第18話 今日から俺はマッケンテンナ(5)
息を整える俺。
ふと見上げると、家の前には見知らぬ生き物。
というか、二頭の馬。
その二頭の馬は、黒い重厚な客車を引いていた。
窓枠には何やらこまごまとした金色の装飾で取り囲まれている。
漆を何層も重ね塗りしていそうなその車体の壁も、よくよく見ると丁寧に彫り込まれて、立体的にその表面を飾る。
どう見ても普通の馬車には見えない。
というか、これに乗っている奴は絶対金持ちやろ!
どこぞの異世界にあるといわれる乗り物、レク●ス、いや、ベ●ツ、いやいや、ロールス●イス並みの高級感である。
昨日雨が降ったせいか、家の前にはところどころ泥の水たまりができていた。
そのせいか、その中をまっすぐに進んできた馬車の車輪には泥がまとわりついている。
その内輪の隙間から時々、小さな足が見え隠れしていた。
どうやら馬車の向こう側に誰かがいるようである。
だが、そんなことは俺には関係ない。
そんな馬車を横目に見ながら、家の玄関に近づいた。
そんな時、馬車の向こうで見え隠れしていた足が叫んだ。
「なんだこれ!」
その声はどうやら、男の子。
馬車向こうにもかかわらず、その叫び声がはっきりと聞こえた。
「わぁぁ、僕ちんに近づくな!」
何やら、ボコッとけるような音が聞こえたかと思うと、馬車の影から、ビンクスライムがコロコロと転がるように出てきた。
そして、それを追いかけるように、声の主が現れる。
「なんでモンスターがいるんだよ! このっ! このっ!」
そして、何度も何度も足を振り上げて、何度も何度もピンクスライムを押しつぶす。
俺はとっさにかけていた。
「やめろよ!」
膝まづいた俺は、ピンクスライムを抱きかかえ、その足から避けるように身をよじる。
突然の俺の出現に驚いたのか、男の子は足を振り上げたまま動かなくなっていた。
靴先からは泥水がぽたりぽたりと落ちてきて、その下にいる俺の背中に小さな丸を描いく。
そんな俺を睨む男の子
「お前なんだよ! なんでモンスターなんかかばうんだよ! まさか、お前もモンスターなのか!」
そんなわけあるかい!
どう見ても俺は人間だろうが!
という反論を言う間もなく、何かが俺に飛んできた。
男の子が、俺に石を投げつけていた。
それも、何度も、何度も。
ビュンビュン飛んでくる石。
俺は、ピンクスライムをかばうように男の子に背を向けて丸める。
俺の背に石がぶつかるたびに、泥水のしぶきが巻き散った。
それとともに痛みが走る。
だが俺の胸の中では、おびえるピンクスライム。
散々踏みつけられたせいか、こいつのほうが痛そうである。
俺は、目をつぶり、歯を食いしばる
なんだ! こんなもの!
そんな俺を心配するかのようにピンクスライムの目が見上げていた。
「大丈夫だよ……」
俺は、そんなスライムを安心させるかのように、ぎゅっと抱きしめた。
瞬間、赤き光が円盤状に広がった。
その
それどころか、いまだ投げ続けられる石、それが当たっても全く痛くないのである。
だが、代わりにピンクスライムがどんどんと弱っていくような気がした。
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