第53話『拷問時間』

★ ★ ★


 前書きというか補足

 現在、ラース君はサーカシーを憑依召喚中の為、思考が結構ぐっちゃぐっちゃになってます。

 ゆえに、一人称が乱れまくってます。ご了承ください。


★ ★ ★


「この……クソがぁぁぁぁぁぁっ」


 自身の再生能力を活かし、串刺しから抜け出すアイファズ。

 いいねぇ。あれで終わったらつまらない。

 俺は拘束から抜け出したアイファズを指さし、次なる拷問道具を顕現させる。


「――対人間用拷問器具、第二十七番機構、炮烙ほうらく――」



 アイファズの眼前に突如、大きな鉄製の筒が現れる。

 驚異的な身体能力を有するアイファズは突然現れた筒に一瞬身構える。


「こんなものっ――」


 邪魔だと言わんばかりに現れた筒を斬り捨てようとするアイファズ。

 だが、それよりも早く筒から四つの鎖が飛び出てアイファズの四肢を拘束する。


「なんだこれ……ちくしょぅ、離せぇっ――」


 なんとか拘束から逃れようとするアイファズだが、生半可な力ではあの鎖は外せない。

 アイファズを拘束した鎖はそのまま筒の元へと戻り、アイファズを筒にはりつけにする。


「――焼け――」


 炮烙ほうらく

 それは磔にした者を徐々に焼いてゆく拷問器具だ。

 鉄の筒は熱を持ち始め、罪人を徐々に焼いていく。

 そうしてゆっくり、ゆっくりと罪人を灰へと変える。


 もっとも、人を殺せない僕ちんの使う拷問器具は全て不殺の加護がかかっているから罪人は灰になってもまた再生するんだけどねー。僕ちんってば優しい!!


「いっぐっあぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「あーひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ。んー♪ 心地いい悲鳴ですねぇ。愉快愉快。ケケケケケケケケケケケケケケ」


 手を叩き爆笑する。

 あぁ――嫌いな奴の上げる悲鳴というのは本当に心地いいですねぇ。癖になりますよ。


「ふざっけんなよぉっ。こんな事してなんに……ぐぅ。何になるって言うんだよ。僕は不死身の存在なんだ。だからこんなの無意味なんだよぉっ!」


 その身を焼かれながらも抵抗するアイファズ。

 確かに、この拷問方法では彼を倒せないでしょうねぇ。

 でも――お前、何か勘違いしてるんじゃないです?


「よいしょっとぉっ――」


 僕ちんはその身を焼かれるアイファズの元へと行く。


「兄……さん……殺して……やるっ」 


 そんな僕ちん……俺に対して殺意を向けるアイファズ。

 純粋な殺意がその瞳にはあった。


 ――あぁ、楽しみだ。


「いいぞぉ。反抗的な態度を取る奴は大歓迎だぁ。それを屈服させるのが楽しいんだよねぇ。ケケケケケケケケケケケケケケ」


 俺は乱暴にアイファズの髪を掴み、それを炮烙ほうらくに押し付ける。

 肉の焼ける音がする。「ぎゃぁっ」と悲鳴を上げるアイファズの声もまた甘美なものだ。


「いいですかぁぁぁぁ? 僕ちんはお前を殺そうとしてるんじゃない。苦しめて……苦しめて……苦しめ続けたい。ただ、それだけなんですよぉぉぉぉ。ぜぇぇぇぇぇぇったいに殺してあげませんから覚悟してくださいねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 俺のルゼルスを苦しめた罪。

 俺のルゼルスを抱きしめた罪。

 センカを辱めた罪。

 ついでに俺に対する不敬の数々。


 ――絶対に許さない。死すら生ぬるい――


「さぁ――お前は灰になってもコンティニューが出来るんでしょう? ほらほら、頑張って。あぁ、そうだ。お前に一つ朗報です。僕ちんはルゼルスたんと違って不死身でもなんでもないからちゃーんとお前にもまだ勝ち目はありますよぉ。だから頑張れ頑張れ。きひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」

「この……異常者……がぁっ――」



★ ★ ★



 楽しい楽しい拷問の時間は続く。

 串刺し死、焼死、凍死、転落死、毒死。

 あらゆる方法でアイファズを苦しめる。


 あぁ――楽しいなぁ――


 何度も何度もアイファズを苦しめる。

 そのたび、僕ちんの不殺の加護も加わり驚異的な再生能力を見せるアイファズだが、その表情がだんだん絶望へと染まってゆくのを感じる。

 怒り、憎しみが恐れ、畏怖といったものへと変化する様は見ていてとても心地いい。


 幾度か、アイファズが不意をうって僕ちんに剣を振るおうとする。

 しかし、



「――対人間用拷問器具、第二番機構、十字架の戒め――」


 その度に僕ちんは対人間用の拷問道具でそれを阻む。

 最も、この十字架の戒めは拷問道具というよりは拘束道具に近いがね。


「ぐっ、クソ……またこれかっ――」


 アイファズを拘束していく真っ赤な十字架。

 それは、今までに多くの血を十字架が浴びた証だ。

 この十字架は僕ちんの意のままに動き、人間の生き血をすする。


「もうやめっ……あぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 血をすすられるアイファズ。

 その表情はとても……いい♪

 とはいえ、血を啜るだけのこの拷問はあまり僕ちんの好みじゃない。


「戻れ、十字架の戒め」


 僕ちんの声に従って十字架は僕の所有する異空間『拷問器具庫』へと帰っていく。

 拘束の解けたアイファズは、しかけてこない。それだけの気力がないのですかねぇ?


「さぁ、どうしたんですかぁ? もっと頑張ってみましょぉぉぉ。まだ僕ちんはぜーんぜん傷ついてないのですよぉぉぉぉぉ。ほらほら~。おしーりペンペン。ケキャキャキャキャキャキャキャキャ」



 子供のように尻を軽く叩いてアイファズをからかう僕ちん。

 そしてアイファズきゅんは今までと同じように怒り狂って僕ちんに熱烈なアタックを――


「ひっ――」


 ――仕掛けてこなかった。

 もう完全に僕ちんに対し、恐れを抱いていますねぇ。


「い、あ、も、もう、付き合ってられるかよ!」


 そう叫び、脱兎の如く逃げ出すアイファズ君。

 あぁ、逃げられるなんて、悲しいなぁ。悲しいなぁ。

 



 ――絶対に逃がさないけどな。

 俺はアイファズ、お前を絶対に許さない。そう決定したのだから。


「――対人間用拷問器具、終章、第四十九番機構、鉄の処女(アイアン・メイデン)――」


 対人間用拷問器具、その最後の一つ。鉄の処女(アイアン・メイデン)。

 対象が僕ちんの視界にいる限り、その抱擁からは絶対に逃げられない。

 ――瞬間、アイファズを取り囲むように無数の可憐な乙女の像が現れる。


『ふふふ』

『うふふふふ』

『あははは』


 可愛らしい声を奏でる乙女の像達。

 彼女たちはひとりでに動き、取り囲んだアイファズへと手を伸ばす。


「なんだこれ、離せ、もう、もう嫌だぁっ」


 がむしゃらに剣を振り回し、乙女達から逃げようとするアイファズ。

 だが、もう遅い。お前はもう乙女たちの供物となるしかない。


『あはははは』

『うふふふふ』

『おいで♪ おいで♪』


 可憐な乙女の像の一つがニッコリと笑みを浮かべ……二つに割れる。

 割れた像の中身。その中には鋭利な刃物が所狭しと並んでいる。

 他の乙女の像達がアイファズを捕らえ、二つに割れた乙女の中に奴を押し込もうとする。


「やめっ、いたっ、もういやだぁっ、助け、助けて、助けてよ兄さんっ。ぼ、僕たちは家族だろ!?」


 遂に、さっきまで殺意を向けていた俺にまで助けを求めてくる。

 あぁ、もう――十分か。


 俺は起動していた鉄の処女(アイアン・メイデン)の動きを止める。

 そして……最後となる言葉をアイファズへとぶつける。


「そうだな、アイファズ。お前は俺の弟だ。こんな風に争う事になるなんて、昔は考えもしなかったよ」

「そ、そうだよ兄さん。今までの事は全部……そう、ほんの出来心だったんだ。反省してる。だから――」


 俺が鉄の処女(アイアン・メイデン)を停止させた事で少し余裕が出来たのか。媚びるようにして笑うアイファズ。

 だが……もう遅い。


「ああ、そうかそうか。出来心なら仕方ない……訳がないだろう?」

「………………え?」

「お前から手を出したんだ。そもそも、俺はお前と仲良くしようとしてただろう? その手を振り払い、更に俺を傷つけたのは他ならないお前の意志だ」


 最初期、俺はこのアイファズと良好な関係を築こうとしていた。

 それを拒否したのはアイファズだ。


「えと……それは、その……」


 必死に言い訳を考えているアイファズ。

 俺は「はぁ」と溜息をつく。


「まぁ、その件についてはいいさ。結果的にとはいえ良い方向に転んだからな。あのまま剣聖の家に居たらラスボス召喚に目覚めることもなく、腐っていってたかもだしな」

「な、ならっ――」

「でもなぁ、アイファズ。お前が俺の一番を……ルゼルスを傷つけた件。これに関してだけは絶対に許せねえんだよぉっ!!」


 ――鉄の処女(アイアン・メイデン)再起動――


 停止していた可憐な乙女の像達が再び動き出す。

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