Act.8 過酷なる冒険の予感
イロモノにして食堂バスターを地で行く
「あいや~~。(汗)。
食堂を下品に貶めた、テウカ国民独特の語りが特徴の
「お言葉だな……今はマー・ロンだったか。貴様が我らを張っているのは周知の事実。そんな相手に何度も馳走を食わせる理由など無い。それよりもあの獣人の守人をどう扱うつもりだ? 」
しかしそれをあしらう
「どうもないアル。アレからは悪意など微塵も感じられないネ。どこぞのマフィアの反抗勢力に比べたら、それこそ聖人君子を見ている様アル。」
「ふん……聖人君子かぶれほど危うい者はいまいぞ。そもそも、正しき義と悪しき意の区別も付かぬお堅い思考では、義を向ける先さえ誤りかねん。」
カクウ首魁と酔いどれ警兵。互いが醸し出す空気は、相入れずとも利害の一致で動く光と闇を思わせる。それこそかの
身成りは
暗部マフィアたるカクウの首魁を、首魁たらしめる証が其処彼処へばら撒かれていた。
そんな男をまるで長年の腐れ縁を見るかの酔いどれ警兵は、軽く男を一瞥すると……ただの冷粥と愚痴ったそれを胃へとかきこみ「馳走になったアル」と一言。ただの冷粥が、深酔いに効く薬草入りの薬膳である事を承知の上で合掌した。
そしてすっくと立ち上がった酔いどれ警兵は、先の酔いが嘘の様にキレイに直立する。ともすれば、武術に長けた達人の如き佇まいさえ宿していた。その雰囲気のままカクウ首魁を見やる視線には、首魁を以ってしても嫌な汗を滲ませる闘気の片鱗を覗かせる。
「当分は私が青年に同行し、間違いがないかを監視するアル。今彼ら
ヒラヒラ手を泳がせ
「ティーガー・ヴァングラムだったか。気を付けろよ? その男は旧王朝 クォル・ガデルの末裔にして、現ティー・ワン
「事と次第によっては、法規隊よりも恐ろしい……拳聖の異名を取る対魔討滅の志士ぞ? 」
腐れ縁な点はカクウ首魁も同様であり、拳聖と畏怖される酔いどれ警兵の素を口にする。
それこそ
∫∫∫∫∫∫
リドジィさんの弄りから、私達はそのまま今回主となる冒険の旅路……その主要ルートの洗い出しにかかります。当然お登りさんなブレ黒さんに合わせた方向に、分かり易く且つ噛み砕いてです。面倒くさいことこの上ないね。
「さてこの世界地図でも、ここウォーティア大陸を拡大細分化した物を見てもらおう。今までは経験した土地を土地勘がある者が行く旅路ゆえ、そこまで大仰な計画を練る事もなかったんだけどね。」
「つっても、西イザステリア海洋を日を置かずに……からの孤島進軍で二度の海洋往復は、大概のモンだったぜ? 」
「そうだね。テンパロットの意見は
ルート洗い出しにかかるや放つテンパロットの視線を追えば、パッと見で分かるほどに冗談が通じない方の彼で――やはりと言うかその視線の先は、熱砂地帯のオアシスな港町、ティー・ワンを経由してのゴルデラン首相国所有運河までの道のりでした。
私も彼が何故そこまで視線を鋭くしているかを知る手前、そこが明らかに分かってないブレ黒さんに掻い摘んで説明をして行く事とします。
「まずオリアナは、このルートを行くのが簡単と……そうだね。今までの様な部隊の装備で乗り越えられると思うかい? 」
「んんっ!?私!? うんっとね〜〜――」
ただ質問の意図は察せていないようだけど。ああ面倒くさい。
「このティー・ワンって、砂漠のオアシスって別名があるのよね。私砂漠なんて行ったことなんてないんだけど、普通じゃだめな……痛っ!? なんで今、小突いたのよリドさん! 」
「なに……ワシが小突かんでも、テンパロットか若しくはミシャリア――下手をすればフレードのボンでさえも小突きかねんかったからの。感謝せいよ? 」
「うん、なの。ちょっとオリアナさんをこのメイスで――」
「フレード君が、イロモノ集団に感化されてる感じだわ……(汗)。」
皆の反応は想定通り。まさかのブレ黒さんのブレないお登りさん回答には、さしもの私も久っさびさの
良かったね?ブレ黒さん。あとついでにブレない点でもブレ黒さんでもいいかとも思ってみたり。
ともあれ定番の如く前に進まぬ冒険に向けた会議。頃合いと現れたワンさん提供のデザートに、ヒュレイカが
視線へ「精霊を顕現しても? 」と込めれば、「人払はすませた」的なウインクを頂き首肯。
そして――
「ここからはしーちゃん達の意見も必要だ。頼めるかい? 」
「ようやくウチらの出番やな〜〜。早速本題から入らせてもらうで? ここでいつもの、くだらんボケは無い様にしてや? 」
声がかかるや顕現するのは、私達
個人的には未だ研鑽が必要な自身の鍛錬のため、精霊達を
そして六大精霊を中心に、さらの炎と風が二柱ずつ……大自然を表すシンボルにして生命種の監視者たる精霊達が顕現。風ではしーちゃんの次に私達との深い絆を持つ、巨躯にして頼もしいジーンさんが語り始めます。
いつもの堂々にして雄々しき姿が影を落とす様に。
「オリアナ嬢は我らが
「それも危険区域が数段階に分かれ、天候も環境も突然激変する大自然の試練渦巻く道。備えを誤った冒険者をいくつも飲み込んだ、命懸けの陸路ぞ。」
一切の冗談を配して語るジーンさんの圧力は、我がイロモノ集団を沈黙へ導くには十分でした。
彼の口にした〈精霊狂騒地帯〉とはまさに、自我を持たぬ彼らの同胞達が何らかの原因で荒れ狂う、冒険者さえも恐れ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます