第464話 あっけない三回戦目
『決着がつきました!!!勝者はリフィネ選手!!そして残念ながら敗退してしまったイシュ選手にも大きな拍手を』
ワァアアアアアアアアアアアアアア
リティシィの実況で会場から拍手喝采声援が聞こえてくる。そんな声援の中、光の膜から吐き出されたイシュ・バータードは綺麗な礼をしてから敗者は去るのみとばかりに潔く歩を進めていく。そして勝者のリフィネは、ここまで見せたのだからとばかりに軽くコロッセオの観客の頭上を二周ほどファンサービスをして、そのまま自身が出てきたグラウンドの通路へと飛翔していった。
『それにしてもリフィネ選手はそこが知れないですね、空を飛べるだけではなく、自由自在に駆けることもできるとは~~イシュ選手も得意の大盾で途中は上手く巻き返していたのですが、もうあと一歩届かなかったですね。私としては―――』
リティシィの感想実況が始まると、観客たちもした方がよかった、もっとこう出来たのではないか、という会話があちこちから聞こえてくる。
「順当な結果な」
「ああ、今回はわかりやすかったな」
だが、テンゴとマシラは先ほどの戦闘を順当だと評価する。
「なぜ?確かに終始リフィネが押していましたが、それでもイシュが勝つ可能性があるのでは?」
その言葉に疑問を抑えきれなかったのかアルベールが問いかける。
「まぁ、いや、おそらくは8割がたリフィネが勝っていただろうな」
「なぜ?」
「簡単だ、空を飛ぶ奴相手に跳ね返す、もしくは受け止めるなんて行動はしちゃいけないんだよ」
そこからマシラは説明する。
まずイシュの戦闘スタイルだが、先ほど見た通り、完全な待ちとなっている。ここで相手が地上しか動けないのなら、相手はせいぜいが左右、そして身軽であれば飛び上がり頭上という狙いがあるだろうが、相手が空からだと言うと話が別だ。なにせ相手が斜めから襲い掛かってくるのに対して盾を構えるとする。その場合は相手が盾をよけて攻撃しようとすると、立ての上下左右はもちろんのこと、その斜め、いやもっと正確に言うならば360度どこからでも姿を現して攻撃してこれるという事。そういう時に視界が確保できる盾や籠手であれば、見ながら防ぐため問題ないのだが、これがイシュのように視界を大きく塞ぐ大盾では話が別だった。
「一応はあの、モーニングスターだっけか?それで攻撃を加えて、相手の動きを抑制していく技量はあるみたいだが、今回は空の敵だ。当然モーニングスターなど簡単に交わされ、様々な方向からくる攻撃を塞がなければならない」
「そして、ほかにも、あの大盾いくら鍛えているとはいえ、ずっと持ち上げ続けると疲れるだろうな」
テンゴの言う通り何もイシュも疲れないわけではない。ただでさえ重量がありそうな大盾なのに、加えて相手は空を飛んでいるため迫ってくる際はずっと持ち上げて構えていなければならない。もし、相手が地上だけしか移動できないのならば、地面に置き、横にずらすだけで済むが、上に構える空からの相手に対してはずっと持ち上げていなければいけない。
「それに、リフィネはほかにも何かるだろうしな」
「ほかに?」
「さすがにそこまではわからねぇが、何かを隠している奴の匂いがするのさ」
マシラの言葉にテンゴとエナが頷く。
「だから、俺たちは順当だと思ったんだよ」
「なるほど……では―――」
それから貴賓席ではアシラの講義が始まる。過去の戦闘でどうやれば負けていたはずの相手が勝てたか、アルベールが相手ならそれぞれにどうか柄などなどの話を貴賓席にいる者たちは静かに聞いていた。
そして話題は次の試合に移るのだが―――
「ああ、次の試合についてはだめだ。決定的に相性が悪すぎる」
「??相性?」
「予想してみろ」
アシラはそれだけを言うとコップの果実水を飲み、のどを潤す。
「では―――」
それからアルベールの予想を聞いて、アシラが指摘していくという時間が三回戦目の時間となるまで続いた。
『本日も折り返し~~三回戦目が始まる時間となりました!!』
ワァアアアアアアアアアアアアアア!!!
貴賓席で軽い昼食を済ませて、しばらくした後、リティシィの宣言で会場が沸き上がる。
『それでは入場していただきましょう!!“一蝕生骸”ユライア選手対“自傷贈与”オリアナ選手!!』
リティシィの宣言で二人が入場する。
一人はカーシィムの下でよく見かけていたユライア。褐色の肌に長い赤髪を持つ高身長の女性。武装は胸当て、籠手、脛当てのみ、そして特殊な繊維の服という、予選一回戦とともに変わらず何とも軽装な恰好をしていた。
そしてもう一人はオリアナ。真っ白い長い髪に赤い目を持つ美女で、髪に対比する様に黒い服を着ている。装備は銀の装備に赤い刃を持つ細い剣で、一回戦とは違い、銀のドレスの様な装備を付けていた。
(決定的に相性が悪い、か。まぁ、その通りだな)
俺は二人を見ながら先ほどの会話を思い出している。そしてその際に出したアルベールの答えとほぼ同じ展開になるだろうと予測していた。
二人がステージに乗り、光の膜が二人を包むとカウントダウンが開始する。
『さて、双方位置に着きまして~~~~~~~~~試合開始!!』
ワァアアアアアアアアアアアアアアア
リティシィの言葉で会場が沸き立つ。
ダッ×2
そして二人とも即座に駆け出して、お互いに接近する。
『双方接近していく!!そしてオリアナ選手が先制こうげ、!?』
リティシィはそれぞれに起こった行動に驚く。
何が起こったかというと、オリアナは素早く剣を振り、ユライアを牽制する。ここまでの行動はなにもおかしくないのだが、その後のユライアの攻撃が異常だった。
ザシュ
「っ!?」
「終わり」
ユライアは左から振られる剣に対して左での掌で受け止める。だが掌で剣を受け止められるはずもなく、剣は手首よりもやや下の場所まで食い込むことになった。
これでユライアは左手を失ったと誰もが思ったその瞬間、ユライアは右手でオリアナの頬に触れると
ガクン
「!?!?!?!?」
オリアナは膝から崩れ落ちる。
「っっ」
「ほらもう終わりだろう?」
ユライアは右手でオリアナの細い首を掴み、膝立ちになる様に支えると、左手を動かして剣を外す。
「さて、つまらないだろうが」
「くっ」
ユリアは右腕をオリアナの首に回し、左腕の肘裏でうまく締め上げる。
「運が悪かったな……じゃあな」
ゴキン
ユライアはオリアナの首をへし折る。
そしてユライアが首から腕を外すと、オリアナが地面に倒れていく。そして地面に横たわると、ユライアは足を振り上げて、オリアナの頭部に向かって振り下ろす。
ゴギャ
『っっっ、惨いと思うがこれも勝負なのです。勝者!!!ユライア選手!!』
ユライアのかかと落しがオリアナの頭部に埋めり、オリアナが光の粒子になると勝敗の宣言が挙げられた。
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