第2話 見せてやるよと言われても
どうせベッドでやるなら、布団かけろよ、自分。
せめて、壁側を向いてやってたら、ナニを見られることはなかったのに。
ググーッと腹が鳴った。
腹べった。夕食、どうしよう?
ピンポーン
玄関チャイムが鳴った。
「ありがとうございました」
の声。荷物でも届いたのか。
ややあって、ドアがノックされた。
「は、はい」
ドアが開き、勇策が、
「どうしたの、暗い部屋で」
灯りもつけずに、秀人は、どんよりしていたのだ。
「秀人くん、メシ、まだだろ。寿司とったから、食おうぜ」
「あ。はい」
もうシャワーを浴びたのか、勇策はTシャツにトレパン姿。
リビングダイニングに行くと、テーブルに寿司桶があった。なかなか高級そうな寿司だ。
「さ、座って」
勇策は、冷蔵庫から缶ビールを出してきて、
「さっきは、ごめん。ノックしたんだけどね」
夢中になっていて、聞こえなかったらしい。恥ずかしさがよみがえってくる。
「今日は、定時に退社できたからさ。もし秀人くんが帰ってたら、一緒に飲もうと思ったんだ」
「かんぱーい」
向かい合って、ビールグラスを合わせる。
冷えたンールが喉に染みる。
秀人は、やっと平静な気分をとりもどしていた。
「あ、秀人君、誕生日過ぎたよね」
「はい。四月で二十歳になりました」
「若いなあ。俺なんか、来月で三十だよ」
十歳も違うのだ、と、秀人は意外に思う。勇策は鍛えているし、まだ二十代半ばといっても通用しそうだ。
勇策は、秀人のグラスにビールをつぎ足し、
「なかなか、秀人くんと話ができなかったね。一度、こうして飲みたかったんだよ」
「僕もです。姉さんがいるときは僕、お邪魔虫ですから」
「たまには、秀人くんと三人で話でも、て。梓に言ったんだけどさ。夕食後は夫婦の大事な時間、て、いつも却下」
「姉さんは、義兄さんを熱愛してるから。三人、蹴落としたって本当なんですか」
「そうなんだ。梓はね。決闘したんだよ」
「決闘!」
「うん。ひとりひとりに、私とサシで勝負しろ、と凄んだらしい。何しろ、梓は剣道三段。あの頃は、ボクシングもやってたからさあ。普通の女に勝ち目はないね。男だって無理かも、あはは」
秀人は、背筋が冷たくなった。
そうだった。姉さんは、強い。
小学生の時から剣道場に通い、今も続けている。秀人といえば、小学生の時、少しやってみたが、全く上達せず、早々に止めてしまった。
「三人とも、真っ青になって、別れるって俺に言ってきたよ。梓にも、いつまでプレイボーイを気取ってんの、と叱られた。それで、やっと目が覚めたよ」
勇策は遠くを見るような眼で言い、
「結婚するなら、この
「はい」
義兄は、姉を熱愛している。
とても自分が入る余地はない。はじめから、わかりきっていたことだけど。
ふと、寂しくなってしまう秀人だった。
話に花が咲き、寿司桶はカラになった。
「とってもおいしかったです。ごちそうさまでした」
「うん。けっこう美味かったね」
勇策が頬杖をつき、秀人を、じーっと見る。
どうしたんだろ、義兄さん?
秀人の胸が高鳴る。
「俺も、やって見せるよ」
「はい?」
「俺も、オナ×ーして見せるって言ってんの。それで、おあいこだろ」
「い、いいです、そんなの」
まさかの展開に、うろたえる秀人。
「遠慮するなって」
勇策は立ち上がり、ソファの方へ行った。トレパンを下ろそうとするのを、
「や、やめてください」
がたがた震えながら制止したが、勇策は、下着ごとトレパンをずり下げた。立派なものが現れ、秀人は目がくらんだ。
デ、デカ!
黒光りして、僕のなんか、子供みたい。
重量感あるそれを、勇策は無造作につかみ、しごき始める。
「お願い、やめて1」
秀人は、勇策にむしゃぶりついた。涙が出そうだ。
抱き着かれた格好の勇策は、秀人の顎をつかんで顔を覗き込み、秀人が涙目なのを知ると、
「泣くことないだろ。純情だなあ」
頬にチュ! とキスをした。
あ。キスされちゃった。
頬だけでなく、全身が熱くなる。
「そういえば、さあ」
勇策は、秀人の顔を見て、
「さっき、途中までだったんだよね」
「え」
「フィニッシュ前に、俺がドアを開けちゃったんだよね。悪い。続き、俺がしてやるよ」
と、秀人のズボンを下ろそうとする。
「だめ、だめですよぉ」
抵抗むなしく秀人のそれは、勇策の、熱く大きな手に包み込まれ、やさしく揉みしだかれ、擦りあげられ、ひとたまりもなく、放出。
秀人は、もう、何が何だか、わからない。
勇策は、どうにか落ち着いた、秀人のものをつまみ、
「きれいな色してるなあ。秀人くんて、童貞?」
「は、はい」
すると、勇策はニヤッと笑い、
「それは、教えがいがあるなあ」
ど、どういう意味?
茫然とする秀人の耳元で、勇策が、ささやいた。
「ベッドに行こう」
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