第7話


 ……えーと。


「……ごめんなさい」

「ハァ!?なんでや!」


 晴の真剣な表情に見惚れる間もなく、予想の斜め上の答えに思わず即答した。


「いや、無理に決まってんでしょ!」

「こんなイケメンやのに!?」

「イケメンは好きだけど、6個も年下でしょ!?犯罪だわ!」

「ハタチ越えとるから大丈夫や!!」


 ああ言えばこう言う。ついさっき告白した、少し緊張したような不安そうな表情とは正反対のドヤ顔。だけど、決してふざけてるわけじゃないのは私にもわかる。


「学生と付き合うなんて無理無理!私は早く結婚したいの!」

「何言うてんの?18なったらいつでも結婚できるんやで?」

 そんなことも知らんの?という目で見てくる晴。そういう問題じゃない!



 ああ……なんだか、すごく懐かしい感覚。5年前も、こうやって6つも年下の中学生に振り回されていた気がする。変わらない私たちの関係性。どこか心地よい。

 自分が自分でいられるのはすごく楽だ。きっと、そんな恋人なら素敵なんだろう。だけど、それは相手が同じ世代に限ってのこと。6歳の差は片方が子どもっぽいとか片方が大人っぽいとか、そんな性格的なものでは埋められないほど大きいと思っている。


 ……というか、6個も年下を恋愛対象になんて見たことがないから、恋する感覚が分からない。


 だって、晴とイチャイチャしたり恋人らしいことをしたりそれこそ結婚する未来なんて……想像できない。


「あのねえ……私は年下とは付き合わないの!そんな時間も余裕もノリもない!」


 私だってもう四捨五入すれば30歳。アラサーと呼ばれる年齢までやってきている。次に付き合う人とはそんな未来を描ける人がいいもの。無難でいい。平凡で構わない。


 こんな、訳わからないくらいのイケメンと、学生のノリで恋愛するほどもう若くはないの!



「……アホか。モテへんアラサー女相手に、結婚も意識せんと告白するわけないやろ。ちゃんと考えてるわ。そらちょーっとは待たせてまうかもしれんけど?俺は本気やで。やないとモテモテな女に困らんイケメンな俺様が、こんなとこまで追いかけてこんわ」


 ……一理あると思ってしまった私って。

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