第99話


 ──これが、俺の秘密。

 こんなの言えるわけないじゃん?

 晴は怒り狂いそうだし、ななさんは変に意識して避けられたら嫌だし。ま、こんなシャレにならない冗談、誰にも言うつもりないけど。


 いつかじーちゃんになって、天国に行ったら。その時は、伝えるのもアリかな?生まれ変わったらさ、ぜってー晴より先に、見つけるんだ。今世ではちょー無謀なことも、来世ではリセットされてんじゃん?そしたらななさんは俺のこと、好きになってくれるかなー。なってくれたら嬉しいな。


 来世でも無理だったらさ、俺の前世はマジで悪人だったんじゃね?ってことでソイツ恨むよ。いーじゃん。今世では諦めることにしたからさ。エラくね?俺。


 親友が幸せそーに笑ってるの見て、ぶち壊せるほど、最低な男じゃないし。そんなことしようもんなら、それこそ来世でもななさんに好きになってもらえないだろうから。


 さ、来世に向けて、男磨いとくか。そんで明日からはちょっといい事しよう。神さま、来世に貯蓄しといて?そんででっかいご褒美、ちょーだいね。



 優しい香りのする、大人のくせに可愛くて鈍感で、超絶イケメンに溺愛されて、照れたように笑う……あの人を。

 来世では、チャンスぐらいくれよ?


 いつかあの人が俺に似合うとか言って、くれた甘ったるいいちごオレ。嫌いだったはずなのに、いつのまにか買っちゃってるからこえーよ。中毒性やばすぎ。


 おっかしーな。めちゃくちゃ甘いくせにさ。


 ……なんで今日はちょっと、しょっぱいんだろ。


 ズズッと最後までいちごオレを吸い込んだら、鼻の奥であの人の優しい香りが掠めたような気がして。それを振り払うように、少し遠くにあったゴミ箱へ空のパックを投げ捨てた。

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