第21話 琴乃匠、教室で喧嘩!?
※このお話には一部暴力シーンが含まれます。ご注意ください。
あお「フレー!フレー!あーかーぐーみ!」
たく「まだ3時じゃん。早くね?」
愛央がこんなに朝早くからチアの練習をするなんて珍しすぎる。ポニーテールに紅色のリボン、既に愛央の気合いは十分なようだ。
7月に球技大会があり、あいちゃんと2人で遊ぶついでに練習を繰り返していた俺は、愛央の応援で目が覚めてしまった。時刻は3時なのでもう起きてもおかしくはない。
あお「たっくん、球技大会の練習するの?」
たく「夜中3時にあいちゃん起こすと泣くべ」
寝起きの俺は通常より方言が出やすい。だけどあいちゃんを起こすとどうなるか分かっている俺はとりあえずもう少し寝ることにしようと思い寝かけた。その時・・・
あい「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
愛央も俺も起こしてないのにあいちゃんが泣きだしてしまった。とりあえず急いで泣き止ませないと。
たく「あいちゃーん、どうした?」
あい「ひっく、あいたん、おねしょしちゃった・・・」
確かにあいちゃんはおねしょをよくやるが、今回は俺の敷布団にしてしまったとの事。それで怒られると思って大泣きしたのだろう。俺が怒るとおいねぇから。
あい「ひっく、ひっく、ひっく」
たく「仕方ないね。あいちゃん大丈夫?」
あお「たっくん、あいちゃんどうしちゃったの?」
たく「俺の布団でおねしょしちまったって。俺寝るのおいねぇじゃん。まぁ赤ちゃんってこんなもんか。あいちゃーん、トイレ行く?」
あい「きゅぴ・・・」
たく「はぁ、明け方からこんなことになるとは」
思わず本音が出たが、朝の3時だからそらそうだ。とりあえず布団は洗濯機に入れ、回すことにした。あいちゃんはおねしょをしてしまうとよく泣き出すので、あまり怒らないようにしてはいる。ただし、俺がガチ切れすると・・・物凄いことになる。
あいちゃんはそのままずっと起きてしまい、寝られなくなったようなので朝飯を作ることにした。時刻は4時、もうきつい。
あい「あしょんで〜」
たく「もうちょっと待っててね。あとすこしでできるから」
あい「ひっく、ひっく」
あお「あいちゃーん、ねーねーと遊ぼ?」
あい「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
たく「はぁ・・・甘えん坊は誰に似たのやら。あいちゃーん、遊んであげる」
あい「きゅぴ〜!」
たく「機嫌戻すのはえーな」
毒舌は、妹だろうと、容赦なし。あいちゃんはちょっぴり甘えん坊、すぐにしてくれないと大泣きする赤ちゃんなので、渋々やらざるを得ないのだ。6階の体育館で愛央がチアリーディングの練習をしながら、俺とあいちゃんは遊んでいた。飯は作り終わってたので、それをそのまま持ってきた。
朝7時半になったので学校へ。発達の俺はどう頑張っても仲間外れにされやすい。だから実際、今日行ったところで大丈夫なのかと思ったが、愛央は俺の耳元でこう言った。
あお「大丈夫。行こっ」
たく「また同じ目に会いたくないよ・・・」
あお「私が見守ってあげるから、ね?」
チア部の愛央っぽくない、本気の言葉だった。愛央にとっては、ずっと俺の背中を見てきたから、こんなに落ち込むと心配で助けてあげたいって思ったのだろう。愛央が背中を押すことは普段なかなかない。愛央は「大丈夫っ。行こっ」と言って教室へ入った。
相変わらず愛央はちやほやされ、俺は蚊帳の外。
あいちゃんは俺に「にーにー、ぎゅーして」って言った。俺はあいちゃんをだっこすると、あいちゃんがこう言った。
あい「あいたんとにーにー、いっしょ!」
たく「えっ?」
あい「きゅぴ?」
生徒「あれ、今日あいちゃん来てたんだ」
生徒「ほんとだー。久しぶり!」
たく「なぁ、愛央」
あお「なぁに?あれ?あいちゃん、起きたの?」
たく「あんかさ、あいちゃんが俺に抱っこしてって言ってよ、んでしたら俺とあいちゃんがいっしょって。んなこたねぇよなぁ?」
あお「あいちゃん、ほんとう?」
あい「あいたんとねーねーとにーにー、いっしょ!」
あお「え〜!?」
たく「はっ!?」
あい「ぎゅー♡」
たく「嘘・・・だろ・・・」
あお「あいちゃ〜ん♡」
あい「きゅーぴ!」
まさかの展開だ。クラス全員がいる中であいちゃんが、俺と愛央とあいちゃんはいっしょだよって教えてくれるとは。当時クラスは騒然。でもあいちゃんが泣き出すと俺にしばき殺されることは知っているクラスの奴らだから、さすがに泣かせないはずだ。が・・・この後喧嘩が起きてしまう。
鹿山「んだよこのクソガキ。生意気め」
たく「あ?」
あお「たっくん!!!」
たく「あじした!?」
あお「あいちゃん、泣いちゃう!!!」
たく「は!?やばい!!!」
あい「ひっく、ひっく、ひっく、うわぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
たく「ちっ、手遅れか。おい、てめぇそこ立て」
鹿山「はぁ?」
たく「はぁ?じゃねぇよクソゴミが!!!!立てっつったら立てゴルァ!!!!」
あお「たっくん!!!だめ!!!」
たく「愛央、あいちゃん抱いて部室行け」
あお「でもっ!」
あい「うわぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!」
たく「俺の妹を泣かせんじゃねぇよ。殺すぞゴルァ。よくも俺の大切な妹を泣かせやがって。許すわけねぇだろうが!!!!!」
鹿山「んだゴルァやんのかてめぇ」
たく「あぁやったるよ。おめぇ覚悟出来てんだろうな?おいてめぇら全員危ねぇから下がれ。愛央はあいちゃんを抱っこして、チア部の部室へ避難しろ。ちょっと俺はこいつを殺す」
鹿山「やるぞクソイキリ委員長」
たく「やれんもんならやってみろゴルァ」
鹿山「オラァ!」
たく「覚悟は出来てんな。包丁投げたろか?オルァ」
殴り合いが起きてしまった。俺は元々空手をやっていたから殴るのは強い方だ。だが鹿山もかなり強い。かなり痛いが、愛央とあいちゃんを守るには自分が犠牲になるしか無かった。2分ぐらい殴り合いをしていると騒ぎを聞き付けた先生方が急いで教室へ入り、俺と鹿山の喧嘩を止めた。
先生「おい!何してんだお前ら!!!」
たく「邪魔すんじゃねぇゴラァ!こいつは痛い目見ねぇと分かんねぇんだよ!!!!!!!」
鹿山「うっせぇなぁ。おめぇが悪いんだろうが!!!」
先生「とりあえずやめろ!!!話は聞くから!!!」
たく「嘘つくんじゃねぇ!!!どうせ俺の事悪者扱いすんだろが!!!!!!!!!!!!」
かなり負傷している俺は次のように言って、愛央の待つ部室へ行った。
たく「てめぇら、覚えとけよ。次はマジで殺すからな」
騒ぎを聞き付けた先生たちはまず鹿山を学年室へ連れていき、教室では事情聴取が行われていた。
そして俺は左腕を支えながら愛央の待つ部室へ急いで向かったのである。チア部の部室へ避難した愛央とあいちゃんは、今にも泣き出しそうだった。
あいちゃんは泣き止んでいたものの、また泣き出してもおかしくはなかった。
たく「愛央!あいちゃん!」
あお「たっくん・・・!」
たく「ごめんね。2人とも。泣かせちまって」
あお「うん・・・ひっく・・・」
あい「うっ、ひっく、ひっく」
たく「愛央、あいちゃん貸して」
あお「うん・・・」
たく「ごめんね、あいちゃん。お兄ちゃん怒っちゃったね。よしよし、ごめんね。もう大丈夫だからさ。怖かったね」
あい「ひっく、ひっく、ひっく」
たく「愛央、マジごめん。さすがにやりすぎた」
あお「愛央も、助けてあげられなくてごめん・・・」
たく「愛央は悪くないよ。背中押してくれたのは愛央だから」
その後部室に担任の波野先生が入ってきた。
波野「匠たち、大丈夫だった!?」
たく「申し訳ありません。俺が鹿山と喧嘩してしまって」
波野「今回は鹿山くんが悪いの。あいちゃん泣かせちゃったから」
あい「きゅぴ・・・」
たく「俺の口が悪かったのは事実です」
波野「匠が悪いところもあったよね。でも鹿山くんの方がよっぽど悪かったの。愛央もあいちゃんも泣き出しかけてまで守った匠は守り抜いたんだよ。鹿山くんの処分はそろそろ出るから、今日は2人とも帰っていいよ。公欠にしておくから」
たく「あぁどうもすいません。じゃあ帰ります」
あお「愛央帰っていいの?」
たく「らし・・・バタッ」
あお「たっくん!!!」
波野「匠!!!」
殴り合いをしたせいで、俺は倒れてしまった。
即座に救急車が来て、俺は入院。治療を受けることになった。愛央とあいちゃんはタクシーの中で大泣きしていたという。後日談だが、この時本当に俺は死んでもおかしくなかったらしい。
倒れたのがだいたい午前の9時30分。15分後に救急車が来たので死亡は免れた。呼吸は病院に着くまであったとの事だが、かなりの重症だった。
左腕骨折と、右足全体に麻痺が見られたらしい。
意識を取り戻すと、そこには愛央とあいちゃんがいた。
あお「たっくぅぅぅぅぅん!!!!」
あい「にーにー!!!!!」
たく「んだ・・・あれ、ここどこだよ。病院?」
医師「君、学校で喧嘩して倒れてしまったんだってね。それでここに運ばれてきたんだよ。骨折だから、明日手術するからね」
たく「分かりました」
バイトは辞めることになってしまった。仕方ない。骨折すると使い物にならないからね。でもバイト先の人にはお世話になったので、悔いが残ってしまったが、愛央達がお礼を言いに行ってくれたらしい。
後日俺もバイトを辞めてしまった謝罪と菓子折りを持っていった。
19時頃に両親が来たが、鹿山は退学とのこと。俺はあいちゃんと愛央を守ったため、正当防衛とみなされた。よって、退学及び特待生認定取り消しは免れた。
家に帰った愛央達はあの後何しているのかな。飯食えなくなってんのかな。
大丈夫かな。夜不安で寝られんよな。とずっと考えていた。
そのうちに眠気がしたので、寝てしまった。
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