Act.78 決戦の予感、豪商国騒乱の幕開け
連星太陽が朝を照らしていくばくか。事態を把握した
「くっ……このティー・ワンで一体なにが起こっている!? リューオウ橋の通行を一時禁止し、クォール・ジェルド民街へは住民の一部区画へ立ち入り禁止の協力を要請しろ!」
「しかし……あの民街の統治者が、素直に承諾するのですか!?」
「分かっている! 確かに盟約により、あちらへの政的干渉はできないが――」
その統治者が商国と締結している、政治的不干渉の盟約が
「構わぬ。その交渉には私が向かおう。君達はすぐに動ける様に、下層国民の一部避難準備を整え給え。」
「ジャ……ジャン・コー大統領補佐! ですが……――」
「いいから行き給え。幸いにもあの
「は、ははっ! 直ちに下層民の避難準備に向かいます!」
そうして
「いつぶりか、あの御方と相まみえるのは。全く……この私でさえ足が
馬を走らせ進む中、独りごちる屈強なる補佐官は知る者が見れば珍事とも言える、自嘲に満ちた微笑を浮かべていた。現に建物へと辿り着き、馬から降り立った彼の足が僅かに震えていた。
それはこれより相対する者が、如何に恐ろしき存在であるかを物語る。
震える足で
さらに最奥――
待ち侘びたとばかりに現れた影を目にし、屈強なる補佐官が一層顔を強張らせた。
「何を緊張しているアル?
「あなただからであります……現クォール・ジェルド民街は、旧王朝代表――」
「貧民街……とは言わぬアルね。」
「……っ!?」
現れた酔狂な衣装を纏うは、補佐官からすれば体躯も小さく、筋骨隆々とは程遠いひ弱ささえ目に付く。だがしかし、彼が放つ言葉で緊張が警戒に切り替わった補佐官は、吹き出る脂汗を抑えるので精一杯であった。
「安心するアル。あくまで見て、聞いていただけアルね。今この上層は、あのフェイ嬢が大統領アル……その辺は
彼の言葉に補佐官が震え上がるは即ち、見て、聞いていたとの下り。それは秘密裏に行われていたのが明白であり、何かしら不備があれば、それこそ秒で命を取るも叶うとの意味が込められていたから。
さらに吹き出す汗を、手に取る布で拭う屈強な補佐官を、クツクツと一瞥する影がようやく圧を解き――
「ではこちらへ客人をお招きするアルよ。今は悠長な事は言っていられぬ状況……この三帝烈国はツァジェン・チューボアの末裔、キョジュン・チューボアは喜んで同胞をお迎えするアル。」
広げられた手の中、不敵な微笑を浮かべ、名乗りを上げた男は高らかに宣言する。
己がかの
∫∫∫∫∫∫
荒ぶる砂漠地帯の異変に国家を挟む大河川異常に加えた、西に広がる遺跡後で多発する異獣への備えにと、国家防衛に奔走して来た
それは今まで上層と下層に於いて厳守されて来た、国家間盟約さえ
だが、その中心にはあの
「街が慌ただしくなって来たね! どうやらミーシャもテンパロットの方も、それぞれ会敵しちゃったみたいだけど!」
「なの! その事態対応で、ポーン・リーダーも大騒ぎ……これは大変な事件到来なの!」
そして――
「いい感じ? メイメイさんとラグーさんは、手筈通りに。この状況を機と見て、奴隷商人達が動く恐れもある感じ。それも、活動上アルテミスの月の満ち欠けを気にする妖魔種ではない――」
「あなた方の本来の同胞であるカクウの強硬派が、騒ぎに便乗する恐れな感じ。それを止められるのは、お二人の能力にかかってる感じよ。」
オサレドワーフが言葉をかけるは、カクウお付きの
「分かったデス。メイメイ達のそんな能力でお役に立てるなら、それを評価してくれた賢者様への協力、しかと
「ああ〜ラグーも同じっす。ウチらは確かにワン先生には目をかけられてたっすけど、本心ではこの身の一体何が役立つのかが分からず、疑心暗鬼だったっす。けど――」
小さなドワーフ少女の言葉は、事前に
即ちあの真理の賢者が宣言した、如何な能力も扱い方でなんとかしてしまうとの意味こそが彼女らの心を大きく動かしていたのだ。
自虐のあまり、敬愛する者からの命にさえ後ろめたい心情だった二人が、それをキッカケに前へと踏み出していた。その心根にいつしか、僅かではあるが伝説に準えた戦士らの血統が目を覚ましつつあったのだ。
「んじゃま、アタイらはこれから二手に分かれてお仲間支援ってとこさね!」
「そうアル! 差し当たってはミシャリア様の方が手薄ゆえ、そちらへ人手を向かわせるが吉アル!」
「オリアナさんは信頼できるサリ! けど、王女様もあっちにいるなら優先サリね!?」
「んじゃ、ミーシャの方はあたしがキーモと向かうわ! ちょい嫌な予感がしないでもないから!」
「その予感には従う方がいいの……(汗)。きっとそれが間違いないはずなの。と言う事なら、ボクとディネさん以外はそちらへ。ディネさんはボクと一緒に――」
「どこまでもついて行く! 地平の果てでもなんでもござれ、さね!」
「いや……そんな、地平の果てまでとかの意味はこもってないの(汗)。」
その協力者の決意新たな表情も起きざ去る空気は、いつもの
奴隷商人勢力へ暗黒大陸出生の異形が関わる点と、カクウ強硬派と言う身内の内乱が含まれる点を考慮した共闘作戦――
これより、
∽∽∽∽∽ベイルーン・サバンナ〜豪商国内部∽∽∽∽∽
被害――無し
借金――据え置き……だがしかし、これより始まる二大バトルは想像を
絶する借金加算の予兆!?大丈夫か、法規隊!?
∽∽ ついに冒険史上最大額の借金が爆乗せされる!!? ∽∽
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