第11話


「彼氏なんて作ろうと思えばいくらでも……」

 そう負け惜しみのように呟けば、

「ああ、“諦めたる”ってのは、ななちゃんが連れてきた彼氏が俺よりハイスペックな男やったら、の話やで?」

 にやりと笑って見せる。そんな男、たしかに滅多に存在するもんじゃない。何だか嵌められた感が拭えない。


「……顔だけのくせに……」

「マジで襲うで!?」

 聞こえないくらいに悪態をついたつもりだったんだけれど、彼にはばっちり聞こえていたようだ。


「元バスケ部のエースやし、勉強やったら高校でも学年10位以内に入ってたわ!大学やってそこそこ有名なとこやん!?」

「……そーなの?」

 知らんのかい!なんて怒ってるけど今日久しぶりの再会なんだけど!?


 晴から聞かされた有名大学の名前に目を見開く。あの成績どん底少年はどこへ!?


「……マジで?あのチャラチャラした友達も?」

 さっき晴と一緒にいた遊び慣れてそうな男の子たちを思い出す。

「おん。人は見かけで判断したらアカンで?」

 してやったり顔がまた腹立つな。


「そんでこのスタイル!」

 立ち上がった晴がポージングを決めるけど、悔しいくらい様になってる。

「ガリガリなだけじゃ……」

「うっさいわ!スレンダーって言えや!」

 今日イチの怒声。だって下手したら私よりガリガリなんだもん。


「……ちょっと気にしてんじゃん」

 図星だったのか言葉に一瞬詰まった。


「背も高い方やろ?顔もちっさいしな。」

「スルーすんなよ」

 顔を引くつかせる晴に、優しい私はこれ以上追及しないであげた。


「紳士やし優男やし一途やし。こんな優良物件他にないで!?」

 ……たしかに。とは言わないでおく。外見に関しては“優良物件”どころか“高層マンション最上階”レベルだろう。


「……最後の紳士と優男は間違えてない?」

 再会してから数時間。“優しさ”なんてこれっぽっちも感じなかったんだけど?


「……まあ、他の女に優しくした覚えはないけど」

「私も優しくされた覚えないんだけど!?」

 すると待ってましたとばかりに口角を上げる。嫌な予感。


「こっからやん。覚悟しときや?俺、好きな女にはめっちゃ甘いで?」

 6個も年下、現役大学生の色気に充てられてくらくらする。


「……いや、遠慮しとく」

「させるか!!」

 5年の歳月を経て、再び非凡が舞い戻ってきた。

 どうか……私の人生、ここで終わりませんように。

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