第18話『永続召喚による反動』


「ル?」


 そうして、ルルルール・ルールルの永続召喚に成功する。


 肩の少し上あたりで揃えられているピンク髪。

 青みがかった黒の瞳。

 外見年齢は16歳程度。胸は大きくはないがある程度はある。

 見た目はか弱い女の子といったものだ。


 この世界では珍しいピンクのワンピース服と、ひらひらと揺れるピンクのロングスカートを身に纏うルールル。スカートから覗いている華奢な足は見る側の情欲を煽る。上も谷間が見える服装なので同様だ。


 いつもなら召喚するルールルに少しの間、見惚れる俺。

 だが――半ば予想していたアレがやってきてそれどころではなくなった。


『――ルルルール・ルールルの永続召喚に成功しました。

 以後、召喚者が死亡しようとも永続召喚は継続されます。

 被召喚物が完全なる死を迎えた場合のみ永続召喚は終了します。その場合、再召喚は出来ません。

 ――――――永続召喚ボーナスを獲得しました。

 召喚者には永続召喚した被召喚物のステータスの10%が付与されます。

 召喚者は永続召喚した被召喚物の技能の一部を獲得します。

 ※憑依召喚と異なり、永続的に肉体の機能を変化します。

 その為、召喚者はしばらくの間、身動きが取れなくなります。ご了承下さい』


「やっぱ……来た……か……」


 ルゼルスを永続召喚した時と同じような痛みが全身を襲う。

 いや、あの時よりは幾分かマシか。

 今回、永続召喚したルールルのステータスは低い。

 そのぶん、俺の肉体にかかる負担が軽減されているのかもしれない。


 とはいえ、激痛である事には変わりがない。

 俺は自分自身を支えられず、その場にたおれてしまうのだが――


「もう……ラース様はまた無茶ばかり」


 固い地面の感触ではなく、柔らかな物が俺を包む。


「こうなるって予測してたのに……痛い思いをしてまで永続召喚することないじゃないですか」


 優しく俺を抱きとめるセンカ。

 ゆっくりと――俺の体をそっと横たわらせてくれる。

 俺の体を俺以上に気遣ってくれているのが分かる。

 今回はルゼルスを召喚したときより痛くない。

 だから、声を出すくらいは可能だろう。そう思い、俺はセンカへと感謝の言葉を告げる。


「あり……がとう」


 俺が言葉を発せた事に軽く驚くセンカ。だが、すぐに優しく微笑みながら――


「お礼なんかいりませんよ。というか、そんな無理して喋らないでください。無理がたたってラース様に何か後遺症が残ったりしたらそれこそセンカは泣きますし、怒りますよ?」


 そう言って俺に無理をしないようにと言う。

 正論でしかないので俺は黙ることにした。


「本当にラース様は無茶ばっかりして……見ているこっち側の気持ちにもなってくださいよ。これじゃあ割に合わないです」


 いや、別に死ぬわけじゃないんだから無茶でもなんでもなくないか?


 ――なんてことを思う俺だが、センカにとってはそうじゃないらしい。この永続召喚ボーナスによる痛みも十分無茶の範囲に入ってしまうのか……。

 

 心配させて悪いとは思う。

 でも……悪いな。それを理由に止まろうとは微塵も思えないんだ。


 俺は全てのラスボスを永続召喚したい。

 そして彼らと語り合いたい。拳で語るのもいいだろう。


 そうして――救われなかった彼らをこの世界で救いたい。


 それが密かに抱いている俺の目標の一つだ。


「でも……言って止まるラース様じゃないですもんね。だから永続召喚や通常召喚に関してはもう半分諦めました。無駄遣いは止めますけどね。あ、でもでも、憑依召喚だけは何があっても禁止ですからね? ラース様がラース様でなくなっちゃうなんて絶対に嫌です。ラース様が憑依召喚しようとしたら、センカはどんな手段を用いてでも止めて見せるんですから。えと……その時は……こうするのもいいかもしれませんね――」


 何やらもじもじしながら頬を赤くするセンカ。

 そうして……ぎこちない動きでセンカは動けない俺の唇を奪っていった。




「!?」

「おー、ラー君のセカンドキッスだ~。あれ? サードキッスだっけ? まぁともかく、ルゼルスちゃん以外では初キッスですね。センちゃんに取られちゃいました」

「ファーストキスでないのが残念ね。ラースをからかったり焚きつけたりするために口づけを奪ってしまったのが悔やまれるわ。センカには悪いことをしてしまったわね」


 外野のルールルとルゼルスが好き勝手に何か言っている。

 だが、文句を言おうにも物理的に言えないし、そもそも喋ろうとするだけで痛いのは継続中だ。


「――ふぅ」


 ゆっくりと、顔を真っ赤にしたセンカの顔が離れていく。

 彼女は誰の真似なのか。くすくすと笑って横になった俺の頭を正座した自分の膝の上にそっと乗せる。

 俗にいう膝枕というやつだ。


「くすくす。いっつも心配させるだけでラース様はサービスが足りないんですよ。だから、これくらいの役得があってもいいですよね。ふふっ♪」


 ――はぁ。

 まったく……センカには敵わんな。


 まぁ、いいか。別に俺もセンカの事が嫌いなわけじゃないし。今まで心配させまくってきたツケと考えれば仕方ないとも思える。

 それになにより、永続召喚ボーナスの反動で体が動かないのは変わらないしな。

 大人しく寝ていよう。


 半分開き直った俺は、柔らかいセンカの膝を枕にして寝るのだった――


★ ★ ★


 小話。


ルールル「ところでルールルの出番は?」

ルゼルス「完全にセンカに持っていかれたわね」

ルールル「そんなぁ……うルうル」

ルゼルス「出番が欲しいなら割って入ればよかったじゃない」

ルールル「そんなことをしてたらルゼルスちゃん、絶対に止めてたでしょ?」

ルゼルス「まぁ……そうね」

ルールル「それに、今代のルールルは恋する女の子の味方なのです。だから、センちゃんの邪魔なんかしないよ? 偉い? 偉い?」

ルゼルス「はいはい、偉いわね」

ルールル「わーい。やったー。ラー君の正妻さんに認められました~。ルルルゥ♪」

ルゼルス「別に私はラースの正妻でもなければあなたを認めた覚えもないけど……まぁいいわ」


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