決戦!奴隷商人と法規隊と、砂漠を股にかける協力者達!
Act.79 荒ぶる伝説の目覚め
しかしそこは
そして
「とんだ事件勃発だが、これは好機だぜ? あの奴隷商人の豚ヤロウは、アルテミスの月が齎す恩恵に
「だが頭……あちらにはジェミニの双子に加え、バカみてぇに強い傭兵娘と魔人族のビーストライダーがいやがるんだ。下手打ちゃ俺達の方がボコられて――」
「臆病風ふかしてんじゃねぇよ、ザギス。おれ達はなんだ? あの旧王朝で暗躍したカクウの末裔……その程度の手勢にビビってちゃ仕事はできねぇ。幸いにもあのワンのヤロウは、遠くど田舎の料理店でよろしくやってやがるんだ。」
「ならば今こそ、おれ達が新生カクウとしてこのザガディアスへ名乗り出てやろうぜ。」
日が昇り、大騒ぎとなる下層街のボロ長屋にて。奴隷達を監禁する長屋から離れた別の建物で、日を逃れる用に終結するは反任侠の集団。総勢150名以上の荒ぶる不逞が、頭と呼ばれた者の号令を待っていた。
「いいかヤロウ共! これよりおれ様、ドゥージェ・ホーを中心とした新たなカクウ結成を宣言する! 奴隷商人もワンの野郎も関係ねぇ……おれ様達こそが、このザガディアスの新たなる――」
鼻息荒く集う輩共は、今こそ旗揚げの時と息巻いていた。ドゥージェ・ホーと名乗る夜盗を絵に書いた様な男が、旧王朝伝来の手足先を窄めた作りに豪華な刺繍施す服に身を包み、
まさに真理の賢者が危惧した一触即発の事態。が――
集まる烏合の衆が直後、響いた声に戦慄を覚える事となったのだ。
「いやはや、これはこれは。これほどまで我がカクウ内部に反乱分子が潜んでいたとは……この私も一本取られましたか。」
声に反応し、その姿を視界に入れた烏合の衆の一部が、悲鳴とともに腰を抜かした。
「な……なんでテメェがここにいやがる!? 北のど田舎料理店で、よろしくやってんじゃなかったのかっ!?」
「おや? これは意な事を。すでにあなた方カクウの反乱分子が、このクォール・ジェルド民街へ潜んでいるなど、調べがついていた所――」
「それをこの私が……この俺、古より伝わる真のカクウを継ぎし頭領である、ゾォソウ・モウトクの子孫であるワン・イェンガー・モウトクが見逃すとでも思っているのか?」
次いで反任侠の頭領が吹き出す汗のまま影へと叫ぶや、影より返された言葉は
それがかの三帝烈国最後の猛将にして皇帝である、ゾォソウ・モウトクの血統である真実を宣言したのだ。
即ちこの
∫∫∫∫∫∫
150対1――
その数の差をものともしない影は、ワン・イェンガー。カクウの
されど皇帝ゾォソウは三帝烈国時代、幾度もリーフェィを窮地に追い込んだ稀代の名将であり、智将としても武将としても
「ひーーっ!? く、来るなーーっ!」
「どこから攻撃……ぎゃぁ!?」
「くそが……あんなカビの生えた伝説の中の武将崩れが――ぐぁっ!?」
そして今、かつての名声を現在に呼び起こす者は紛れもなく、かのゾォソウ皇帝の血脈である男であった。
集う反任侠集団の中央へ飛び込むや、手を覆う手甲が妖しく煌めくと、無数の輝きが陽光を反射させ宙を舞う。それは糸……それもただの糸に非ず。
正しく一騎当千の糸捌きを見せる影は、紛う事なき三帝時代の皇帝に連なる者である。否――
「……うわぁ、容赦あらへんなぁ(汗)。つかラグーはん、モノマネ程度とか抜かしはってたけど――」
「ええ、これは
「ウィスパはんもそう思うわな……。なにせあの口パクの声の主は、陰で声のみを精霊通信端末越しに喋っとるメイメイはんのもんや。んでもって、メイメイはんの声がワンのダンナまんまっちゅう恐怖。ウチ、ほんまにあのワンはんがそこにおるんか思たわ。」
なんとあのワンと言う存在を、気怠い猛将 ラグーと苦労人策士 メイメイが二人で一人を演じると言う、驚愕の作戦であった。されど猛将がモノマネを開始した途端に、彼女のゾーンとでも言えるそこに入った事で姿に仕草はカクウ首魁そのものとなり――
加えて精霊通信によって放たれる策士の声は、カクウ首魁となんら遜色ない恐るべき気配を実現させていた。
さらに展開される戦闘術は、実際にカクウ首魁が得意とする
彼女が大した武器を操れぬと漏らした下りは、一般的な武具全般が苦手である事を差しており、己が扱う戦術が特殊である事の裏返しであったのだ。
空を切る高周波が幾つも飛び、その度に反任侠集団が悲鳴の中追い立てられる。150人はいたはずの不逞が、気が付けばほとんど地を舐めさされる事態となっていた。
「頃合いやな……クォール・ジェルドの自衛兵はんら、出番や!」
そこに来て
不逞の頭領もしまったとばかりに視線を飛ばせば、その先……あろうことか眼前で猛威を振るう三帝時代の血脈に並ぶ存在が顔を見せていた。
「今我らの民は不安定な時期であり、そこで
「こうも見事に混乱に乗じるとは、
響く声は地の底より迫りくる
クォール・ジェルド民街統治者にして、三帝烈国時代皇帝の一欠。キョジュン・チューボアが、信頼に足る群衆でも自衛を生業とする兵を集めて、不逞の輩を取り囲んでいたのだ。
そのまま歩み寄るや、
「そこは安心召されよ、キョジュン・チューボア殿。もはやこの様に
「早々にそちらへ突き出し、お縄とすべき浅ましい賊でしかありませぬ。いやはやこのワンも、カクウの名を貶められ
元来己が師でもあるカクウ首魁にさえ並ぶ相手へ、姿さえ偽って言葉をかけるなど正気の沙汰ではない。ないが、苦労人策士が声だけ演じるワンは、さも相手が同列の如く会話を繰り広げて行く。
姿だけ演じる気怠い猛将の、両足が震えていようとお構いなしであった。
「さて、ワン殿もこう仰っている事アル。皆の者、もはやここで地べたを舐めるはカクウにすら
「「「「おおおおおおーーーーーーっっ!!」」」」
「「「「ぎゃあああぁーーーーーっっ!!?」」」」
「「う、うわぁ……(汗)」」
カクウ首魁を演じる猛将の一騎当千からの、伝説の血統登場ののち発された、拷問タイムと言うパワーワード宣言。下賤な賊の末路を想像してしまった、
ほどなくカクウ内乱とも言える事態へ、一つの終止符が打たれる事となった。
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