Act.70 妖魔奴隷商人、動く
中央行政府を置く左右平等に
「ああ、メイメイにラグーは安心するアル。ちゃんと大統領府へは、協力者としての通達を行っているネ。そう敵対心剥き出しでいると、せっかくのお膳立てが台無しアルよ。」
「いえ……そうは言っても(汗)。本来ワン先生を監視するため、あんな辺境まであなたを派遣する周到さを持つ政府デスの。」
「そうそう……ウチらへ警戒するなと言う方が無理っすよ。」
敵陣に飛び込んだかの
そうして一行を迎え入れるは、大統領政府をまとめる筋ある側近 ジャン・コー。大柄にして、筋骨隆々な姿からは想像も出来ない真摯さを醸し出す。従える
「ようこそ、同盟国はアーレス帝国よりの使者たる冒険者方。私めの名は、大統領フェイ・イー様の側近を務めさせて頂いておりますジャン・コーと。話には聞いておりましたが、かのブレイブ・アドベンチャラーの勇姿方との出会い……感慨深いものがあります。」
「そう言う
「これは失礼……しかし慇懃無礼とは。我がティー・ワン国でも、あなた方の武勇は伝説として伝わっておりまして。ああ、ここで長話を続けてはご迷惑がかかりますな。ではこちらへ……。」
体躯にして倍近くある大柄の側近が、
「なんやオジジが、エラソげにしとりまんなぁ。」
「シッ……聞こえてしまう、シフィエール。ここは冗談が通じる場ではない様子。」
「いやぁ、確かにエラそうだねぇ。アタイらの前では、散々弄られてはキレるの繰り返しなのにさ。」
なのだが――
一行本隊がいまいがそこは
刹那……
視線の先には、カクウ首魁のお付きである二人が立っていた。
「ヤバイデスの、ラグー。あれ絶対、メイメイ達を見てるデス。」
「ああぁ……だから言わんこっちゃない。カクウの心無い一部が、このティー・ワン均衡で悪さをしてる状況っすよ? ウチらが目を付けられない道理は――」
「そちらの二人は、すでに知らせを受けている。今この国内で、反乱の兆しを見せる強硬派とは異なる勢力であると。何分、国家の防衛を任される身……無礼は許されよ。」
視線は鋭いまま。しかし口にするは、己の職務故との謝罪。そして僅かに下げた頭で二人の協力者へと謝意を示す。どこか不器用で、しかし職務に全てを懸ける姿はそれだけで、
一悶着も辛うじて乗り越える
その同じ頃――
∫∫∫∫∫∫
南方に砂漠を抱く
しかし時に、その防風林による死角を利用した悪辣の奸計が渦巻くも常であり、それに対する護りとして国家防衛の要である
「首尾はいかに。」
「ゴブブ! ケーエーのへーし、いないゴブ! 見てきたゴブ!」
「ブヒヒ……どうやら遺跡側へ放った野良異獣共が、いい仕事をしているブヒね? ブッヒッヒ、ならば頃合い……この防風林を利用してナーコク川のギリギリまで足を進めるブヒ!」
防風林の中心地帯で、鬱蒼と茂る草木に紛れる様に不穏な一団がなりを潜める。そこへ一匹の醜悪な面構えをした
報の伝達者を、
「ロマネクタさんよぅ、夜には仕掛けるんだろ? あの鬱陶しい双子がいない今が、攻め時と思うんだが。」
「焦るなブヒ。あちらに仕掛けたリザードチームの動き次第で、こちらも動くブヒ。まああの傭兵娘が向かうなら、そんなに心配はないブヒ。ジェミニ・クルエルティとか言われて調子付いてはいるが、情念だけで戦う奴と金で仕事を請け負うプロの傭兵とでは、実力が段違い――」
「情念が勝り勝ち方に
その
連星太陽が陰り、夕刻へと迫る中。
そんな不逞の輩の動きに抗う様に、奴隷側の立ち位置にいる希望も動き出していた。
「タイーニャ様……先程あの、ティー・ワンが誇る拳聖一行に混じり、ティーガー・ヴァングラムがここへ入ったのを確認しました。」
「……っ!? ティーガーみゃぁ!? ちゃんと生きてたみゃぁ! そっか……ティーガー……ここまでタイーニャの事を。」
「お気持ち、お察し致します。さらにはあのティーガーらが協力しているのか、謎の一団の事が気になります。そちらは私めが、すぐさま調査に赴くとしましょう。」
「その件はレイヴに任せるみゃぁ。タイーニャもすぐに動ける様、手はずは整えて置くみゃ。今回の件を利用し、未だ隣国でありながら充分な同盟協定の結べていないこのティー・ワンとの、次代を見据えた恒久和平と同盟模索と言う提案をみゃ。」
今も囚われの身である、大地母神の巫女ことタイーニャ・マームと、奴隷商人兵になりすまして機を伺う
獣人を纏めしオクスタニア国と豪商国家 ティー・ワンは、
それは
そんな国家情勢さえも思考に組み込む幼歌姫は、例え己が危機的状況であろうと、その心が
暗雲立ち込める小国にさえ、気運と勝利呼ぶ言霊となり響き渡っていた。
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