Act.6 南へ、法規隊の新たなる旅路
さらにはカクウの脅威に対する護衛とは大っぴらに出来ぬと、同席するみなは部隊上情報共有が必要と強引な意見で押し通し、依頼全容を聞き届ける体勢としていた。
「はてさて、このカクウ頭目を相手にこの護衛数……抜け目のない事で私めも安心致しました。ですがご安心を……そもそもこちらは依頼を提供する時点で、身内の恥を曝すも同義――」
「そんな状況下で、会談に敵対心を以って挑むなど言語道断。私めもプライドと言うものがありますゆえ。」
「……抜け目がないとの言葉はこちらのセリフじゃ。そこまで見抜かれているとは、ちと我らもおフザケが過ぎたようじゃの。」
そんな聞き届ける体勢がカクウ首魁の言葉で瓦解する。英雄妖精も
「おフザケ……っていつも通りじゃないの? 」
「変わんないわね~~。」
「リーサ様も増えて、マシマシ感……増量中なの。」
「ああ、あれな感じね? イロモノ集団とか言う――」
「お主らには場の空気を読むとか言う配慮は、欠片もないのか!?そうなのかっ!? 」
相手が相手と素で当たっていた英雄妖精は、背後で護衛であったはずの面々が零す
それをケラケラと見やる
その様相を見定めるカクウ首魁も想像を超える一行のおバカさ加減に、奇しくも失笑を洩らしてしまう。闇の世界、社会の暗部で世間から弾かれた哀れな輩どもを纏める、首魁らしからぬあるまじき失笑を。
「くくっ……いやはや。この私めも失笑が込み上げたはいつぶりか。ならばこの依頼はあなたがにこそ申し出るが筋でしょう。我ら身内の恥も恥……カクウ内で我が物顔で分裂を宣言した強硬派を、光
カクウ首魁の失笑に、所変われど闇は変わらずな表情を浮かべた
「やっぱりカクウはんらも、アカツキロウのゴクドウはんらみたいな悩み……抱えてはるんやねぇ。ウチもその手の依頼を受けて、悪道共を片っ端から切り伏せたのを思い出したわ~~。」
「いや、ティティ卿? そんな恐い話を思い出さなくていいですから(汗)。」
抜刀妖精のフラグの如き呟きで白黒令嬢が震え上がる中、一向に進まない話を進める様にオサレなドワーフが仕切り始めた。
「はいはい、オリアナさんもティティ卿もそこまで。これ以上はカクウさんも堪忍袋の緒が盛大にプチリと行く感じよ? あとオジジのツラも、これ以上汚れる事はないけれど汚さない様に――」
「待てぃ、ペンネロッタ! 今さらっと、ワシを小バカにしおったな!? 」
「あらやだ、オジジが先にプチリと行った感じだわ。まあウチはこんなの日常茶飯事な感じなので、ワンさんでしたっけ。依頼とやらをお聞かせ願えるかしら? 」
「くくくっ……場の空気などハナから読む気がない
身内の恥と濁しつつ言い淀んでいたカクウ首魁も、いつの間にか彼らの空気の中へと溶け込まされ――
言葉にし辛い依頼の全容を語り出した。
∫∫∫∫∫∫
精霊種組の仲間へ殿下よりの依頼諸々を伝達後、任せていたカクウさん方依頼把握と食堂施設へ歩を向ける私。
ティーガー氏にカクウのワンさんとやらは兎も角、少ないながら他の客も目にする事を考慮の上で精霊達に席を外して貰う事とします。その後リーサ様と舞い戻った食堂施設 店員室前で……余裕のある袖に両手を要れ、
すでに粗方はウチのご隠居に報告したのだろうと察し、仲間の元へ集います。
遅れてテンパロットも加わり、何か最初の意気込みが台無しな今に嘆息しつつ詳細確認へと移って行きました。
「やはりあのカクウは紛れもなく、旧王朝時代に勢力を誇った組織じゃったわ。が……その勢力を誇った規模そのものには、
「なるほど、リドジィさんが聞き及んだ依頼からそれが察せたとなると……彼らも相当苦労している様だね。」
「……あくまでそのジジィ扱いに終始するつもりか(汗)。まあそれは置いといてだ――」
敢えてのジィさん呼びで事の重要性を計った私へ、嘆息ながらも視線をテンパロットへ移したリド卿。そこにはテンパロットが時折見せる帝国諜報部に属していた頃の、冗談の通じない面が出ていたのに気付いた私も少しおフザケを廃して静聴する事とします。
冗談が通じない時のテンパロットは、案外恐ろしく……私もその時ばかりは彼が一回り年上である事を痛感するのですね、これが。
ともあれ年長組のウチ、情報戦に強いリドジィさんとテンパロットを中心に、カクウからの依頼に合わせた今後の冒険プランを構築して行きましょう。
「まず第一に、奴ら本体であるカクウは今後もカタギには一切手を出さぬ体制で世を渡る腹積もりであるが……どうもそれに反感を持った強行派が、このアーレス南以降の街々で悪さを働いているようでの。」
「そこで彼らはワシら
「……って事は、最初から奴らは俺達の素性は調べ上げてたって訳か? だが俺でもそんな気配を、今までの冒険の最中感じ取った記憶はないぜ? 」
「
カクウさんの内情にあちらの方針はまあ良いとして、その後が問題だね全く。帝国が誇る情報収集のプロも舌を巻く情報戦――それがアーレスのすぐ南方の国家で行われていたのには肝が冷える所。それも個の能力に特化したアーレスの諜報能力に対する、数と人脈に任せて人知れず情報を蓄えるなどと……カクウさんが敵対組織でなかった事に胸を撫で下ろしてしまったよ。
それでもサイザー殿下には報告の必要があるのだけどね。
「ともあれ我ら
と前置きしたリドジィさんが、なにやらオリアナ……レーベンハイト家と言う帝国お抱え武器商人貴族へ養子に迎えられた、白と黒のゴシックメイド服が標準装備なシンデレラさん。略してデレ黒さんへ視線を向けると――
話を振られた彼女の語る概要がそのまま、依頼の第二点として提示されたのです。
「カクウの強行派とやらが働く悪事……その点であのワンさんは、気になる内容を提供して来たわ。そこにはこのザガディアスにはいるはずの無い、言語を解する事の叶う妖魔異獣が不逞と
「……ちょっと待つんだ。それは、穏やかじゃないね。事実なのかい? 」
「その件の調査が第二の依頼と言う訳じゃ。その事実如何ではワシらもこの依頼、受けざるを得ない所ではないか?ミシャリアよ。」
デレ黒さんが重めのトーンで口にした言葉で、流石の私もおフザケが頭から吹き飛んだ気がしました。言語を解する事の叶う妖魔異獣……もしそれが悪事の要因となっているならば看過など出来ないから。
先のラブレス先遣隊との戦い。戦史に残さぬ配慮で事なきを得たあの戦いは、リュード・アンドラスト率いる真摯たる一騎当千の猛将達との尋常の勝負でした。詰まる所、言語を解する事の叶う妖魔はそこにしかいない。今回の件に絡むのがラブレス
そう思考するだけでも。今回の依頼では由々しき事態を想定しなければなりません。
「……あらかたは理解したよ。どう転んでもその依頼は受けざるを得ない事もね。さて、そうなると次の冒険の舞台は……このウォーティア大陸の中央から南、か。厳しくなりそうだね。」
依頼内容確認の中で、いつしか鋭さが増した我が
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