Act.77 商国激震!大混乱の二大激突!
連星太陽が
騒ぎを聞きつけた
「遊ぼうぜっっ、
響く獰猛な野生の獣の如き雄叫びが
「はっ! こいつぁ、確かにヤベェな! いいとこウチのドラケンが、下位種に当たんだろうぜ!」
「暗黒大陸のじゃと!? この様な異獣……確かにワシの見識の中にも存在せぬわ!」
最大警戒の元武器を抜く、
そんな警戒をあざ笑う魔獣使いが、ニヤリと嘲笑を浮かべるや、
「悪りぃが俺様は、こっちの世界じゃ十分な力を発揮できねぇ! だが、こいつへ俺様の魔霊力を食わせれば、こちらでも十分立ち回れんだぜ!」
「……待て、こちらじゃと!? お主は――」
「おい、この感覚!? 忘れはしねぇ……これはあの、ハイネ街道を闊歩してやがった魔獣系異獣……ジャバウォックに近しいモンだぜ!?」
最大警戒の元構えを取る
彼は放たれた言葉の意味を理解している。言うに及ばず――感じた気配は、かつて
「ハッハー! ジャバウォックを、俺様達の世界へ追い返しただけの事はあるな
「ザガディアスと異なる位相に存在する、俺達の故郷にして魔界の
魔人族を
「かの暗黒大陸が、未踏の地である事は知ってたネ! しかしこれは……この様な魔人に魔の異獣が闊歩するが彼の地とは! これは大統領閣下へも、要警戒を報告に上がらねばならない案件アル!」
目にした賊がただの賊どころか、国家にさえ仇なすレベルの天敵と察した
それを視界に入れる
「行くぜ、我が乗機! ヘルズゲイター アグレッド! 俺様の
魔人ライダーの咆哮が、
「気を付けられよ! アレは賢者ミシャリアや、私の装填術式の上位互換……魔の力を根源とする高位強化術式なるぞっ!」
耳にする言葉は驚愕以外のなにものでもない。
∫∫∫∫∫∫
目にした光景でやられたと、オズとやらの思惑に振り回される惨状が渦巻いたね。
この状況下で、私達がこのティー・ワンへ入国した事実を知りうる存在は限られており、且つ奴隷商人側ではそこまで先見性に富む人材はいないと踏んでいた所。
その全容から導かれた結果は確実に、あのオズが仕組んだ舞台であろうと察したよ。
「出てこいよ
「ああ……怒ってるねぇ、あちらの姉さん。そして見えるだろう? ウチの姉さんの背中には、仲間だったはずの一人からナイフが突き付けられてる。まいったねどうも。」
「ミーシャこれ、完全にお姉さんがガツツリ人質の展開に向かってるじゃない……!」
今までは冒険者を演じていたあちらの暴走姉……ウチの姉を上回る残念さんと言う事で、超残念さんとでもしておこうか。が、完全に最後の手とも言える策に打って出たのは頭が痛い所。
これはアレだね。入国できたのは冒険者と言う肩書きを利用したのではない、姉さんと言う人質を盾にして堂々踏み込んだ感が
あの出来る弟による、すでにこちらが奴隷救出を敢行している前提の舞台演出でもある訳だ。
「あちらのオズさんとやら、これは無茶振りにも程があるよ? 大方こちらを試したいのだろうけど……こういう場合、別口で難事が降りかかるが常なんだ。最悪、法規隊が分断された状態で戦闘に望まなければならないハメに――」
冒険の経験上、戦力的には申し分ない我が部隊も分断されれば用いる事が出来る人員に戦術にも制限がかかり、そこに来て町中でのあれやこれやはもれなく、町破壊と言う借金地獄助長の目も当てられない大参事となるが常。
そこまで気が回らないあちらの切れるポンな弟さんへ、嘆息も辞さなかった私。そんなタイミングに、
その端末は、現在この商国内では発展乏しい魔導通信施設を鑑み、精霊術のみで扱える臨時の通信手段として別働隊へ預けていたモノとの対の親機。もう嫌な予感しかしない私がそれを手に取るや、耳を見事に無いなくしてくれたのはウチの精霊な残念さんの声でした。
『ミーシャはん、えらいこっちゃ! 今奴隷民の衰弱者救出があらかた終えた所……あちらさんからの刺客がおいでなすったで!? しかもそいつは、リュードに加え暗黒大陸の名を口走りよった――』
『あの御仁とは敵対関係やろけど、自分が暗黒大陸出生の魔人族やなんてぬかしよった!』
「リュ……っ!? はぁ……ほれ見た事か(汗)。完全に奴隷商人側によって、意図せず分断された形じゃないか。しかもこれ、作戦で動いたとかではなく、各々が勝手に暴れた結果私達の分断に成功した感じだよ。天才か?いや天災か……。」
もうつまらないダジャレが口から漏れるほど、大きなため息を吐く私は、隣り合うリーサ様に鈍黒さんと首肯し覚悟を決める事とします。
「どうやら私達は、難事に絡まれる因果からは逃れられない宿命とみたよ。ならば抗ってやろうじゃないか。もうあっちの超残念な姉さんは、絶賛戦闘態勢……選択肢もない感じなんだけどね。」
「残念なお姉さんに、超残念な敵方お姉さんとか……(汗)。どんだけ私らの周りには、残念が溢れてるのよ。」
「……オリアナちゃん? 今、王女様を見たでしょ。」
「見てないです、すみません(汗)。」
「いや、君も大概残念なんだけどね?」
いつもの私達らしいやり取り。けれどそこに宿る覚悟を見届けた所で、共にある精霊方にも宣言するとしよう。法規隊の法規隊による、法規隊らしいやり方で応戦する旨を。
「ではグラサンにシェン、臨戦態勢と行こうじゃないか。奇しくもここからは、私達の最も得意とする戦術を展開せざるを得ない。分かるね?」
『準備はできていますキ! いつでも闇の精霊シェンは、賢者ミシャリア様のお役に立つ所存ですキ!』
「おうおう、闇の嬢ちゃんも気合入って来たな! なら俺様も、ちとやってやろうじゃねぇか! ファッキン!」
「いい気概だ。君達精霊の力は当然の如く信頼しているし、今この時の直接戦力は私と鈍……オリアナだけだ。そして相手は――」
私の言葉で奮起する闇と火の精霊方。すでに実の姿へ移り行くシェンに、荒ぶる火炎
そう……ジェミニ・クルエルティを
「……ようやくお出ましか、このロリ賢者が! あたしを散々コケにしてくれた礼は、タップリ弾んでやんよっ! オズっ……出て来い!!」
そして大橋中央へと躍り出た私達を、それはもうガン睨みする超残念さん。そこで捕らわれる、視界に映るウチの残念姉さんへとアイコンタクトを送りつつ、敵を見据えます。対し、ジェミニ姉の声に呼ばれて姿を現すのは、双子の弟であり
精霊装填を用いるならば、なんとかこの二人を相手取るのも可能かと思考していた矢先。超残念さんたら、それはもうびっくらこくサプライズを、望んでもないのに準備していたのです。
「キッヒヒヒヒ……喜べよ、
「ああ、なんだい? とっておきとかは、別に望んでないんだけどね。できればサクッと君達を料理して、大統領閣下へ素っ首差し出したい所――」
「シャギャァーーーーーーーーーっっ!!」
「「「……!!?」」」
揺らめくジェミニ背後の空間。確かあのオズが姿隠しに用いる、
現れたのは、姿隠しされていたやけに見覚えのある巨大なる輩だったのでした。
「……誰だい? あの怪獣 アンギルモアスを退治せず野放しにしたのは(汗)。」
「ここで言う? 私達だよ、それ……(汗)。」
嫌な汗と共に視線を交わさず言葉を交わした、私と鈍黒さん。
まさかまさかの退治せずに放置した怪獣さんを、事もあろうかジェミニ姉が傀儡として準備してくる惨状が襲う事となったのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます