第3話『現状の俺たち』


 一年近い修行とレベル上げだけで俺より強くなってしまったセンカ。

 そんなセンカと俺の現状のステータスはこんな感じだ。


★ ★ ★


 ラース 16歳 男 レベル:99(MAX)


 職業クラス:ラスボス召喚士


 種族:人間種


 HP:4327/4337


 MP:198789/上限なし


 筋力:1663


 耐性:1189


 敏捷:1317


 魔力:11076


 魔耐:12203


 技能:ラスボス召喚[詳細は別途記載]・MP上限撤廃・MP自然回復不可・MP吸収・魔術EX・炎属性適性・魔力操作


★ ★ ★


 センカ 16歳 女 レベル:38


 職業クラス:影使い


 種族:人間種(50%)、魔人種(50%)


 HP:1832/5832


 MP:2075/6075


 筋力:2319


 耐性:1861


 敏捷:2143


 魔力:1681


 魔耐:1718


 技能:操影そうえいEX


★ ★ ★



 見よ。このステータス差を。

 魔力や魔耐などを除き、センカの能力値は既に超えているのだ。

 ………………いや、おかしくね?



 さて、このステータスだけ見ても相当強いセンカだが、彼女の真の強さはステータスが秀でている事などではない。

 センカを強者たらしめているのは、そのチートとしかいえない技能だ。



 修行の成果なのか、影の操り方をマスターしたセンカの技能は『操影』から『操影EX』となった。

 影はセンカ本人よりも素早く光速。

 影は鉄だろうが岩だろうがまるでバターでも斬るかのように何物をも容易く両断する。


 そんな影をセンカは手足のように扱えるのだ。ある意味、理想的な武具といえるかもしれない。



 弱点として、影のないような場所ではセンカは技能を使用できず、かなり弱体化してしまうが、それでも元のステータスが俺より遥かに高いのだ。大抵の敵が相手ならば弱点足りえない。



 ああ、それとだ。

 俺のレベルだが……悲しむべきか喜ぶべきか迷うところだが、カンストした。

 レベル99。このように稀にレベルをMAXまで上げる奴が現れるのだとギルドや王様から教えてもらった。

 レベルは上がれば上がるほど上がりにくくなる。

 だから、俺のようにMAXまで上げる奴は珍しい部類に入るとのことだ。


 ただ、それはあまり喜ばれる事ではないらしい。

 繰り返すが、レベルをMAXまで上げること。これ自体はとても凄いことなのだそうだ。それだけの修羅場を潜り抜け、自身の成長限界まで身体能力を上げた証となるのだから。


 だが、成長限界まで身体能力を上げきったということは、それ以上成長しなくなるという事でもある。その人間の成長限界。それがレベルMAXなのだとか。


 さて、そんな成長限界に達したらしい俺のステータスだが……ぶっちゃけ以前とそんなに変わっていない。

 MPだけは貯めまくったよ? これに関しては上限なんてないからね。


 ただ……ね? 他のステータスの伸びしろ低すぎない?


 純粋にステータスとしてだけ見ればなるほど。俺のステータスはA級冒険者に匹敵するレベルだ。そんなに悪くはない。

 更に身体強化の魔術を使用することで、俺はA級冒険者をも超えた力を得ることができる。十分強者といえる能力値であると言えるだろう。


 だが、思い出してほしい。これはカンストしたレベルの能力値である。

 俺は思うのだ。


 カンストした能力値でこれは……弱くない?


 しかも、俺のステータス数値はルゼルスを永続召喚したときに加算された数値による影響がでかいのだ。正直、あのボーナスで上がった数値を差し引いた場合、俺のステータスは下級冒険者レベルのステータスとなる。

 そんな感じで裏技を使用してようやくA級冒険者に匹敵するレベルのステータスでしかないのだ。正直、ちょっと泣きそうである。


 ああ、それとだ。

 俺のMP吸収について。この三年で新たに分かったことが二つある。


 一つ目。

 このMP吸収技能。今までは俺が魔物を倒すことで相手の強さに比例したMPを得る事ができる技能だと思っていたのだが、少し違った。

 正確には俺か、俺の仲間が魔物を倒すかダンジョンのコアを破壊することでMPを得る技能のようだ(ルゼルスとセンカが魔物を倒したりコアを破壊しても俺にMPが入ってきたので間違いないだろう)。

 本来ならダンジョンのコアを破壊した場合、破壊した者は『コア作成』技能を得られるのだが、俺がコアを破壊した場合は技能を得ない代わりに大量のMPを得られるみたいだ。

 

 二つ目。

 このMP吸収技能。どうも俺のラスボス召喚と連動しているらしい。

 というのも、ルゼルスを永続召喚してからというもの、MPが溜まりにくくなったのだ。


 ルゼルスを永続召喚する前までは、ゴブリンなどの雑魚を倒せばMPが5手に入った。

 しかし、ルゼルスを永続召喚してからはゴブリンを二体倒さないとMPが5手に入らなくなっていたのだ。


 それだけじゃない。


 この三年の間、俺は諸事情により、MPを100000貯めても永続召喚をしなかった。

 それは別にいいのだが、MPを100000貯めたとき、MP吸収技能に変化が起こったのだ。

 端的に言うと……ゴブリンを4体倒さないとMPが5手に入らないようになった。


 どうやらこのMP吸収技能。俺がラスボスを永続召喚するか、MPが100000溜まるか毎に溜まり方のハードルが上がっているらしい。


 ――とまぁ、俺のステータスについてはこんなところでいいだろう。 


 さて、センカの強さについての話に戻ろう。

 現状でも彼女は俺より強い(もちろん俺がラスボス召喚術を使用した場合はその限りではないが)。

 なにせ、カンストした俺の能力値を既に超えてるんだからな!!


 そしてそんなセンカのレベルはまだ38。

 センカもこの三年の間、かなりの魔物を倒してはいるのだが、魔人という種がそういうものなのか、レベルが上がりにくいのだ。

 だが、その代わりレベルが上がった時の数値の跳ね上がり方が並みの人族とは比べ物にならない。

 俺のレベルがカンストしてこれ以上能力値が上がらないのに対し、センカは更に強くなる余地を残しているのだ。

 そんなセンカがレベルMAXまで上げたらどんなチートキャラになるのか……少しだけ恐ろしくもあり、同時にとても楽しみでもある。



 ――とまぁ、センカについてはこんな感じである。俺より遥かに強いチートキャラとなってしまったこと、お判りいただけただろうか?


 そして、一方のルゼルスもラスボスだから俺よりも遥かに強い。


 なので、このパーティーにおける俺は間違いなく最弱の存在だった。

 人族単位で見た場合、そこそこ上位に入るというのにだ。泣けてくるね。


 召喚術を使えば話は違ってくるが、アレはMPを消費するし、危ないからとセンカに使用を禁じられている。

 もちろん厄介な敵が相手のときは通常召喚を許してくれるけどね。

 ただ、この二人にとっての厄介な敵なんてそうそう居ない。それこそ、ダンジョンの主が相手の時に許してくれる事があるかな程度である。





「まぁ、今は大人しくしていなさいな、ラース。この程度の雑魚にあなたの力なんて不要だし……ねっ」

「あ、ラース様。髪が少し乱れていますよ。センカが直してあげますね。――邪魔です。影槍えいそうの丘」


 

 などと、日常的な会話を交わしつつ数多の魔物を駆逐するセンカとルゼルス。

 そこには俺が求める、ラスボス級に強い二人が織りなす圧倒的な演武があった。


 格好いい。心が躍る。

 なんでもない事のように黒炎で魔物を駆逐するルゼルスも、魔物を一瞥するなり、その影を槍へと変えて魔物本体を突き殺すセンカも、圧倒的に強くて見ていてワクワクする。


 そう思うのだが……。


「もう完全に俺ってばお荷物じゃん……」


 そう俺がぼやいている間も二人による魔物の駆除は続き、数分後には視界内にいる魔物は全滅していたのだった――

 

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