第467話 訪れる強者達
『決まったぁ!!最初は正直いろいろと心配していましたが、無事に試合が終了いたしました。勝者は“武芸百般”マシラ選手!!!』
ワァアアアアアアアアアアアアアアア
「ヤッタアアアアアアアア!!」
リティシィの宣言を聞いて、会場と、セレナが全力で声を上げる。
「セレナ?」
「す、すみません」
俺が声を掛けると、セレナは自分の行動に気付きしょんぼりとする。
「……いくら勝った?」
「ネンラール金貨で、100枚ほど!!!!」
セレナは小躍りしそうなほど、うれしそうな声で報告してくる。
「ほどほどにしておけよ」
「わかっていますけど、テンゴさんとマシラさんが当たるまでは両方にかけ続けるつもりですよ?」
セレナは二人の実力を理解したうえで賭けていた。
だが――
「……ならいい」
「はい!それと、最後当たりでバアル様の借金すべて返せるかもしれないので期待していてください」
さすがに最後の部分は大声では言えないらしく、傍に来て耳打ちしてくる。
(本当にわかっているのか?)
博打の怖さを理解して居ないセレナに不安を抱きつつ、時間が過ぎることになった。
ガラガラガラ
全ての試合が終わり、コロッセオに留まる理由がなくなると、俺たちは馬車に乗り、ホテルへと向かっていた。
「久しぶりに動いた動いた~」
そしてその馬車の中ではマシラがいい汗かいたとばかりに寛いでいた。
「楽しかったか?マシラ」
「ああ、まぁ、もう少しいろいろと見せてほしかったがな。アレだと
マシラの言葉に馬車の中の幾人かは首を傾げる。
「師匠、あの道化の技を知っているんですか?」
気になったのか、横にいるアルベールが問いかける。
「だってな、俺が見たことがないのはあの腹から放たれるナイフと破裂する腹ぐらいだぞ」
「え?だって人形の動物や火吹き芸、飛び回るあの球は?、あ」
アルベールは言葉に出しながら自身でマシラの言葉の意味に気付く。
「動物何て、アルバングルに来ればいくらでもいるし、火を吐く獣なんてわんさかいる。実際レオンも簡単にできる技だしな」
動物と火吹き芸などマシラにとっては何も見慣れない部類の技術ではなかった。
「じゃ、じゃあ、あのジャグリングは?」
「いや、群れで襲ってくる素早い小鳥共もいるからな」
マシラの話だと、鋭い嘴を持つ肉食の小鳥が群れで襲い掛かってくるのと比べたら、生ぬるいらしい。
「じゃあ、あの、炎を纏った獣……いや、それもですか」
「ああ、レオンもそうだし、ヨク氏族の連中何て雷を纏うからな」
対戦相手が使ったカシャの技術など、アルバングルにいればいくらでも見慣れた技術であり、マシラにとっては消化試合の感覚だったらしい。
「ぉぉ」
「まぁ一番ひんやりとしたのが、あの火の輪だな、まさかアレを投げるとは思わなかった」
マシラが言っているのは像が火の輪を鼻で掴み、それを投げたことらしい。アレはチャクラムの様にやや曲線を描いており、あの軌道にひやりとしたという。
(マシラにとっては本番前の馴らしの様な相手だったな)
マシラの運がいいのか、それともカシャの運が悪いのかはわからないが、どちらにしろカシャにやや同情してしまう。
「あの、バアル様」
「なんだ」
ホテルまでの道程、談笑していると、扉の外から呼ぶ声が聞こえる。
「イドラ商会の職員と名乗る者からお手紙が届いています」
「渡せ」
差出人がどこの所属かを理解したため、リンに手紙を受け取らせる。
「異常は?」
「ありません」
リンが封を切り、手紙に何も細工されていないことを確認してから手渡してくる。
『対象一名に不審な動きあり』
手紙にはそう書かれていた。
(これで9割9分確定だな)
昨夜出した指令にどうやら一人が引っかかったため、事態のほとんどが判明した。
そして不審な行動の詳細を見て、最後の条文に思わず眉を顰める。
『追記:隊長より、今夜選手たちが襲撃される恐れがあり』
「バアル様?」
「……何でもない」
手紙を手の中で丸め、帯電で消し炭にする。
(……いろいろと辻褄があったが、襲撃されるとなればいい気分はしないな……ん?)
「バアル様」
「……いや、何でもない」
それからホテルに着くまで、襲撃を防ぐためにできることを考える羽目になった。
「ねぇ、バアル。できればこの人外たちの集まりに私を呼ばないでもらいたいのだけれども」
ホテルに戻ってくると、俺とロザミア以外は、それぞれ自分の部屋へと向かう。もちろんその後の行動は護衛付き以外の制限していないため各々が自由に過ごしていく。自分の身分を考えて外に出ない者、クラリスやアルベールなどもいるが、テンゴ、マシラ、アシラの親子三人は多くの護衛を引き連れて、ハルジャールの街に出かけている者もいた。
そんな中、俺は逃げようとするロザミアを捕まえて、ホテルのラウンジへと向かい、俺らを待っていた三人と会っていた。
「貴方は別にいなくていいわよ」
「ふむ、少々口が悪いであるな。彼女もワガハイ達とある意味同じではないか」
「私たちと同じ段階にこれるかは疑問だけどね」
俺はテーブルの四方を囲むように配置されているソファに着く。対面にはウェンティがいて、右にダンテ、左にオーギュストがいた。そしてついでとばかりに俺の隣にはロザミアがいた。
「それで、揃いも揃って、なんでここにいる?」
「私は伝えることがあってね」
「私はできるだけバアルの傍に居るだけ」
「ワガハイは二人が集まっていたので、バアルによからぬ身が起きたのか心配になったので来たのである」
何ともそれぞれが自分勝手な理由でこの場にいた。
(一番、優しそうに聞こえるのが悪魔のオーギュストとは)
悪魔だけが優しいという何とも奇妙な事態に俺はため息を吐くことになった。
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