Act.10 進む先、包む迷わずの樹海
その山脈までの道のりが、精霊狂騒街道の第一の難関〈迷わずの森〉である。
「いやぁ……あれは度肝を抜かれたな。」
「……抜かれたわねぇ〜〜。」
「ミシャリアお姉ちゃんに、お姉ちゃんがいたのには……ボクも、驚愕でメイスを思わず落としてしまったの。」
「ここぞとばかりに君達は(汗)。兄弟姉妹は、人によっては普通いるものだろう。どれだけ私を弄れば気が済むんだい?全く。」
一行は砂漠超えの前に立ちはだかる〈迷わずの森〉突破に向けた物品調達とし――
武器に防具と戦闘に関わる品々と、局地装備担当として
総じて、武器兵装担当と生活物資担当へと分かれた形である。
先のお宿の集落レベルな雰囲気がそのまま続く商店街。見た目は
「それは置いといてだね……この街よく見れば、元々は堅気ではなかった方々がほとんどを占めている気がするんだけど。二人はどう思う? 」
「まあそうだな。雰囲気は至って普通の
「よね〜〜。差し詰めあのワンさんが睨みを利かす……っていうよりも、ここにいる皆がワンさんを慕ってるっぽい感じね〜〜。だからその首魁さんが信を置いた私達に、敵対しないってとこかな〜〜。」
「ふぅ〜〜ん。テンパロットもヒュレイカも、見る所はちゃんと見てるのね。ジェシカに報告しとこ。」
「「それは勘弁願います、リーサ様(汗)。」」
真理の賢者の振りへ鋭い観察眼で応じる狂犬と、一行でも危機回避能力がずば抜けて高いツインテ騎士の直感は、主も抱いた解を容易く導き出す。
「ではそんな友好的な皆さんへの、信の証として……早速買い出しを始めるの。」
「おや? 珍しくフレード君が仕切るね。何か気になるものでもあるのかい? 」
「そういう訳では、ないの。何かこう……今まではとても慌ただしい任務で、
「「ブフォアッッ!! 」」
「すわっ!? なんでここで鼻血なの!? 」
「またか、ちくしょうっ!? フレード!その雰囲気での不意打ちは、このキモ百合コンビへのご褒美だぞ!? 少し慎め! 」
「……テトお兄ちゃん、言ってる意味がよく分からないの(汗)。」
部隊に属する感慨深さに浸る神官少年であったが……少年が醸し出す美少女の如き笑顔で発動する賢者と騎士揃っての鼻血祭りで、お転婆姫がドン引き狂犬が苦情を呈した。一行の色に染まり初めていた少年も、狂犬の言葉には流石に引きまくる。
商店前に訪れたにも拘らず冒険の買い出しさえも捗らぬ一行を、さしもの商店主らも冷めた目で見やる中――
生活物資及び食料買い出し組も、
∫∫∫∫∫∫
「あっ、これいい! ねえペネ、これも買って――」
「おバカな感じ!? あのねオリアナさん、あの迷わずの森を抜ける前に、そんなに食料を買い込む訳にはいかない感じよ! 砂漠地帯に必要な物資は、その直前で買う感じ! でないと多量の積荷が邪魔をして、万一の時の足枷になる感じだわ! 」
「……ちゅう事は、これもアカンいう事おすか? 」
「……ティティ様(汗)。そんな綺羅びやかな装飾を、一体何に使う感じですか? オジジ!ちゃんとティティ様の手綱は、握っておいて欲しい感じだわ! 」
「ぐぬぬ。ここ最近のお主、ワシをただのジジィとしか扱っておらんではないか。これではケンゴロウも――」
「パパは関係ない感じ!? 」
生活物資買い出し担組で
結果、英雄妖精がその尻拭いをさせられる羽目と相成った。
もはや両買い出し組が共に捗らぬ惨状。一行らしいその光景は、直後のお登り令嬢が発した質問から少しばかり色を変えて行く事となる。
「冒険にお荷物なら仕方ないわね……。ところで恥を偲んでペネに聞きたいのだけれど、これから抜けるのは迷わずの森で間違いないのよね?迷い、ではなく。」
「あら、オリアナさんもそこにはちゃんと気付けた感じね。そうな感じ……そもそも迷わないならば、わざわざ迷わずとか名前は要らない感じだけど――」
「そういう場合は、ちゃんと銘打たれるに足る理由が存在する感じだわ。」
露天商に並ぶ必要最小限の食料を見繕いつつ、白黒令嬢の問いへ返すオサレドワーフはドヤ顔で知り得る情報を語って行く。お登りがお登りのままでは今後もないと、英雄妖精に抜刀妖精も敢えて口を
「まずはこれから向かうミューリアナ街道が、精霊狂騒地帯な点を踏まえて考える感じね。ペネもアーレスがある大陸意外はいろいろお初ではあったけど、帝国に隣接する地域の情報は商人づてで知っている感じ。」
「そこで聞き及んだ限りでは、あの北アヴェンスレイナが擁する迷いの森で
「そっか……。ティティ様を助けた時の森は、
ドヤ顔少女の回答へ、先の冒険を思い出し零した白黒令嬢であったが……その折の
「ふふ……何をいまさら謝る事がありますの? オリリン――違いますな。オリアナはんが
抜刀妖精とて
「地域精霊の加護。それがある故に森を抜ける街道も迷わず進める。けれど近年暴走する
「劇的な……天候変化? 」
「そう……。一昔前なら、精霊の祟りなどと突き放され手が付けられなかった事象。けれどサイザー皇子殿下が提訴する、魔導科学上の知見で言うなら……あれは局所的な天候激変が齎す自然災害な感じね。
そう語ったオサレドワーフは僅かに視線を落とし、精霊が事象へ絡む点を憂い表情を曇らせた。
元来ドワーフを始めとしたエルフなどの
話が一旦重きへと移り変わったせいか、買い出しも
仲間との暫し別れが迫る事を察し、嘘のように大人しくなった暴れ馬達を引き連れて。
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