第2話 赤髪の少女
「ふ~、さっきはマジで漏れるかと思ったぁ~」
度重なる妨害にあいながらも、ようやく用をすませた爽快感につつまれながら先程の戦闘を思い出す。
あの子がゴブリンと呼んでいた化物はどう考えても地球にはいない生物だった。
となると俺は本当に異世界に転移してしまったのだろう。
「ちょっと」
異世界かぁ、漫画やアニメを見ている時は行きたいと思っていたがいざ自分がその立場になると少々気が引ける。
考えても見て欲しいんだが、さっきのみたいな化物が普通に森にいる世界だ。きっと人間の生死が日本なんかとは比べ物にならないぐらい身近なんだろう。
「ちょっとあんた聞いてるの!?」
とはいえいつまでも及び腰じゃいられないな。転移してしまったものはしょうがないし、とりあえずはこの世界で生き抜くことを第一に考えよう。
そうだな、まずは街を目指してグヘッ
これからの事を考えていたら急に後頭部に衝撃が走った。
後ろを振り返ると赤髪の女の子が顔まで真っ赤にして仁王立ちしていた。
「いってぇな!なにすんだよ!?」
「あんたがこの私を無視するのがいけないんでしょ!」
こいつ、さっきはあんなにフラフラだったのに元気が有り余ってるみたいだ。
「だからってお前、命の恩人を殴るか普通?」
「う、それは感謝してるわよ」
「大体お前、なんでこんなところであんな化物に追われてたんだよ?」
「ねぇ、そのお前って言うのやめて!私にはエレナって言う名前があるんだから!」
エレナと名乗った少女は赤い髪をはらい、私は不機嫌ですと言わんばかりに鼻をならした。
「悪い悪い、俺は龍斗だ」
「リュート?変わった名前ね!」
「リュートじゃなくて龍斗なんだがまぁいいか。で?エレナはなんであんなのに追われてたんだよ」
「それは...どうでもいいでしょそんな事!あんたこそなんでこんなところにいるのよ!」
自分の事ははぐらかすのに俺には聞いてくるのかよ。
「俺にもいろいろあるんだよ」
「まぁいいわ!ひとまずここから離れましょう。血の匂いにつられて他の魔物が寄ってくるかもしれないし。少し行った先に荷物を置いてきたから回収して森を抜けるわよ!」
エレナはそう告げると歩いていく。
どうやらホブゴブリンから逃げる際に荷物を全て投げ出してきたみたいだ。
有無を言わさない勢いに負け、俺は後についていくしかなかった。
するとエレナは突然振り返り
「忘れてたわ!ホブゴブリンから魔結晶回収してないじゃない!」
と言うとナイフを取り出しホブゴブリンの死体に向かったかと思うことホブゴブリンを解体し始めた。
何してるんだこいつ。急に死体をいじりだしたぞ。
そんなにホブゴブリンに恨みが溜まっていたんだろうか。
そんな事を考えながら眺めているとエレナが黒い宝石の様な石をこちらに投げてきた。
「あんたが倒したんだからそれはあんたの物よ!」
「なんなんだ?これ?」
俺は疑問を口に出すとエレナは心底呆れたと言わんばかりの顔をした。
「あんたどんな田舎に住んでたのよ!魔結晶も見たことないの!?」
なんだが物凄く馬鹿にされてるみたいが、そんな事言われても知らないものは知らないので大人しく聞いてみる。
「知らないから教えてくれ。これは何なんだ?」
「しょうがないわね。いい?それは魔結晶と言って文字通り魔力の結晶よ!主に魔道具の動力源として使われているわ!魔力濃度の濃い場所や魔物の体内で生成されて、大きいものだととっても高値で取引されるんだから!」
知識を披露できるのが嬉しいのか、エレナは得意げに胸を張った。
ここはおだてておくか。
「エレナは物知りなんだな」
「当然よ!私はフィオガ辺境伯の娘なんだもの!王都の学校に行っても恥をかかないようにずっと勉強と鍛錬を続けてきたんだもの!」
エレナはハッした顔をこちらに向けた。
何を慌ててるんだろうか?
「だからあんなに剣も上手だったんだな。なんていうか凄い綺麗だった!」
「うっさいわね!あんたみたいな素人に私の剣のなにが分かるのよ!」
そう言いエレナはそっぽを向いてスタスタと歩き始めてしまった。
素直に賞賛したつもりだったんだけどちょっとクサすぎたかな?
なんてことを考えながら俺は彼女の後を追いかけるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます