第8話
イケメン大学生からのあまりに突拍子もない告白に罰当たりだとは思うけれど即答でお断りして、何事もなかったかのように喋りながら二人で並んで歩く。
私が住むマンションに着くと晴は意外そうな顔をした。
「へー。ここがななちゃんち?」
「……なによ」
「一人暮らしなんやな」
しかも俺のボロアポートとは違うな……なんて。アラサーOL馬鹿にするな。
「実家からだとちょっと遠いから」
そう答えると頷きながらニヤリと笑う。
「ふーん、好都合」
「は?」
何か悪いことを企んでる。直感した。
「1人ぐらい、増えても変わらへんよな?」
「は?」
「さ、送ったんやから茶ぐらい出してや」
「は?」
どんどん進められていく会話についていけない。
「……ななちゃん、さっきから『は?』しか言うてないで」
「誰のせいだよ!!」
そう声を荒げると、こてんと首を傾げる確信犯。
「……え〜、俺ぇ?」
「……ッ。バカ!!」
どきっとしたのはうん、驚いたせい。
「はは。そやで。俺、ななちゃんバカやから。ごめんなあ」
「ぜんっぜん、心こもってない!!」
“ななちゃんバカ”には触れずに仕方なくエレベーターに乗り、部屋へと招き入れる。部屋、綺麗だったかな。なんて……晴相手なら少々汚くてもいいか。
「……この部屋に男入れたことあるん?」
「あー……」
答えにくいこと、聞かないでほしい。確かに男性経験は多いとは言えないけど、全くないわけじゃない。けど、こんな子どもに言うのはなんだか憚られる。
「え"、ガチで!?」
無言は肯定と捉えた晴はぐっと詰め寄ってくる。
「お、大人なんだから、別にいいでしょ!?」
「まさか、彼氏おるとか言わへんよな!?」
「……いたらそう言って断ってるわ」
「あービビった!!」
胸を撫で下ろしてふにゃりと苦笑する彼に、なぜか私までホッとした。
「私のことモテへんアラサー女とか言ってたくせに」
「5年前自分で言うてたやん」
そういえばそんなことも話したっけ?晴とはいろんな話をしたから、何を話したかなんて覚えてないけど。
「いつの話してんのよ!!」
「華の大学生やったあの頃でモテへんのにアラサーになった今モテるとは思わんけど?」
くそう、言い返せない……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます