第47話『永続召喚』
腰まで伸びた血よりも濃い赤の長髪。
見る者を恐怖させる金と銀の
恐ろしいほどに美しい、その幼くも妖艶さを感じさせる顔。
そして、数千年を生きたからこそ出せる圧倒的支配者然とした態度。
その
彼女、ルゼルス・オルフィカーナは再びこの世に顕現した。
「ごきげんよう世界。そしてお初にお目にかかるわ、アイファズ・トロイメア。私の名はルゼルス・オルフィカーナ。かつて一つの世界を滅亡の危機にまで追いやった災厄の魔女よ。以後、お見知りおきを――」
ルゼルスはその身に纏うゴスロリ服のスカートを軽く持ち上げ、綺麗な礼を見せる。
その後、イジワルっぽく口に手を当てて笑いながら、
「――もっとも、あなたは今日この時を持って終わるのだけどね」
アイファズに対して死刑宣告を告げる。
そうして彼女が召喚されて数秒後、俺の視界に変化が現れた。
例のシステムメッセージが視界に映ったのだ。
『――ルゼルス・オルフィカーナの永続召喚に成功しました。
以後、召喚者が死亡しようとも永続召喚は継続されます。
被召喚物が完全なる死を迎えた場合のみ永続召喚は終了します。その場合、再召喚は出来ません。
――――――永続召喚ボーナスを獲得しました。
召喚者には永続召喚した被召喚物のステータスの10%が付与されます。
召喚者は永続召喚した被召喚物の技能の一部を獲得します。
※憑依召喚と異なり、永続的に肉体の機能が変化します。
その為、召喚者はしばらくの間、激しい痛みに苛まれます。ご了承下さい』
そんなシステムメッセージを視認した次の瞬間、俺の体に異変が現れる。
「ぐっ――」
別に傷を負ったわけではない。むしろ、逆だ。
アイファズに刺された胸の傷。それが高速で治癒されていく。
だが、それだけじゃない。
先ほどまで感じていた痛みが
「ぐっ……あっ……うっ――」
全身が激しい筋肉痛により悲鳴を上げるような、そんな感覚。
そう、肉体が根本から作り変えられていくような感覚だ。
「じっ……がっ……あぁっ――」
大声で叫んで痛みを紛らわせようにも、そうしようとするだけで激痛が走り中断させられる。
眩暈が、吐き気が、俺を襲う。
「ラース様!?」
「やめなさいセンカっ! 今のラースに触れてはダメよ。下手をすれば死ぬわ」
「あ、あなたは……一体……」
「私の名前はルゼルス・オルフィカーナ。まぁ、私の事は後でラースにでも聞きなさい。今、ラースは生まれ変わろうとしている最中なの。でも、その負担は計り知れない。ゆえに、ちょっとした刺激も今の彼には与えてはいけないわ。どうなるか分からない」
「でも、こんなに苦しんで……それに、あの人から逃げないと――」
「安心しなさい。しばらくすれば痛みも引いて動けるようになるはずよ。――ふふっ、その時が楽しみね。まさか私の力の一部を彼が使えるようになるだなんて思ってもみなかったわ。ホント、ラスボス召喚という技能は反則じみているわね」
「な、何がおかしいんですか!? それよりも早く逃げないとあの人が――でも、触ったらダメって……うぅ、どうしたらいいの」
「安心しなさいなセンカ。ラースが準備を終えるまで貴方たちの事は私が守るわ。
――ツー・エス・ウェヒター――」
「え? これは――結界の魔法?」
「魔法とは少し違うのだけど……まぁその認識でいいわ。この中に居る限り、貴方とラースは安全よ。その間に私は――あのクズを殺すわ」
「ひっ――」
「ん? あぁ、ごめんなさい。貴方を怖がらせるつもりはなかったのだけどね。まぁ、あなたはラースの容態でも看てなさい。こちらはあまり見ない事をお勧めするわ。トラウマになっちゃうかもだしね。くすくす」
そんなセンカとルゼルスのやり取りが聞こえてくるが、俺は身動き一つ取れないし、声を発することも出来ない。
俺にできる事。
それは、これから訪れるであろうアイファズの悲惨な最期を目に焼き付けることだった。
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