第6話 魚介のパスタ



 今日は他の者達と同じような時間に食事にありつく事が出来た。

 同じような……と言っても、夕食の混雑時の時間からは少しずれてしまったので、多少人は少なくなっている。

 だが、まだまだ人は多く、常識の範囲内の時間だと言って良いだろう。


 私は取り置きせずに済んだ食堂のメニューを頼む。

 この間も頼んだものだが、またパスタ関係の料理だった。

 何でも最近パスタ麺を大量に仕入れしてしまって、倉庫に大量に余ってしまっているのだとか。


 後に聞く事になるのは、料理長のご家族の娘さんが熱を出したとかで、好物のパスタを知合いの偉い人に頼んだら大量に送りつけられてしまったとか何とか。


 ともかく、漂ってくる臭いからは魚介系のものがしてくるので、この間とは違って海の物を使ったメニューになるのだろう。


 カウンターから厨房を覗きこんでみるが、レーシャさんの姿はないようだった。


「あの……、レーシャさんはいらっしゃらないですか」


 私はとりあえず、注文を頼んだ人に尋ねてみたが、相手は首をかしげてよく分からないと言ったような表情になる。


「そんな人いたかしら。私は、この時間帯しか働いていないもので……」

「そうでしたか、失礼しました」


 最近は気のせいかもと思いかけていたが、やはり彼女は勇者でこの国を救った英雄、雲の上の人なのだ。

 そんな人がこんな時間に、人の多い場所で働く事は出来ないのだろう。

 だから、いつも時間をずらして食堂で作業しているのだ。


 私は大人しく、食事をもらって開いている席についた。


 今日のメニューはパスタだ。

 貝やエビなどが入った魚介のパスタ。


 私は食前の祈りをして、食器を手に取った。

 出来たてという事もあって、盛りつけられた魚介は新鮮だった。

 ぷりぷりとしたエビの身は肉厚で噛み応えがあり、貝の身も大粒で噛めば程よい弾力が返って来る。


 フォークにパスタを絡めて食べれば、魚介のうまみがたっぷりしみ込んだ、あっさりとした味付けだった。


 いつも取り置きしている食事はそれでも美味しいが、やはりこれより味が落ちているのかと思うと出来たてを食べるのが、何より一番だと思えた。


 作ってくれた人も、出来る事なら一番おいしい時に食べて欲しいだろう。


 精一杯食事を堪能した後、食器を返して食堂を後にする。


 いつものレーシャさんとの会話がない分、少し寂しいが仕方がないだろう。


 帰ったら、明日に備えて体を休めなければならない。


 特務隊は普通の騎士よりも激務になる事が多いので、自己管理ができないとすぐにダウンしてしまうのだ。


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