第19話 大蘇生
僕はギルドの依頼でヒューラック大墓地の異常調査を引き受け、調査の結果として一番大きな墓、ノルデン帝国先代皇帝の魂を復活させるべく、大墓地の墓全てを破壊しようとする者を見つけた。
最初はかなりやばい奴だと思ったが、その先代皇帝には現在の帝国を治す権威があったらしく、僕自身には関係ない事だが報酬の大きい方に協力することにした。
ただ絶対に復活させられるとも限らないからね。失敗したらそれは大きな責任を背負わされることになるだろう。一体どんな罪になるんだろうねぇ? 主謀者の共犯は絶対かも知れないけど、大墓地の墓を全て破壊するんだ。想像するだけで恐ろしい。
「それでは始めるぞ。と言う前にひとつだけ注意事項がある。俺はこの大墓地に潜む全ての霊魂をこの一つの体に収めるんだ。だから俺の精神は多くの魂に押し潰され精神に異常きたすかも知れない。
もしそのようなことが有れば、本気で殴ってでも抑えてくれ。きっと無数の霊魂に身体を乗っ取られでもすれば、多少でも肉体にも影響が出るだろう。そうそう身体は破壊されないさ」
「分かった任せてくれ。エリナさんは見ているだけ良いよ。君の剣術だとこの人を殺しかねないからね」
「良いだろう。私は側で見ていよう」
そうすると男は呪文を唱え始める。
『ᚨ ᛋᚩᚢᛚ ᚨᚳᚳᚩᚱᛞᛁᚾᚷ ᛏᚩ ᚷᚱᛖᚨᛏ ᛈᚩᚻᛖᚱ ᛏᚩ ᛚᛁᛖ ᚩᚾ ᛏᚹᛖ ᛖᚨᚱᛏᚹ ᚻᚨᚴᛖ ᚢᛈ ᚠᚱᚩᛗ ᚾᚩᚻ. ᛋᚢᛒᛋᛏᛁᛏᚢᛏᛖ ᛗᚥ ᛒᚩᛞᚥ ᚷᛁᚣᛖ ᛈᚩᚻᛖᚱ ᛏᚩ ᛏᚹᚨᛏ ᛈᛖᚱᛋᚩᚾ』
全く発音も何を言っているのかすら分からない。そんな呪文を唱えれば突然男の身体へ、肉眼で辛うじて見える霊体の『歪み』が急速に集まり、吸収されていく。
それは本当に大墓地に眠る全ての霊魂を吸収しているようで、普通なら命に関わるのではないかと心配になる程だった。
「ゔっ!? ぐ……がっ。先代皇帝よ、彼らの命を受け止めよ! うああああぁ!」
男は苦しみながらも正面に佇む先代皇帝の墓に向かって両腕を伸ばすと、男の身体へ集まった霊魂の魔力のみが白い光線となって放たれた。
「うぎっ、うがっ! 不味い……早く戻さなくては……!」
「エリナ! 僕を攻撃しろ!」
「なに?」
僕の固有能力は自分の力では発動できない。だが、今までの発動条件を見るからに、攻撃を食らえば自分が傷ついてしまうという条件が揃っていれば、自分でコントロールすることも出来る!
だがそれには相手に僕を殺すつもりで攻撃してもらわないと意味が無い。でもその理由を今説明する時間はないだろう。
「良いから! 次は僕を殺すつもりで来てくれ!」
「全く意味が分からんが……死んでも知らんぞ!」
あぁ、仲が悪いことも決して悪いことでは無さそうだ。エリナさんは僕へ本当に頭をかち割る勢いで脳天に向かって剣を振り下ろしてきた。そして時は遅くなる。
僕はその瞬間を使って本気で男の顔面を殴る。
「やぁあ!」
僕の拳は男の顔面に減り込む。メキメキと骨が砕ける音と感触が僕の拳に直接伝わってくる。もしこれが普通なら男の頭は間違いなく吹き飛んでいただろう。
しかし、さらにさらにと僕の拳が男の顔面を抉る時、僕の拳は何かに弾かれた。
「ぐぼぉあっ!!」
男の身体の中心から『歪み』が爆散した。急激に男の口、両手先、両足先から空気が流れ出る。
「ごはっああああぁぁぁ!」
「大丈夫かい?」
「う、うぅ……助かった。凄まじい衝撃によって俺の身体に宿る霊魂共が逃げ出し……たよう……だ」
男は僕の目の前で気絶した。これは成功したのだろうか? 特に先代皇帝の墓に変化は無いが。
◆◇◆◇二時間後◆◇◆◇
特にそれから何も起こらず、二時間経ってから漸く顔面が変形した男が目を覚ました。ただ予想以上の力だったのか、身体は地面に横たわらせたまま、口を開ける。
「これで成功した筈だ。あとは先代皇帝のその墓をぶっ壊せば、墓に眠る魂が憑り所を失い、自分から出てくる筈だ。それも意識と自我がはっきりとした物がな」
「遂に父上に出会えるのか!」
さて、後は先代皇帝の墓を破壊すれば良いようだが……? それを誰が許そうか。
「冒険者様方! 何をなされているのですか!? あぁ、周りの墓が……こんな姿に! まさか、その男と冒険者様は共謀して、私に異常調査依頼をするように仕向けたのですか!?」
「いやぁ、ごめんね。急遽予定を変更したんだ。でも安心してくれ、多分先代皇帝は復活したから」
「は? 申し訳ありません。貴方の言っていることが全く分からないのですが……」
「分からなくても良い。じゃ、エリナさん頼んだ!」
僕は大墓地の管理人に訳を話すが、当然理解されなかった。なので面倒な説明は省いてエリナに墓を壊すことを支持する。
「分かった! はぁあああぁ!」
次の瞬間、僕の背後で猛烈な斬撃音が聞こえると、巨大な墓が一気に崩れ落ちる音が響いた。
「そ、そんな……先代皇帝の墓が……は?」
先代皇帝の墓が崩れ落ちるのを絶望の目で見つめる管理人。ところが、その目には何かを疑う目に変わる。僕はその表情が気になってふと後ろを振り向いた。
そこには、まだ実体があるとは言えないが、とても鮮明に赤を基調とした王族らしい服を着て見せる若い男性が立っていた。
歳は二十前後で、それは好青年と言っても良い佇まいだった。
「父上……? いや面影は父上そのものだが、私の知る父上では無い。まさか若い時の?」
先代皇帝の霊体とエリナは向かい合って暫く見つめ合うが、皇帝の様子からしてどうやらエリナ対して記憶が無いように見えた。
まさか一度霊体になると歳が若返り、記憶も退化するというのか。
ただそれでも服装からしてこの霊体はその歳で既に王族にあったことが分かる。しかし先代皇帝の権威があるかどうかはまた別の話だねこれは。
『私はグレイブ・クラトレス王子。貴方達は?』
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