第19話『デスロータル?』



ルールの創造者、ルルルール・ルールルを憑依召喚してから24時間が経過しました。

 召喚が解除されます』



 そうして憑依召喚が解ける。


「ル? あらら、もうそんな時間ですか?」


『まさか最後まで休まずに魔物を狩るとは思わなかったわ……』


「ルー♪ 言ったでしょう? ルールルは尽くす女の子なのです。だからルゼルスちゃん? ラー君に私も永続召喚するようにってお願いしてくれないかな?」


『……まぁ、言うだけ言ってみるわ』


「ありがとー。それじゃあ、まったねー♪」



 そうしてルールルの憑依召喚が解け――――――俺の意識は覚醒した。



「………………」


『……大丈夫、ラース?』



 戻ってきた俺をルゼルスが心配してくれている。



「ル? ……じゃない。いや、一応大丈夫ではあるんだが――」



 ぽりぽりと頭を掻いて、先ほどまでの己の凶行を思い返す。

 その中で特に強く感じた事を――俺は一言だけ告げた。


「死ぬのって――――――すげぇ苦しいんだなぁ。出来れば一生、知りたくなかったぜ」



 体感時間にしておよそ数か月。その間、おぼろげとはいえ、ルールルの感じた死ぬ苦しみを共有してしまった俺はそうぼやかずにはいられないのだった。



★ ★ ★



 ――早朝、冒険者ギルド


 俺はルールルが狩ってくれた魔物の部位を彼女が作った入れ物? に入れてギルドへと入った。


 すると――


「なんだか表が騒がしいな……。ってえぇ!? 魔物がなんでこんな場所に!?」


 一番に出迎えてくれたテラークさんに魔物扱いされてしまった。


「いや、俺ですよテラークさん。ラースです」


 このまま撃退されては敵わないので無害をアピールする俺。


「へ? あ、ああ。兄貴か……」


 そこでようやく拳を治めてくれるテラークさん。

 だが、その周囲に居る人たちは未だに俺に対して武器を構えていた。


 さて、なぜ俺がこんな魔物みたいな扱いを受けているかというと――


「しっかし兄貴どうしたんだよそれ……。全身真っ黒だけどそれ、まさか全部魔物の血か? ってか服はどうしたんだよ」



 そう――俺は事もあろうに真っ裸で全身に魔物の返り血を浴びた状態だったのだ。

 全身からは魔物くさい匂い。しかも色合いがどう見ても人間のものじゃない。初見の人間が俺を魔物と勘違いするのは無理ない事だった。


「返り血を浴びすぎちゃったんですよ。服は――――――なぜか素材の入れ物? になってました」


「入れ物って……うぉやべぇ!? なんだこのぐちゃぐちゃになってる魔物素材!? おい兄貴、こんなんじゃ仮に討伐証明にはなっても買い取ってなんかもらえねぇぜ?」


 俺の持つ入れ物? の中に詰めてある魔物の素材を見て驚愕の声を上げるテラークさん。そんなテラークさんが助言とばかりに苦言を呈する。


 それに対して俺は――


「だよねー」


 激しく同意した。


 入れ物? にごちゃごちゃと入っている魔物の素材。

 これはルールルが討伐した魔物の部位を適当に引きちぎって入れたものだ。

 

 こんな状態の素材をまともに買い取ってくれるところなんてないだろう。

 そもそも、これが魔物の討伐証明になるかすら怪しいものだ。


「しかし兄貴……その恰好、まるでどこぞの蛮族みたいですぜ?」

「うっせぇ。言われなくても分かってるよっ!」


 正直、俺だってこんな目立つ蛮族スタイルで歩きたくなかったのだ。

 歩きたくなかったのだが――仕方ないでしょう?


『あなたが目を覚ました時には既にその状態だったものね。本当、ご愁傷様しゅうしょうさまとしか言えないわ。まぁ、ルールルにまともな魔物討伐が出来る訳がないから仕方ないわね』


 まぁ、それは確かに。

 むしろ、こうして雑ではあるけど討伐証明になるかもしれない? 程度に素材を集めて来てくれたことを感謝するべきだろう。

 服は入れ物にしてなかったとしても返り血だらけで着れたもんじゃなかっただろうからなぁ。


 ルールル、魔物に対してその身一つで返り血なんか全く気にせず戦ってたし。それを一日中続けてたらそりゃあ体は返り血だらけにもなるよ。



「それじゃあ俺はクエスト達成の報告をしてきますね。いやまぁ、ちゃんと達成扱いになるか分からんけど」

「じゃあ俺もついていきますよ兄貴。兄貴に伝えたい事もありましたしね。ついでにギルドの職員が文句けてきたら断固抗議してやるぁ」 

「うん、お願いだからやめろな?」


 俺を半ば神格化してるテラークに対し注意して俺は男のギルド職員にクエスト達成の報告をして魔物の素材(乱雑詰めセット)を職員に渡した。

 ちなみにそれを受け取った職員はかなり嫌そうな顔をしながら受け取っていたが、まぁ気にしないでおこう。


 そうして職員が魔物の素材を確認する間、テラークと話をする。


「それで、伝えたいことって?」


「ええ。兄貴に伝えなきゃって思った事なんですけどね? なんでもこの街に『デスロータル』の奴らが現れたらしいですよ?」


「ほう。……え? なにその『デスロータル』って?」


「そこからですかい!? ま、まぁいいや。『デスロータル』ってのはクソみたいな仕事を請け負う集団です。なんでも各国に根を伸ばし、暗殺から薬、奴隷売買まで行っているとか――」


「へー」


 まぁ、日本でいうヤクザ、マフィアみたいなものかな。


「それで? その『デスボーカル』さんがこの街に何しに来たの? しかも俺と関係なさそうなんだけど……」


「兄貴、『デスボーカル』じゃなくて『デスロータル』です。いや、それがですね? 奴ら、兄貴と似た名前をしているらしい『ラース・トロイメア』って奴を探しているみたいなんですよ」


 ………………俺やん。


『あなたね』


 俺に関係、滅茶苦茶ありました。

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