第5話 転生者仲間?



 最近は遅めの夕食を食べるのが楽しみになって来た。

 今までは、ガランとした食堂で一人で食べていて寂しかったけれど、レーシャさんが時々話し相手になってくれるので、退屈しない。


 もうすっかり彼女が悪役令嬢だったという事は最近気にならないようになってきた。

 レーシャさんは優しいし、見た目も素敵なので、むしろこちらから友人になりたいくらいである。

 だが、さすがにそこまで高望みはできない。

 向こうは英雄、こちらはモブ。


 きっと向こうは親切で良くしてくれているだけで、私などは相手にしてもらえないだろう。


 そんな中、本日も食堂に行くと珍しい先客がいた。

 鳶色の髪をした男性がいたのだ。


 その人は食堂の端にレーシャさんを追い詰めて、壁ドンしてる。

 レーシャさんの危機に私は色んな意味でドキドキした。


「まさか、こんなとこにいたとは。俺の想像を軽く超えた所に驚きだ」

「あ、あの……ごめんなさい。内緒で働いてた事怒ってる?」

「まさか、そんな事ないぜ。こういうステ……レーシャも中々良いって思ってる。でも、ちょっとさすがにびっくりしたっていうか、驚いたって言うか。食堂に行ったらいきなりいるし、働いてるし」

「そうよね、驚かせちゃったわよね。内緒にしててごめんなさい」


 二人の会話を聞くにそれなりに仲が良いように思える。

 おそらく普段から付き合いがあるのだろう。

 気安い空気を感じた。


「でも、料理の腕を上達させたかったから」

「それってもしかして例の?」

「えっと、まあ、ええ」

「何だよそれ、俺の為にとか、ステラ可愛い。俺嬉しい。抱き着いて良い? よし!」

「ま、待ってちょっと。まだ何も言って、きゃあっ!」


 大変仲がよろしいようで……。

 気安いどころではなく激甘の空気だった


 そのままいちゃつきだすお二人さん。


 私は空気の読めるモブなので、からかったりはしない。

 見なかった事にして、そっとその場を後にした。

 夕食はさらに遅くなってしまうが、彼女にはいつも世話になっているので仕方ないだろう。


 しかし……。


 先程見た男性。

 あれ人は、乙女ゲームの中で悪役令嬢ステラと仲が良かったフェイスという登場人物だ。


 出番自体はそう多くなくて、登場シーンも数えるほどしかなかったのだが、ゲームの彼はもっとクールだったはずだ。


 それなのに、なんかデレデレしてるし、ちょっとおふざけ系っぽいし。


 もしかして、ゲームと彼の性格が変わった事で悪役令嬢であるステラ(レーシャ)の運命が変わったのかもしれない。


 つまり、私と同じ転生者という可能性がある。


 今度王宮で会ったら、さりげなく聞いてみよう。


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