第14話


「川瀬さん!?このイケメン誰ですか!?」

 後ろから出てきたリエちゃんが鼻息荒く問いただしてくる。


「えーっと……」

 答えかねている私に、晴がにっこりと笑って一言。


「ななちゃんの彼氏候補です、どうぞよろしく~」

 予想を裏切らない答えを告げた。


「えっ……」

 そう声を漏らしたのは唖然としているリエちゃんじゃなく、隣の男の子だった。


「……そんで、相談なんですけど。おねーさん」

 男の子を冷たく睨むと、リエちゃんに首を傾げてあざとく上目遣いをする晴。

「はいなんでしょうっ」

 顔を真っ赤にしながら手をぴんと上げるリエちゃんに、微笑んで


「うちのななちゃん、もう誘わんといてもらえます?俺が予約済みなんで」


 なんて意味の分からないクレームをつけた。

「了解しましたあっ!」

「ふざけんなばか!!」

 もちろん、イケメン大好きな女子が超絶イケメンからのお願いを断るわけもなく。今後リエちゃんからのお誘いは一切なくなるのだ。



 自分たちをはるかに凌駕するイケメンの登場に、その場にいた男性陣は縮こまってしまっているし、今まで“当たりだ”と色めきだっていた女性陣も目をハートにして晴を見つめているから大きなため息しか出ない。


「さ、ななちゃん帰るで」

 私の手を取って、これ見よがしに指を絡めると、最後にもう一度さっきの男の子を横目で見て晴は踵を返した。




「……なにしてくれてんのよ」

 晴に引きずられるように歩く私の抗議の声は届いているのか。返事もせず黙々と足を進める晴。……こりゃお怒りですな。


“当たり”のはずの合コンを邪魔されて、怒らないといけないのは私の方なのに。どこか他人事のように感じている。どこかで「ああ、やっぱりか」なんて思っている自分が不思議でならない。でも、これで出かける前に晴がゴネなかった理由も何となく察した。

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