第68話 強すぎる力は同時に脆い

〔~セレナ視点~〕


「はぁ!!」


 私は自分の持っている輝晶剣を掲げて複数の剣を操りスケルトンに切りかかる。


 だがやはり傷つかない。それどころか各々が武器で迎撃し始めている。


「やっかいね」


 前で戦っているリンさんもやりずらそうにしている。


「セレナ、スケルトンの倒し方は知っている?」

「普通に攻撃して行けば倒せるはずだけど……」

「このスケルトンが特別なの?」


 多分そう、デフォルトで持ってないスキルが付与されていると思うの。


(ここで鑑定出来たらすごい楽なのだけれど)


 ゲームではデフォルト機能として使えていたのだが。


「セレナ!一匹そっちに行ったわ!!」


 ボロボロになりながらもこちらに走ってくるスケルトンが一匹。


「っっはぁ!」


 魔法ではなく手に持っていたリアシスロクスで切りつける。


「……え?」


 剣は先ほどまでの固い感触ではなくまるで砂を切ったときのような感触が伝わり。スケルトンは塵になる。復活する気配がない。


「なんで………分かった!!!!」


 私は手に持っている剣の詳細を思い出す。


 ―――――

 輝晶剣リアシスロクス

 ★×5


【輝晶剣】【晶魔法】


 貴重な鉱物、光結晶ルクレジュアを使って作られた魔剣。名工が光結晶を鍛え上げ、輝晶として剣と成した。長き時を得て剣は魔力を取り込めるようになり、さらにつよい輝きを生み出すことができるようになった。そのほかに魔力を含んでいる結晶や鉱石を使用することで魔法が使える。

 ―――――


 この輝晶剣は【晶魔法】という物がある。これは宝石や魔力のこもった結晶を使うことで魔力消費無しで特殊な魔法を使うことができる。


 さきほども【薄光化】を発動し、今もそれが継続している。ただ光っているだけだと思っていたが、これが光属性を得ていたとしたら。


(ボロボロ、つまり瀕死のタイミングで光属性で攻撃すると倒すことができる)


 これにそっくりのスキルを一つ知っている。


「バアル様!!こいつら【不死】のスキルを持っていませんか!!!」

「持っているぞ」


 予想通りのスキルを持っていた。


「スケルトンはすでに死んでいるから持ってても不思議じゃないと思うのですが」


 確かにリンさんの言う通りなのだが。


「本来は持っていないはずなの、だけど」

「……このスケルトンは持っていると…………でどうやって倒すの?」

「簡単よ、すべてのHPを削って再生し終わるまでに光属性のみの一撃をぶち込めば解決!!」

「だそうですよ!!!」



「よくやった」










〔~バアル視点~〕


 リンのセレナの会話でスケルトンの【不死】が理解できた。


「んじゃ早速、と言いたいが」


 一応、狼の方に視線を向ける。


 ガァアアア!


 相も変わらずスケルトンに無双している。


(だけど何であれだけ動いているのに大丈夫なんだ?)


 ――――――――――

 Name:

 Race:白亜狼

 Lv:15

 状態:孤独

 HP:547/577

 MP:854/874


 STR:34+50

 VIT:17+50

 DEX:28+50

 AGI:57+50

 INT:24+50


《スキル》

【狼牙:14】【狼爪:15】【防毛:7】【身体強化:19】【魔力察知:10】【臭気探知:21】【獣の勘:9】【夜目:18】【念話:5】【言語理解:2】【光闇耐性:――】

《種族スキル》

【群れで個となる】

《ユニークスキル》

【孤独ノ月狼】

 ――――――――――


「……へぇ」


 先ほど見たステータスよりも格段にあがっている。


 だがもっと驚くところはMPの回復速度だ。


 854→849→859→854→864


 と、どんどん上がっていく。


(あの仕組みは知りたいな)


 あれがあれば『真龍化』も使いやすくなる。ほかにも戦闘中に魔力を気にせずに戦うことができるようになる。


『なにやってる』


 おっと注目しすぎたせいか心配された。


「一匹でよく善戦しているなと思ってな」

『……じいちゃんのおかげだ』


 そういうとそのままスケルトンの相手を続ける。


 ただ倒せてはしてもとどめが決められないのでどんどん復活している。


(まぁ何とかなっているから問題ないだろう)


 復活しても即座に倒されるので復活している意味がない。











「さぁて、そろそろ反撃に出るとするか」

『強がりを、貴様はここで腐り果てる運命っ「『飛雷身』」!?』


 口上の最中にリッチの真横に移動するとそのままバベルをぶち込む。


『グベバ!?』


 吹き飛ぶと同時に『怒リノ鉄槌』を発動させ、殴り、もう一度『飛雷身』で飛ぶ。


『!?『怨念の障壁』』


 何とか防御しようと怨霊の姿をした盾を出現させるのだが。


「ふん!!」


 バキン!!!!


『怒リノ鉄槌』を維持したまま『パワースイング』で振りぬくと、障壁をブチ破り、リッチの左腕を削り取る。


『なぜだ!?なぜ!!私は力を得た!!!これならば貴様に勝てるはずなのに!!!!!『死者の呪縛』』


 欠けた体から複数の骨の鎖が伸びてしばりつけようとしてくる。


(だけどスピードが全く足りない)


『飛雷身』で簡単に避けられる。


『くっ、こうなれば―――』


 なにやら長々しく詠唱を綴る。


 だが


「そんな状態は殴ってくれって言っているものだぞ」


 すぐさま目の前に飛ぶと殴りかかるのだが。


 ガン!


 光の障壁に阻まれる。


「!?なんでアンデッドが光魔法を使っている!!」

『光魔法ではない、神聖魔法だ!!!』

「どっちでもいいわ!!」

『良くない!!!』


 どうやら先ほどの詠唱は光魔法を使うための物だったらしい。


『だから神聖魔法だと言っているだろうが!!!!』

「知るか!!お前ら教会の連中はそう言っているがな、アレは完全な光属性の魔法だよ!!!」


 ベースは完全に光属性だ。ならそれは光魔法って言っていいだろう。


『貴様みたいな不届き者は死ぬがいい!!『聖天斬ホーリ―クロス』』


 光属性の斬撃が襲い掛かってくる。それを『飛雷身』で避けると再び詠唱がなされる。


『『自然の祝福プネウマ』『神の祝福ゴットブレス』』


 ザルカザは強化の魔法を自身に掛ける。


「なんで光属性の魔法が掛かっているのにダメージがない!?」


 普通はアンデッドに光魔法は効果てきめんのはずだ!!!


『ははは!!知らないのか、神聖魔法は単純に攻撃性があるものと回復効果があるもののみアンデッドにダメージが入るのだよ!!』


 強化系の魔法は普通に使える訳だ。


「とりあえずさっさと滅べ!」


 背後に『飛雷身』で背後に飛んでそのままバベルを振り下ろすのだが。


 ゴン!!


 何やら白い盾が現れてバベルを防ぐ。


『もうその奇襲は通じんよ!!』


 すると再び同じ詠唱を行う。


(そんな隙はあたえない)


 すぐさま死角に飛び再び振り下ろすのだが。


『そう来ると思っていたよ!!『怨みの奔流』』


 リッチの体から闇のようなものがにじみ出て周囲を飲み込む。


「厄介な手だな」


 何よりも俺が移動した瞬間に自身の周囲を攻撃してくる。


 これでは移動した意味がなくなる。


(さっきの一撃で殺せなかったのは痛いな)


 光の盾とあの闇で『飛雷身』からの一撃がなかなか入らない。


『ふむ、やはり一度使った後すぐさま使うのは無理なようだな』

「………」


 リッチの言う通り『飛雷身』は連続で使うのは難しい。


 なにせ『飛雷身』は視認し認識した場所に飛ぶのだ、飛んだ瞬間にすぐさま周囲を完全認識するのはなかなか骨が折れる。


 例えるなら手元に注意しなければいけない状態で周囲を注意しろと言われているようなものだ。


『『怨みの奔流』!!』

「っいてぇ!!!」


『飛雷身』のタイミングが間に合わずに腕の一部が飲み込まれてしまった。


 すぐさま見てみると黒く浸食されている。


「リン!!!」

「はい【浄化】!!」


 すぐさまリンの傍に飛び治療を頼む。


 リンが【浄化】を使うと腕の黒い部分が消えていく。


『ふむ、呪術に対しての回復手段はあるのか……ではこちらでどうだろう『悪縛の天輪』』


 今度は光の輪が現れ、俺に向かって飛んでくる。


 それに対してじっとしているわけもなく、スケルトンを蹴飛ばし、変わり身にする。光の輪はスケルトンを中に納めて動きを阻害する。


「ねぇ【浄化】であのリッチ倒せないの?」


 何やらセレナが助言をしてくる。


「残念だが【浄化】はアンデッドには意味ない」


 【浄化】は異常を正常に戻すだけ、つまりはアンデッドという種族に異常がなければ意味がない。


(前世の知識に引っ張られているな)


 前世ならエクソシストやらなんやらでお祓いするイメージだが、この世界では物理的にぶっ壊してから魔法でとどめを刺すだけだ。


「『天雷』」

『『怨霊の奔流』』


 正面から放つと対抗して先ほどの闇を放ってくる。


(埒が明かないな)


 奇襲もなぜだがタイミングが知られているし、真正面からは長引けば自然回復力の違いで少し不利だ。


(なら多数で攻めたいが……)


 リンたちは強化されたスケルトンに手間取っている。


「……………こうするしかないか」


 考えをまとめ、実行する。

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