Act.76 再来!暗黒大陸の災禍!
連星太陽が
事態は想定もしない方向への、急展開を迎える事となる。
「賢者ミーシャによって、拉致民衰弱者の治療と保護、進んでいます。」
「ウチもその旨、リドはんに伝えて準備も万端やで!」
「ウム、流石は
「買い被んなって、マーさんよ。俺達だってミスもありゃ失敗だってする。それでもミーシャといればなんとかなると、いろいろ覚悟決めて事に臨んでんだ。それにいつだって、順調に運ぶはずが余計なトラブルのせいで、上手く回らないのは日常だぜ。」
狂犬を中心に、
「レイヴ、だったか?
「あ奴は、私と並ぶオクスタニアの猛将だ。受け持つ任務は、特務諜報を中心とした裏方任務が主であるが……彼には幾度も情報に於ける面で窮地を救われた。」
「それは頼もしい限りじゃな。ワシらも情報戦に長けた者が協力者とあれば、動き易いと言うものじゃ。」
再び囚われの民を閉じ込める事へ、痛む心で眉根を寄せる狂犬。それを察しご安心をとの視線を送る幼歌姫を尻目に、
その会話へ飛び入り参加するのは
「ジィさん早ぇな。そっちの準備は良好か?」
「ジィさんではない。全く……お主は普通に話題を振る事ができんのか。」
「ほんまおすなぁ。まあ、それでこそウチらと、思えてなりまへんけど。」
続いて声を上げるはダンナへと追従した
それは、隠す気が欠片もない殺気がばらまかれていたから。さらにその気配が、自分達へと向けられていたからこその最大の警戒であった。
「すげぇすげぇ……! 流石は音に聞こえし
直後響く荒々しい声。首肯を交わす
逆光を背に、城壁上で直立する影を見た。
「この今までにない気配は、あいつで間違いなさそうだぜ?ジィさん。」
「ジィさん呼びをやめぬか、このたわけ。じゃが……これはちとマズイ相手かも知れんぞ?」
声の主を影から推察する狂犬と英雄妖精。彼らが警戒を最大に置く理由は、直立する影に隣り合う大型の影へこそ向けられていた。
「おお、こいつが気になるか? いいだろう、せめてもの情けで紹介してやるぜ。こいつは俺様の愛騎のヘルズゲイターだ。まあこの種は、ザガディアスの主大陸には生息してねぇ。こいつの故郷は暗黒大陸辺境――」
「テメェらもよくご存知の、リュード・アンドラストも近しい場所出生と聞いてるぜ?」
「……リュード・アンドラスト!? テメェ、何者だ……!」
次いで発せられた言葉に反応し、警戒のまま狂犬が吠え――
「遊ぼうぜ、
巡る因果が、再び
∫∫∫∫∫∫
連星太陽が夜明けを知らせ、そこへ合わせた様な報が飛び込みます。
ジィ様がこの国の大統領と話を付けてくれてた事もあり、奴隷商人に拉致監禁されていた民達が、衰弱した者から政府の目の届くお宿へ一人、また一人と運ばれて程なく。残る民への対応と、テンパロットとジーンさんが拉致現場の長屋へと戻り、分隊全員との合流をなしていた頃の事。
待ち人来たりではないけれど、足止めからの後発となった、姉さん率いるルビーアイが関所の門を潜ったのです。
「ルビーアイもここを北上する時点では、国家に警戒されいなかったのは確実だね。奇しくも姉さん様々と言った所だろう。」
「そうだね。仮にも国家が要警戒に置いている奴隷商人達ならば、北上どころか国へ入る事さえ叶わないはず。けどこの状況は、信を置いてる
リーサ様も察する事には、姉さんが今まで表向きに醸し出していた目利きの残念な商人と言う空気が、良くも悪くもあのジェミニ・クルエルティの隠れ蓑になった事実。その人物がまさか、護衛であるはずの人間に監視され、あわよくば拉致され売り物にされようなどとは、さしもの大統領も夢にも思わなかったはずだ。
きっとアーレス帝国だろうがアグネス王国だろうが、一見して人の全てを見極められる者なんてそうはいない。これは避けようもない事態とも言えたね。
すでに人通りが増え始めた、街道大橋脚を縦断する経路を見渡せる物見櫓へ居座る私とリーサ様。現状、衰弱者の治療と安全な場所への移動でフレード君、ディネさんにサーリャが治癒係と……ヒュレイカ、ペネにノマさんが移送に回ってくれています。
そのためこちらには護衛としてオリアナ、グラサンにシェンが着いており、差し当たっての護衛であるオリアナには期待を寄せまくっている所だった。
「てかミーシャ? 生命種の護衛が私だけって……こっちには王女殿下までいるのに、ちょっと不安しかないんだけど(汗)。」
「ふぅ……今さら何をいってるんだい? この、この……良い弄り名が浮かばないじゃないか。」
「弄る必要なんてないから!? 普通に呼んで、普通に!」
「白黒さん?」
「原点回帰したっ!?」」
とまあ、珍しく護衛が一人と言う事で緊張待ったなしな恋黒さんな訳で、それをほぐす形で弄っておいたよ。
この子も気付いてはいないだろうけど、あのリュードとガチのタイマン張れる時点で、一介のガンナーなんて足元にも及ばない実力に達しているんだ。そこに来て夜な夜な自ら鍛錬を怠らない努力は、テンパロットを初めとした、部隊年長者達からも太鼓判を押されている所。
だからこその、彼女へ私とリーサ様護衛を任せる方向の人員配置なんだけどね。
そんなこんなで物見櫓から大通路を見やる私達。視界の先には、
「……シェン。遠目で、姉さんの状況を確認できるかい。」
「キ……。キキッ!!」
とっさの異変を感じた私は、すぐさまテンパロットと並んで遠目の聞くシェンへと依頼を飛ばします。弄ってたのがウソの様な私の雰囲気を察するシェンが、コクコクと身体を揺らして単眼の
「キキキッ! キキ、キキッ!!」
「しまった……シェン専属の通訳さんがいないじゃないか(汗)。しーちゃんもウィスパも出払ってたよ。けど――」
「……よね。彼女が言わんとしている事は想像できる。ミーシャ……王女様は、いつでも準備できてるからね?」
「賢者ミーシャに姫さんがその雰囲気ってことぁ……。オリアナ嬢……俺様もいつでもいけるぜ?クレイジー。」
「待って待って? 皆だけ理解してないで、私にも教えてよ。状況が掴めないんだけど?」
一人緊張で、少し感覚の鈍る恋黒さん……とりあえず今回は鈍黒さんでもいいか。その鈍黒さんの分かる様に説明して置く事としよう。
「今日の君はちょっと鈍いね、鈍黒さん。今こちらへ向かって来る姉さんの両手……悟られぬ様にはしてるけれど、すでに拘束具が嵌められている――」
「推測ではあるけれど、このティー・ワンの状況がジェミニ弟の手によって、発狂姉へ伝えられている恐れがある。」
「どぅあれが鈍黒……っ!? それ、ヤバイんじゃない!?」
ジェミニの弟、確かオズとか言う彼の思惑は兎も角としても最悪の状況。
いろいろと襲いかかる難事は、またしても私達を待ってはくれなかったのです。
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