第14話 今日から俺はマッケンテンナ(1)
ケロべロスの難から一命をとりとめた俺。
夕焼けに赤く染まる道の上を飛び跳ねながら帰っていた。
五匹と一人の影が長く伸びている。
「魔獣戦隊マジュインジャー!」
俺が叫ぶと五匹と一人の影がピタリと止まる。
赤い夕陽を背景に、思い思いのポーズを決めている。
ヒヨコなんて短い足で上段蹴り!
子猫は、右手を上げて招き猫!
アオダイショウはとぐろまいて、
ミドリガメは、頭をすっこめた。
ピンクスライムは、恥ずかしいのか、ほほを染める。
みんな互いのポーズを見ながら大笑い。
今日も夕日にカラスが鳴いた。
さてはて困った。
家に帰ると、俺の鼓膜を突き破らんばかりの金切り声。
母が錯乱状態張りに悲鳴を上げたのだ。
そりゃ当然だよね……
全身びちょびちょ。
しかも、服は破れている。
まぁ、この辺りは、森で遊んでいれば、いつもの事か……
だが、今日はプラスアルファで、服が全身、真っ赤っか!
しかも血の色!
血液特有の鉄くさい香りが、家の中に広がっていく。
もう、顔面蒼白の母が、あわてて俺のもとへと駆け寄ってきた。
叫び声か泣き声か分からないが、何か喚き散らしている。
懸命に俺の体のをさする。
腕はあるのか、足はあるのか、どこかけがをしたところはないのかと。
懸命に調べている。
「大丈夫だよ……」
俺は、母を安心させるかのように言った。
だが、母は信じない。
そりゃそうだ、服につく赤きしみは、腕一本ちぎれたぐらいの大けがを想起させる。
まあ、実際は腕一本ではなくて、腕二本なくなっていましたけどね。
などと、そんなことを母に言えるわけでもなく、俺は、ただただ、大丈夫だよと言うしかなかったわけで。
パンツまで脱がされた俺は、体の隅々をチェックされた。
五体はちゃんとそろっているのか?
息子の息子はちゃんと元気なのか?
どこかに刺し傷はないのか?
内部損傷したところはないのか?
フルちんで、しばらく健康診断を受けていた俺。
その周りでヒヨコと子猫とミドリガメ、アオダイショウが楽し気に走り回り追いかけっこをしていた。
俺もあいつらと早く、遊びたいな……
ひとしきり体をチェックし終わった母は、安心したかのように、その場にしりもちをついた。
「はぁ……よかった……ヒイロ……あなた、何してきたの? これは、どう見てもただ事じゃないわよね」
「別に……」
俺は、とりあえずごまかした。
すると、母の目がみるみると涙をたたえていく。
そして、エプロンの裾をギュッと握りしめたかと思うと、それを顔に当て泣き出した。
「えーーーん! 私のヒイロが反抗期になっちゃった! えーーーーん!」
はい?
何ですかこれ?
この反応は何ですか?
というか、子供が反抗期を迎えるのは自然の成長でっせ!
それをほほえましく思うのが親の務めだろうが!
と、そんなことを言えるわけもなく
泣きわめく母を見て途方に暮れた。
だが、母は泣き止まない。
俺は、ついにあきらめた。
母の肩に小さき手を置きつぶやいた。
「お母さん泣かないで……あのね、お母さん……」
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