに決まってる。
ああ、しかし――
「だけど……終わらない」
何もかも平等。
死も平等。
しかし、その中で唯一『ルルルール・ルールル』だけが終われない。
永劫に続く輪廻を延々と歩いている。
「でも、大丈夫。だって、この世は平等ですから♪」
既に平等でないとどこかで気づいていて……しかし気づかないふりを少女はする。
もっと多くの人に死を、終わりを、終焉を運ぶため少女は狂気をばらまく。
そうして終わりをばらまいた後、きっとそれらは平等に加害者であるルールルを終わらせてくれるはず。
そう彼女は信じていた。
だが――
「世界が平等……か。案外可愛らしい考え方をしているんだな」
「ル? 可愛い? ルルルゥ♪ 照れちゃいます」
「いや、実際可愛らしいと思うよ。男を誘うその外見も含め、頭の中身まで可愛らしいものだったとはな。だからこそ――救えない」
「ル?」
「平等なんて言うのはまやかしだ。だが、それでもお前が平等を好むというなら良いだろう。俺が受けてきた過去の痛み……お前にも体験してもらおうか。お互いの過去を知り合わないと平等じゃない。そうだろう?」
「びょう……どう? ……あぁ、そうです。そうですね♪ ルールルもマサキの事、もっとよく知りたいです♪」
「ああ、存分に俺の事を知ればいいさ。代わりにお前の過去も見せろルールル。それが平等というものだろう?」
「わっ。もしかしてプロポーズですか? いいですいいですねいいですよぉ♪ 誰にも受け入れられなかったルールルのこれまで。ぜーーーんぶマサキに見せちゃいます♪ ルルルルルゥ。マサキ、壊れちゃうかもですけどいいですよね?」
「これまで何万もの人間を壊したお前らしくもない。とっとと記憶の共有を始めろ。それともその前に地面にキスさせた方がいいか?」
「キャハッ。ゴ・ウ・イ・ン♪ そんなマサキも素敵ですけど、ルールル色に狂ったマサキも見たくなってきました。だから――」
『――
互いに合意したがゆえに認められた新たな
そうして両者の記憶が交じり合う。
マサキにはルールルのこれまでの記憶が追加されてゆき、逆にルールルにはマサキのこれまでの記憶が追加されていく。
結果――
「ひやっメッい、イヤァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
ルールルが発狂した。
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