健康

「魔力は大分戻って来たし、霊体の傷も癒えて来た。足も充分に動くね。思っていたよりずっと早く治ったよ」

 リンネは彼の胸から手を離した。ほのかな青い光の残滓があとを引く。

「……前から気になっていたのだが、お前は何故魔力を扱える? 人間だろう?」

「大分今更だな。昔、ちょっと人に手ほどきしてもらっただけ。あとはいくらか呪いを受けた影響かな」

 リンネは素っ気なく言って、話題を戻す。

「で、悪いお知らせ。君には酷かも知れないが、誤魔化しても仕方ないから言うけど。これが今の最高の状態だと考えておきなさい。中身云々ではなく、容器自体が欠けてしまっているから」

「そうか。……こんなものか」

 あまり感情が表情に出ない彼も、さすがに目に見えて気落ちしていた。コウモリは傍らで悔しそうに唇を噛みしめている。触れない方がいいかと、診察を終えたリンネはいつも通りに朝食を作りに洞窟を出て行こうとする。

 しかし、ふともう一つ言うべきことがあるのを思い出して、振り返った。

 彼もまたリンネを見ていた。

「好きな時に出て行けばいい。君の姿では人間の町で生きることは難しいかも知れないけれど、どうにかなるだろう。……コウモリもいるし」

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