第463話 四日目二回戦目決着

 ギィン!!


 リフィネがイシュへと攻撃を仕掛けるが、イシュが慣れてきたのか、うまく弾きリフィネの軌道を逸らす。


「ふん」

 ガッ

「っ!?」


 イシュは通り過ぎていくリフィネを見ると、モーニングスターを手放し、リフィネの足を掴むと、無理やりに振りかぶり


 ドン!!


 リフィネを地面に叩きつける。


「くっ!?」

 ボッ、ボシュ!!


 リフィネは叩きつけられて呻き声を上げるが、魔具を使い、叩きつけられた反動で浮いた体の態勢をすぐさま立て直す。


 ザッ、トッ


 そして数度地面に足をつけ、後方に跳ぶ。


「ふぅ……だいぶ厄介ね」

「もう、慣れた、次はこれでいく」


 イシュは足元にあるモーニングスターを広げると、降り始めて鉄球を回転させ始める。


『つ、ついに攻守が逆転するのか!?イシュ選手が完全に見切り、リフィネを追い詰め始めるのか。それともリフィネ選手がこのまま攻め続けるのか、見ものだ!!』


 リティシィの言葉で会場が沸き立つ。それほどまでに二人の戦いの先が気になるのだろう。


「なら、やってみなさい」


 リフィネが再び爆炎を上げると、空へと飛翔していく。そして何度か旋回して、急降下をすると――― 


「ワンパターンだ」

 ジャラッ


 イシュは完全にタイミングを合わせてリフィネがやってくるタイミングでモーニングスターを振り下ろす。


 ギャリ

「ぐっ!?」

 ドン!!


 リフィネはイシュのモーニングスターに、当たることは無かったが、ランスで受けたからか体勢を崩し、自らイシュの後方の岩場に激突していった。


「やはりな、お前の飛行はかなり繊細な動きを要する。ならそれを少し崩せばこんなものだろう」


 イシュはゆっくりとそう告げ、そのままリフィネに向かって歩き出す。


「くふ、あははは」


 その様子を見て、リフィネはゆっくりと立ち上がり笑い声をあげる。


「そんなもので肩を並べられたと思ったのなら大間違いもいい所」

「なに?」

「確かに、今のままならお前は私と同等だろうけど」


 バサッ


 リフィネの言葉で背中にある翼がはためく。


「少しギアを上げるわよ、踊り相手になるかしら」


 ゴォォオオ


 リフィネはその言葉を出すと共に、槍から炎を噴き上げる。


「なら、踊りきってみせるとしよう」


 イシュもリフィネに呼応し、腰を下ろして大盾を構えて守りの態勢に入る。


『リフィネ選手が何かをやるつもりだ。だがやったことと言えば、私たちの前で翼をはためかせただけ、それでどうすると言うのか~~』


「それは、こうするの」


 リティシィの言葉に応えるとリフィネは先ほどと変わらず空へと飛翔して、再び、イシュへと急降下する。


「……ふん」


 イシュはその様子を見て、鼻で笑う。なにせやっていることは先ほどと何も変わっていない。そうなると次の行動は当然。


「はーー!!」

「っむん!!」


 リフィネの声が聞こえてくるとイシュも力みの声を上げる。そして次の瞬間には二人の距離は数メートルとなる。


 ブン


 そしてイシュはタイミングを逃さずにモーニングスターを振るう。当然タイミングを完璧に測っているだけあり、モーニングスターはリフィネの顔面に吸い込まれているのだが。


 バサッ

「っ!?」


 リフィネが翼を動かすと、その場でリフィネの動きが変わり、モーニングスターを掻い潜る様にイシュへと激突する。


 ガッ、ザァアアアアアアア


『躱す!!リフィネ選手がイシュ選手の攻撃を躱して攻撃を加えた!!!そして最初のようにイシュ選手を押していく!!!』


 リティシィの実況中もリフィネはさらに動く。


「毎度毎度ただ押すってのも芸がないわね」

「っ!?」


 グン


 リフィネはランスで盾を押したまま地面スレスレを飛ぶと、そのまま斜め上にイシュの体を押し上げていく。


「まぁ盾で攻撃が通らなくても背後なら、話は別でしょ?」

「ぐっ」


 そして今度はイシュの背を地面に擦り付ける体勢に刺せると、そのまま岩肌を削っていく。


「っっっぐっ、くそ」


『イシュ選手、ピンチ!!大盾は魔具なのか、無事に防ぐことが出来ていたらしいが、どうやら背はそうはいかないらしい!!現に鎧が壊れて、線となった地面には血がにじみ出ている!!』


 リティシィの言う通り、現在はイシュの負けが濃厚だろう。実際に引きづられた後に、血がにじみ出たような跡があり、かなり大きく負傷しているのが見て取れる。


「くっっそ、がっ!!」

 ジャラジャラ

「ん?」

 クン!!


 イシュはモーニングスターを持った手を振るうと、なぜか鎖が伸びていく。そして鎖の一部を輪のようにして、岩に引っ掛けて、なんとか難を脱した。


「はぁはぁはぁ、くそ」

「そんなこともできるの。だけど」


 シュタ


 イシュは何とか難を逃れたものの、負傷を負い、隠しておきたい能力をあの場を脱するために使ってしまった。これはどう見ても、イシュの方が圧倒的に不利だった。


「なら、次はどう躱す?」

「っ!?」


 そして再びリフィネは行動を起こす。


 そこからは再び同じ行動を取る。飛翔からの急降下を行い、イシュの迎撃を避けてから軽く低姿勢から宙に持ちあげる。


 だが、そこから先は先ほどとは違った。


「足場のない所で、どれだけ、粘れる?」


 大柄なイシュを天井すれすれまで持ち上げると、リフィネはそのままイシュを放す。


 そしてそこから始まるのは完全なリフィネの独壇場だった。


『リフィネ選手が飛ぶ飛ぶ、飛ぶ!!自由自在に空中を飛び回り、イシュ選手を空中で封殺している!!』


 リフィネは高速での飛翔を活かし、落下中のイシュに攻撃を加え、そして地面に近づきそうになれば再び持ち上げ、そしてまた攻撃を何度となく繰り返す。


「っこの!!」

 ジャラ


 当然イシュもただやられているわけがなく、鎖を伸ばしたモーニングスターでリフィネに攻撃を加えようとするのだが、機動力が天と地ほど差があるためか、モーニングスターがリフィネに当たることは無かった。


「さて、飽きた」

「なんだと?」

『え?』


 イシュとリティシィが困惑の声を上げる。


 そして次の瞬間。


 ドゴォォン


「がはっ!!」


 イシュが勢いよく、地面に叩きつけられた。


 起こったことはごく単純、リフィネが高速でイシュの真上から突撃しただけだった。だが大小さまざまな怪我を負ったイシュにはこれで十分だった。


 イシュが作られたクレーターの真ん中で横たわっているとそのすぐそばにリフィネが降り立つ。


「さて、起き上がれるか?ちなみに私はもう終わりだと思っているが?」

「ま、まだ、ま――――」


 リフィネが問いかけると、イシュは何とか返答するのだが、さすがにダメージの許容限界を超えたのか、イシュの体は光の粒となり、勝負がついたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る