第23話『向けられた殺気』
――教会本部
俺、ルゼルス、センカ、ルールルの四人は教会本部へと招かれていた。
先日、仲間になったチェシャは自分が居ると邪魔になるでしょうから控えているとの事だった。何かあった時の備えとして後続は必要でしょうと主張していたのもあり、その通りにさせてやっている。どこに潜んでいるのかは俺にも知らされていない。
ちなみに、教会に正体がばれているっぽい俺達だが、一応黒十字の使徒として呼ばれているので仮面を着用している。
「ようこそおいでくださいました黒十字の使徒の方々。私は当教会の教皇、名をラングと申します。――――――おや? 黒十字の使徒は三人組だったはずですが……」
俺たちの応対に出向いた初老の男性。
教皇と言うだけあって、周りと比べ豪華そうな修道服を身に纏ってる。
そいつが俺たちを見て首を軽くかしげる。
「ええ、つい最近一人増えたのですよ。多くの信者が今この時も真なる神である我が神に祈りをささげてくださっています。そうして力を得た我が神が新たな使徒を創り出したもうたのです」
黒十字の使徒モードで応対する俺。
黒十字の使徒のメンバーは三人と言われている。実際、ついこの前までは俺とルゼルスとセンカの三人だった。
だが、今はそれに加えルールルが居る。
一応、世間で言われている人数と
ルールルの能力を加味した結果だ。彼女は空間に
だが、この能力は自分の周囲にしか作用しないのだ。
そんな彼女を後方に配置しても意味がない。そして、ルールルは死なない(死ねない)ので後方という安全地帯に控える意味もない。
そういう意味では、不死じゃない俺かセンカが後ろに引っ込めばいいだけの話なのだが、俺は俺で教会をこの手でぶっ潰したいから後方に控えるなんてまっぴらごめんだし、センカはそんな俺から離れるのを拒む。
――というわけで、世間とのズレを承知したうえで俺たちは四人で教会本部に来たのだ。
まぁ、もともと警戒されてるだろうし……更に警戒させても問題ないだろ。という半ば思考放棄した結果でもある。
「――ここに来て………………――しかしもう修正は………………こほん。なるほど。そうでしたか。あなた
「構いません。私も、仮に自分たちの信ずる真の神をどこぞの輩に偽物だと言われたら信じられないでしょうからね」
「ご厚意、感謝します。しかし、それではどこまで行っても平行線です。そこで私たちは黒十字教の使徒であるというあなた方に試練を与えたいと思うのです」
「試練……ですか?」
「ええ。まぁ、立ち話もなんです。奥で話すとしましょう。付いてきてください」
「分かりました」
俺たちは教皇と名乗る男に付いていく。
教会本部の奥へ、そのまた奥へと俺たちを誘う教皇。そんな中を俺たちは周囲を警戒しながら進んでいく。
そうして奥へ奥へと入り組んだ通路を通り、幾人かの教会の人とすれ違う中、ルールルが愉快そうに声をあげる。
「ルルルゥ♪ 思った通り、歓迎されてないみたいです」
「分かるのか?」
周りに聞かれないよう、小声で会話する。
「はい。すれ違う人たちがルールル達に向けているのは殺気です。ルールルは命を狙われる機会だけは多かったのでそういうのに敏感なんです。ラー君やルゼルスちゃんの予想通り、何か仕掛けてくるつもりだと思いますよ?」
「なるほど」
ルールルが言うなら間違いないだろう。彼女はあまり頭は良くないが、その感覚は信頼できる。
「殺気……ねぇ。私にはそんなもの感じ取れないわ」
「センカもです。どうやったらそんなの感じ取れるんですか?」
「ルゥ♪ いーっぱい命を狙われたり、何度も死んだりしたら嫌でも分かるようになりますよ? なんて言うんでしょう。こう……冷たくてピンっとしてゾゾゾっていう感覚です」
簡単には言い表せない感覚なのか、えらく抽象的だ。
当然、「さっぱり分からないわ(分かりません)」と理解するのを放棄するルゼルスとセンカ。まぁ、今の説明で殺気を感じるコツを掴めるんなら苦労しないだろう。当然、俺にもさっぱり分からなかった。
そうしてどれくらい歩いただろうか。上に上がったり下に下がったりとやたら複雑な道を歩かされ、最終的にやけに広い部屋に通された。
しかも、どういう仕組みなのかその部屋はやけに明るかった。白い光が頭上から部屋全体を照らしているのだ。
そしてその広い部屋には武装した騎士っぽい人から豪華そうな修道服を纏った者やら、身分の高そうな人たちが揃っていた。
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