桜庭澄空のひとりごと 〜day2〜

 幼少期、誰もが憧れるであろう、

日曜午前8時30分台のヒーロー&ヒロイン

そう、あのかの有名なヒーローとヒロインには

私も勿論憧れましたとも。

でも今の歳になって思うのです。


 私たち女として生まれたものが、ヒーローに憧れても周囲は何も言わない。

しかしながら男として生を受けるとどうもそうはいかないらしい。


 私の通う秀麗学園の幼稚舎では文化祭のようなパーティーがあり、そこにヒーローとヒロインを招きショーをする。 もちろん皆大盛り上がりになるのだが、ある一人の魁斗かいとと言う1人の男児の発言でその場の空気は一気にヒートアップした。

「〇〇ちゃーん!!がんばれー!!」

刹那、会場にどっと笑いがこだました。

「かいと女と同じものがすきなのかよー!」

「だっせー!!」

あはははははという甲高い笑い声と、

ただ1人涙を堪え下を向く魁斗を見て幼い私は

子供ながらに

(なんであの子は笑われているんだろう)と考えた。パーティーから帰る車の中で私は高遠に聞いた。

「ねえたかとお?なぜ男の子はヒロインを応援してはいけないの?」

私は高遠に今日の出来事を全て話した。

「それは考え方の違いではないでしょうか。

魁斗さんを馬鹿にした彼らは、男がヒロインを応援するのがおかしいと思ったから馬鹿にしたのです」

「ですがお嬢様はそうとは思わなかったのですよね?」

「だってなにを応援するかは自由でしょう?」

「ええ、それは正しいです。ですが彼らはそのことをまだ知らないのです。なのでお嬢様、明日彼らに教えて差し上げてはいかがでしょう。人はなにを応援してもその人の自由だと」

「ええそうするわ!」

高遠は優しく微笑んだ。


 今考えてみると、何気ない出来事だけれどすごく重要な価値観の問題のような気がする。

女の子は青や水色を身につけていても何も言われないが、

男の子がピンクを身につけると周りが一気に囃し立てる。

この風景はすごく一般的だけれど、すごく非現代的であると私は思うわ。

もちろん、人には様々な考え方がある。

だけれど、自分の持っている考え方を他人に押し付け、その上自分は他の考え方を知ろうとしないのは正直時代遅れではないかしら。


“多様性”という言葉よりは『視野を広げる』の方があっているかもしれないわ。

人と考え方が違うのは、多少窮屈かもしれないけれど、ぐっと飲み込んで、ちょっと自分のバリアを緩めれば、きっと自分にとってプラスになる気がするわ。


そんなことを考えながら澄空はアルバムをめくった。





 

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