♯1 希望side
――校歌がガンズの【Welcome to the jungle】なんて、本格的にいかれてやがる。
おれは校舎に入った瞬間にそう思った。だって、ジャングルにようこそだぜ?普通の学校じゃ間違いなく、ないだろ。しかも、学園長。レミー学園長!あれはどっからどう見たって、MOTERHEADのレミー・キルミスターを意識してる。間違いなく。
そんな中、比較的なんか人畜無害そうな男子。名前は若杉だったかな。そいつが入ってきて、実際少しほっとした。内心は、全身スタッズだらけのスパイキーヘアのパンクスや、革パンをブーツにインしたメタラーばっかだったらどうしようかってヒヤヒヤしてたところだから。
「行くぞ行くぞ!」
「ほら、行かなきゃ遅れるよ~」
少しほんわかしたような雰囲気の、頭に緑の色つきのピンをつけた小柄な女子に促された。彼女は中学持ち上がり組だろう。
「あの、何が起こるの?」
「【野試合】だよ。要するに対バンってやつかな」
「ここで?」
「うん。この【野試合】に勝ったバンドは、購買の本日のおすすめパンが貰えるんだよ」
「しかも、本日のおすすめは、購買のハリーさんって人が一バンドぶんしか作らないの」
「へぇ~、そんなに?」
「あたしは食べたことないんだけど、野試合に勝った先輩曰く、あれを食べたら他の店のどんなパンも負けるんだって」
沙月が教えてくれた。その絶品パンを求めて熾烈な戦いを繰り広げるって訳か。
「どのバンドがうまいの?」
「ほら、そこにいる5人よ」
おれは目を向けた先には、信じられないくらい綺麗な顔をした女?いや、あの制服は男だ。女子生徒がこぞってキャーキャー言っている。
「【shining quarter】。野試合無敗の王者。ボーカルの
「ほ~」
「それにほら、見てみてよ」
明らかに、浮いている人がいる。目を擦ってみたが、明らかにパン1。ベースの長身の男はパン1だ。
「ありゃダメだろ」
「それが、あのベースはやばいのよ。【shining quarter】のリーダー、
見ると、アメリカのコメディで出そうなストライプのハットを被った眼鏡が真ん中に立っている
「全校生徒のfreak boys and girls諸君!お待たせ致しました!お待たせし過ぎたかもしれませんねって、全〇監督かこの野郎って、オレ様はお待ちかねM.C luckyだよろしく!ok!今日の野試合のバンドは此奴らだcome on!」
苦笑する一同、4人組バンドが一歩前に出る。
「皆ご存知無敗のトップランカー【shining quarter】に対抗する勇者はこいつら、野試合のニューカマー【STARSHAKER】!さぁてどんなgroovyなROCKをぶちかましてくれんのかな?さて、今日のハリーさんのおすすめは、こいつだ!」
ざわつく中庭。こっちじゃあんまりよくは見えないが、M.C luckyがフィルムがついたパンを掲げている。
「エビチリバーガーだ!」
どっと中庭が沸き立った。M.C luckyがマイクを向けると【STARSHAKER】のフロントマンが言った。
「今日は頑張ります、自信はあるんで、精一杯やります」
M.C luckyのマイクを奪うと、灰谷は言った。
「とりあえず、オレ腹減ってんだよ。今日もハリーさんのエビチリバーガー、きっちり戴くぜ。いいよな」
わーっと校舎が沸き立つ。
「先攻は?」
「あちらさんでいいぜ」
灰谷が言った。一言放つ度に女子からキャーキャーという嬌声が上がる。
「それでは、【STARSHAKER】よろしく!曲は……?」
「【FIND MY FUTURE】」
フロントマンがギターリフを刻み出した。ギンギンに歪んだディストーション。ベースはプレシジョンベース、ピックでゴリ押し。かなりテンションが上がるアップテンポな曲。
かなり楽しそうに演奏している。正直、曲もいい。高校生レベルにしても、かなりレベルが高く感じる。勢いがあってテンションがゆっくりと上がってきた。
「凄い、これがML学園高等部の演奏か……」
「驚くの、まだ早いんじゃない?」
首をコキッと鳴らした灰谷が立ち上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます