アウトロ

「あははははははは!」


 イッツ・ア・スモールワールドの真ん前で灰谷は爆笑した。スマホに届いた伽天からのLINEを読み、ネット検索をかけた。勿論コンテストの結果を見てからの爆笑。


「リュウ、どうしたの?」

「いやっ、なんでもないんだステファニー!」


 灰谷の恋人、ステファニーは灰谷を見ながら怪訝そうな顔をする。ミッキーのグローブに、ミッキーの耳を着けた灰谷に、気でもふれたのかと心配そうな顔をする。


「にしても、ケッサクだよ。観たかったなぁ」

「ディズニーやめて、行けばよかったかな?」

「ステファニー?学校がよかったのかい?」

「リュウが一緒なら、どっちでも!」

「そうなのそうなの?なら来年のバースデーはうちのコンテストだね!おれが良い物魅せるからね!」


――次は獲る。待ってろMVM

それにしても、プーさんのハチミツポップコーンは美味だなぁ



「2年連続の快挙、おめでとうございます」


 浮かない顔をした泉に、つとめて気丈に言ういちご。


「ハリーさんがいい人でよかったけど、もう【charm】は解散だね」

「でも、最高でしたよ」

「うふっ、ありがとう。君たちも凄くよかったよ」


 恥ずかしそうな顔をして5人は顔を伏せた。


「来年はきっと、灰谷くんのバンドとも戦うだろうね」

「勝てる気はしないですがねぇ」

「勝ち負けにこだわるタイプだったっけ?椎名さんは……」


 灰谷には、ある意味頭が上がらない。


「とにかく、頑張ってね!」

「まずは、バンド名決めないと!」

「あれっ?あれで決まったんじゃ……?」


寂哉に全員の冷ややかな視線が降り注ぐ。



「まさか、お前の曲が盗まれてたなんてな」

「いや、借りてっただけですよ」


 学園の屋上で横並びになり、冠城とハリーさんが夕焼け空の下座っている。


「うんまっ、何このエビチリバーガー」

「飛ぶでしょ。これがオレの実力っす」

「お前、この学園に収まってていいのかよ?」


 ジャックダニエルの瓶を傾けて冠城は訊いた。中身は麦茶だが、昔から彼等はこのスタイルなのだ。


「オレは多分、ここが一番落ち着くんすよ」

「……お前らしいな」

「それに、なんか面白くなりそうですし」


 にやりと笑うハリーさんに、微かな予感を感じる冠城。コンテストを見て、昔の血が騒ぎ出す。また、ドラムを叩いてみようかな。


「冠城さん、こないだ那覇の校長が来てたんですよ」

「?」

「なんか、ありそうじゃありません?」

「……何を企んでる?」

「いや、冠城さん、今度飲みにでも行きましょうよ。皆と一緒にね」



「次、ぼくらも狙ってみようかな」


 いつもの軽い感じで庸平が寂哉に言った。珍しく近所のマックに寂哉を誘う。話したいことがあるというから寂哉はついていった。


「誰と組むんだい?」

「まだ決めてないんだ。キーボードなら決めてるけどさ」

「なるほど、舞奈か?」

「まぁ、あいつも僕のほうがいいだろうし」


――きっと、舞奈もそう思ってるに決まってる。


「まずは、バンド名決めないとね」

「それ、皆に言われるんだよなぁ」

「決めないと、佐須が言うよ。決めないなら、俺っちが決めてあげるよってね」


――それは勘弁。

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