第10話 走る人
「走る人」
僕は走っていた
走ることしかできなかった
走り続けることがすべてだった
君と出会った日
早春の風に向かって
心をときめかせて走り始めた
君を誘った日
桜色の景色の中を
心を躍らせて走りぬけた
君との日々の中を
時には切ない気持ちで
時には不安な気持ちで
それから
悲しいことも
辛いこともあった
それでも
楽しいことや
嬉しいことがたくさんあって
僕は君に会えて
本当に良かったと思っている
君と別れた日
枯葉の空を見上げながら
どんな気持ちで走ったのか憶えていない
それでも僕は走り続けた
走ることしかできなかった
走ることを止めてしまったら
二度と走れないとわかっていたから
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