第16話 ダンジョンクリア報酬
三人はほぼ同時にそれぞれの武者を倒し終わる。
最後に残っていた武者の体は完全に崩れ去り、祭壇の中心部に豪華な宝箱が出現する。
「やっぱりダンジョンの醍醐味はこの宝箱でござるな!」
ガチャを引く時のワクワクを感じているのかリンは宝箱の前では上機嫌になっていた。そんなリンの前でラインハルトが宝箱を開けると中には一つの腕輪が入っている。
―――――
ユニコーンリング
★×4
【純潔】【浄化】【女性専用】
白き聖なる獣の力が宿った腕輪。この腕輪をしている者はいかなる不純をも
―――――
「「「………」」」
鑑定した結果を見て、俺たちは何とも言えない顔をしている。
ほかのステージの宝箱ならレア度もありそれなりに使えたのだが、【女性専用】となると話は別だ。
「現状ではリン以外に使い道は無いな」
「いえ、持ち帰るのならエリーゼ様にでも差し上げた方がいいでござる」
確かに母上なら使えるし、その必要性もある。
だが
「この二つ目のスキル、【浄化】がもし毒などを無効化できるなら護衛であるリンが持っている必要がある」
【浄化】が解毒を行えることができるのなら、やっぱり護衛であるリンが持っているのがふさわしい。
「納得してくれるかラインハルト」
「ええ、もちろんです」
ということでリンが装備することになった。
「で、どうやって帰る?」
先ほどの武者はここが最後だと言っていたが、見回した限り地上に出るための手段があるようには思えない。
「……どこかに入り口まで戻るゲートがあるはずなのですが……」
ラインハルトの経験談から最終エリアに到達すれば確実に地上に戻るための手段があるという。なので三人で周囲を見渡し、前のステージとの違いを探す。
「……もしかしてあれか?」
気づいたのは祭壇に埋まっている水晶だ。そして水晶の中には何かしらも模様が描かれていた。
俺の言葉でラインハルトが水晶に近づき、触れると祭壇の中心部に魔法陣が浮き上がる。
「……これに乗ればいいのか」
「はい、以前に使った帰還の魔法陣はこのようなものでした」
「よし」
俺たちはドロップアイテムを拾ってから魔法陣に乗ると、光に包まれ視界が見えなくなり、体が浮く感覚がした。
光が収まる、体が重力に引っ張られる。そして視力が戻ると周囲を見渡すのだが一面真っ白な不思議な空間が広がっていた。
「なにが……」
周囲を見渡すが二人の姿がなかった。
「リン!ラインハルト!」
白い空間では声が反響して遠くまで声が届いているはずなのだが、応答する声は返ってこなかった。
(………いないのなら仕方ない)
不思議と輪郭がわかるこの真っ白い空間は正方形の形をとっており、一つの面に通路ができている。そこを通ると円形の部屋にたどり着いた。
そして円形の中心部に行くとモノクルの表示と似たようなものが出てくる。
―――――
Congratulations!
おめでとうございます。貴方はダンジョンの初踏破者となりました。
功績に基づき報酬を用意しました。
ダンジョン初踏破報酬。
最大ダメージ報酬。
MVP報酬
死者ゼロ報酬。
ポーション不使用報酬。
ダンジョンボス指定条件撃破報酬。
計6つの報酬を受け取れます。
―――――
―――――
受け取る報酬を選んでください。
【武具箱】
【装備箱】
【装飾品箱】
【消耗品箱】
【素材箱】
【ランダム箱】
残り【6回】
―――――
こういった表示が出てくるともう一つ選択する画面が出てきた。
(つまりここはダンジョン制覇のクリア報酬を渡される場なのか?でも、なんでリンたちとはぐれている?それぞれに報酬があるのか?)
この仮説が正しければ二人とはぐれた理由も納得なのだが、なにせ初めてのことに加えて自分からの観測しかできない手前、不明としか言えなかった。
「とりあえず選ぶか」
ちょうどよく六回選べるのでそれぞれを一回ずつ選ぶと目の前に6つの箱が現れる。
「御開帳」
まずは一つ目に【ランダム箱】を開ける。
そこには見慣れた
「………まさか、な」
鑑定のモノクルを取り出し、そして―――
―――――
鑑定のモノクル
★×7
【鑑定】
このモノクルを掛けると物品を鑑定することができる。鑑定対象により消費する魔力が変化する。
―――――
鑑定した結果は無情だった。
「…………」
何かいい物が手に入ると期待していた反動で何とも言えなくなる。
(まさか同じものが出るなんて…………はぁ、気を取り直して次に行くか)
気落ちしながら次に素材箱を開いてみる。
―――――
クシュル鋼
★×6
竜の鱗をまねて作られた金属。魔導触媒としては全く役に立たないが、硬度は竜の鱗とほぼ同等。
―――――
(比較的当たりなのか?)
残念ながら素材の良しあしなどはよくわからないため、価値もわからないままだった。
次の【消耗品箱】を開ける。
―――――
マナエリクサー
★×4
【魔力全回復】
膨大な魔力を凝縮し作られた薬。雫一滴で魔力を1000回復させるほどの薬、だが栓を開けてしまえば徐々に魔力が抜けていき、ただの水と成る。
―――――
「魔力の回復手段があるのはありがたいな」
市販でも魔力を回復させるポーションもあるのだが、量は10回復できるかどうか。今回は当りと言えて、同時に緊急の回復手段ができて安堵している。
―――――
魔蓄のイヤリング
★×3
【魔力蓄積:0/200】
魔力を蓄積できるイヤリング。装着しているだけで過剰魔力を吸収して、装着者の魔力が無くなると自動で供給してくれる。
―――――
次の【装飾品箱】を開けるとイヤリングが入っていた。
「……使えるな」
魔力を溜めて置ける、つまりは最大魔力量を増やすことと同義。これは当たりだった。
次に開けたのは【装備箱】
―――――
黒燐のマスク
★×5
【死の灯】
死者の送り出すためのマスク。死者を安らかに眠らせる灯を司っており、一切の痛みを与えずに冥府へといざなう。
―――――
出たのは黒いマスクだ。
マスクは頭全体を包み込むタイプで、全体的に黒くところどころにある白い紋様がなかなか味をきかせている。
「だが、普段から使うことはできないな」
さすがに日中にこのマスクで町に出歩きたくない。歩いたが最後、必ず不審の視線を浴びることになる。
そして最後の【武具箱】を開ける。
「やたらと大きいな」
これまでの箱と比べて3倍ほど大きさが違う。
「よっと」
開けてみると何やら不思議な槍があった。
―――――
神罰槍“バベル”
★×8
【XVI:塔】
アルカナシリーズの一つ。神からの聖なる力を受け止める神の家の一部を使用し、神の力の一端を得た槍。その力は破壊、破滅、崩壊、災害を容易に引き起こす。
―――――
形は十文字槍で、石突の部分には水晶体が蔦に絡まったように埋まっており、刃の部分以外は古代の文字がびっしりと書かれていて、ところどころ苔のように変色しており歴史を感じさせる槍だ。
「……っふ!」
とりあえず一振りするのだが。
「サイズが合わない……」
少し短い槍サイズでも今の体には長すぎてるくらいなので、当然ながらサイズが合うはずもない。
「……出す機会は当分先だろうな」
使えないので外れと思いながら『亜空庫』に仕舞う。
「それで出口はどこだ?」
宝箱をすべて閉じると、宝箱が消えて同時に魔法陣が現れる。
(これしかないか……)
魔法陣の上に立つと先ほどと同じように浮遊感を感じる。
そして視界が明転すると、なぜだか頭からつられる感覚がする。
「っ痛!?」
急に視界が暗くなり、全身が締め付けられる。
「……ップ、若様なにやっているんですか?」
なぜだか逆さまになったラインハルトがこちらを覗いている。
今の自分の状態を確認すると、どうやらさかさまになっているのは自分の方らしい。
「……」
何かに挟まったように体は動かず、ラインハルトの方が明るいことから、何やら薄暗くどこかの穴のような部分に挟まっているらしい。
証拠に顔を横にしてみると木目が見える。
「……出せ」
「はい」
ラインハルトは俺の周辺の木を壊して、俺が出られるスペースを作り出す。
穴から脱出してみてみると、どうやら俺はダンジョンができた木の虚の一つに挟まっていた。
「お前たちはどこから出てきた?」
「私たちはあっちの虚ですね」
ラインハルトたちが出てきた虚は人を5人入れても余裕がありそうな大きさがあった。
(なぜ俺だけ……)
不運に見舞われて少し気分が落ち込む。そして空を見上げると紅く染まって今にも夜になりそうな時間だと気づく。
「今日は戻るか」
「了解でござる」
「ですね」
俺たちはダンジョンから離れて、ジャフラタへと向かう。
「そういえばお前たちは何を得た?」
好奇心で問いかけると、二人は嬉しそうに自分の得たものを見せてくる。
「これなんですが…」
ラインハルトが得たのは
―――――
獅子の王盾
★×4
【獅子の心臓】
獅子の姿をかたどった盾。この盾を持つものに臆病者はふさわしくない。
―――――
一つ目は大きな盾。ライオンの頭が盾の中心部にあり、
―――――
強力の指輪
★×3
【強き力】
自身にさらなる力を与えてくれる指輪。
―――――
二つ目は紅い宝石が埋め込まれている指輪だ。
―――――
★×3
【200HP回復】
最高品質な
―――――
最後に一般に売られている奴よりも高品質な
(ラインハルト………………お前は運がない方だな)
もし仮に幸運値というものがあるならば俺たちの中でダントツで低いのだろう。
なにせ三品とも正直なところすべてそこまでほしいものではない。
「次は某でござる!」
リンが見せてきたのは籠手と足具だ。
―――――
流水の籠手
★×4
【水纏い】
水の魔力が込められている籠手。水を纏い衝撃や炎を受け流すことを目的に作られた籠手。
―――――
―――――
土知りの足具
★×5
【土伝え】
土がある場所では敵を見逃さない足具。地面に足がついている場合、周囲の状況を知るすべを持つだろう。
―――――
碧色の籠手は日本風で、肘まで覆えるようになっている。
足具は足首につけるタイプの装飾品だ。形は輪っかでなぜだか足首に通すときには大きさが変化してリンの足首にフィットする。
「あ……」
「どうした?」
「なるほど、こういう感じでわかるんでござるな」
どうやら足具がどのような感じか確かめていたみたいだ。
「どんな感覚だ?」
「そうでござるな……周囲の土の振動を感じ取ってどこに敵がいるかを知るスキルでござった」
土限定のソナーのようなものらしい。
「バアル様はどのようなものが出たのござるか?」
「俺は―――」
道中で新しい装備の確認をしながらジャフラタの町に帰還した。
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