第2話 チョコットクルクルクルセイダーズ(1)
別に俺は参加したかったわけじゃないんだよ。
成績優秀ということで、国王から無理やり命じられて、お目付け役として入れられただけだから。
国王の命令だからアリエーヌ姫様も渋々従うしかなかったらしい。
問題は、のこりの三人。
これまた……どうして、この三人。
学校におけるアリエーヌの総合成績は、下から数えて4番目。
さすがに進級はさせてもらえるものの、通常の成績評価までは無理だった。
まぁ、仕方ない。
試験はみな平等にしないとね。
ならば、評価点として下駄を履かせたいのだが、普通の下駄では間に合わない。
天狗が履く一本歯下駄でもまだ足りない。
これは無理だって!
まぁ、留年はしてないんだからいいよねってことで、とりあえず通常試験は見ないふり。
かといって、そんな姫様をバカにできるやつなどいやしない。
だから、姫様自身も、あまり気にはなされてはいないご様子で。
よかったよかった。
そんなアリエーヌ姫様の成績の後ろには3人を残すのみ。
アリエーヌのやつ、よほど自分よりも賢いやつをパーティに入れたくなかったのだろう。
このアリエーヌよりもアホな連中が、今、俺の横を走っているこのバカ3人組なのだ。
「よし、オレも突っ込むよ!」
手に持つ聖剣を上段に構え、アリエーヌ後を追うこの女、名前を【グラマディ=ボインジェンヌ】という。
女戦士というだけあって、血の気は多い。
戦いとなると、後先考えずに突っ込んでいくタイプだ。
だが、見た目は高身長のグラマラスな女性。
長い金色の髪が、きらびやかに映える。
とても俺たちと同じ15歳には見えない大人びた表情。
ドレスでも着て静かに立っていれば、言い寄ってくる貴族の男などいくらで湧いてきそうである。
だが、そんな彼女の口癖は『攻撃は最大の防御なり! 責めて責めて責め落とす! だから俺は騎乗位が好きなのさ!』だそうだ。
敵を見つけたら、とにかく叩くという脳筋バカ。
おそらく防御という単語は、奴の辞書には載っていないのだろう。
それを体で表すかのように身に着ける鎧はビキニアーマー、ただそれだけ。
そのビキニアーマーも胸につく巨乳を覆いきれないのか、少々盛り上がりはみ出している。
こんな肌の露出の多い鎧で、身を守れると本当に思っているのだろうか!
というか、その装備でこれから魔王【ドゥームズデイエヴァ 】と戦うつもりなのか?
バカなのか!
でもたしかに、こいつの持っている武器はすごいんだよ、武器はね。
この王国の三大貴族であるボインジェンヌ家に代々伝わる聖剣パイズリアー。
一振りで二山をも消し飛ばすといわれる聖剣だ。
その聖剣を勝手に持ち出して、事あるごとに振り回しているのだ。
コイツ、この剣の価値分かっているのかね。
おそらく、下手な国だと、まるまる一国買えるぞ……マジで。
だけどね……こいつもまったく使えねぇ……
武器を使うには、それ相応のレベル、スキル、熟練度というものがいるのは常識だよな。
だけど、こいつには何にもねぇ……
レベルも熟練度も足りないから、その聖剣使いこなせてないんだよ。
ただ、聖剣を振り回しとるだけ……もう、50ゼニーで売っている普通の鉄の剣のほうが強いぐらい。
聖剣パイズリアーが泣いとるわ……
一応、彼女の名誉のために言っておくが、おそらく処女だ。
口ではああ言っているが、まだ男に体を任せたことはないと思われる。
だが、酒を飲むとアリエーヌの乳をもむ変態へと変ることは間違いない。
学生が飲酒⁉
まぁ、不良であることは否定しないが、あいつの言うことを真に受けてはいけない。
アルコールといっても、度数0.001%未満のカクテル風ジュースだ。
コイツはアサリの酒蒸しを食っても酔える凄いやつなのである。
そのグラマディの後ろを懸命についてくるのが【キャンディ=ワインハンバーガー】。
女司祭である。
一応、このパーティ【チョコットクルクルクルセイダーズ】の回復役を担っている。
だが、回復系とは名ばかりで、奴が魔法を唱えると、なぜかみんなマヒってしまう。
ならばといって、回復薬を調合すると、ケルベロスでも腹を下しそうなダークマターが出来上がる。
もう、回復系ってなに? って疑問符がついてしまう。
だが、奴曰く、自分は、この【チョコットクルクルクルセイダーズ】の癒しキャラだそうである。
確かにその見た目、そういえなくもない。
その小さき体は、とても15歳には見えない。
どちらかというと、初等部3年生の女の子。
まだ、胸すら膨らみ始めていない。
緑の髪をツインテールにまとめあげ、いつも、何かをほおばっている。
『食べないと大きくなれないやろ』というのが言い分だ。
こう見えても、このガキも、家柄はいいのだ。
三大貴族であるワインハンバーガー家の次女である。
ワインハンバーガー家は、デブの家系だ。
その中でひときわ小さな体のキャンディは異色の存在だった。
それを気にしてなのか、いつも何かを食っている。
その食う量はすさまじい。
もうキサラ王国にある大食い店は、すべて出入り禁止となっている。
「ウチ……おなか減ったわぁ……はよ、あの魔王やっつけて帰ろうや……」
お前、今でもスルメかじっとるだろうが!
というか、お前、子供のお使いみたいにあの魔王【ドゥームズデイエヴァ 】を倒せるとでも思っているのか!
馬ぁ鹿か!
本当にバカなのか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます