第9話 距離感
(非常にまずいぞ…。)
さっきのホームルームで、移動の話をしていたらしい…。紗姫は、やはり容姿からか数名の女子に話しかけられている状態なので、ここは二つの切り抜ける方法が考えられる。一つ目は、周囲にあわせて行動する。これが最善策に考えられるかもしれないが、移動をするまでの時間周囲に気を配らなければいけないのであまりやりたくはない。二つ目は、他の男子に頑張って話かけるだが、これは今の俺のコミュ力では絶対に無理だ。この方法以外もあるのだが、それは避けたいしさらに難易度が上がる。それは、今目の前で楽しく話している紗姫のとこに話しかけることだ。紗姫と周りの女子に正直どういう印象がついてしまうか分からないためこれは賭けである。ので、ここで一番ダメージを負わない方法は、周囲にあわせ行動するのが得策だろう。周りにあわせれば移動する先は分かるだろうが、何をするかは分かっていないので少しの不安に駆られていて、ここで俺は鞄の中から本を取り出し読んでる振りをして、周りに耳を傾け聞く体制に入ることにした。昨日のテレビ番組の話やゲームの話などで周りは移動までの時間を満喫している用だ。当然前の席に座って話している紗姫達の会話は聞こえてきてしまう。
「えー、紗姫ちゃんの家ここら辺じゃないんだ‼ 」
ショートカットのスポーツ女子がぐいぐいと質問していた。この一言で、一部の男子が話をやめて聞き耳を立て始めたのは気のせいだろうか。
「最寄りどこなの? 」
今度はスポーツ女子の隣にいるおっとりしたミディアムくらいの髪の女子が質問していた。俺は、自分が周りの会話を聞くよりその会話に集中して聞いていることに気づいていなかった。そして、俺がその二人に気づかれているとも知らずに...。
「えーと、ここから5駅先の雨辻って駅だよ。」
「そこって、あれでしょ? 快特とかでいけば5駅の場所じゃなかったっけ? 」
「うん、そうだけど。まぁ、途中から普通に切り替わるから思ってるより近いと思うよ。」
「放課後とか時間あったら、みんなでカフェにいかない?紗姫ちゃんと仲良くなりたいし。」
「紗姫ちゃんは放課後何か予定ある? 」
「今日は特に何もないから大丈夫だよ‼ 」
「やった~! じゃ、また後でね。」
と女子達は去って行った。スポーツ女子が去り際に紗姫に何か耳打ちしていった。俺にウィンクしたように見えたのは気のせいだろう。
「心哉、そろそろ移動だし一緒に行こうよ。」
振り向いて、そんなことを言ってきた。
「え、さっきの女子達といかなくていいの? 」
どう考えても俺と一緒に行動しても利点がないと思うのだが…。
「だって、そしたら心哉が一人になっちゃうじゃん。それに友達を見捨てるような行動はしたくないしね。」
あ、優しい…。でも、迷惑かけちゃってるよな完全に。早く俺も話せる男子の友達作らなくては。
「白戸ありがとな。」
結局紗姫の言葉に甘えて一緒に行くことにした。
集会場につき男女は当たり前だが、分かれて整列することになるので出席番号を互いに確認しながら自分の位置を探さなくてはならないので、ここは自分の頑張りどころである。
大体の位置のところにいる人に勇気を出し話しかける。
「あの…。何番ですか? 」
話しかけた相手は爽やかなイケメンといってもいいくらいに顔が整っている人だった。番号は、奇跡的に一つ後ろの番号だったので人に話しかけるという精神の消耗をこれ以上せずに助かった。
さすが陽キャの人間は、挨拶程度に話しかけてくる。
「やっぱ、わかりにくいよな。席が男女混合のせいで先生ですら混乱してたしな。」
明らかに俺に話しかけている。返答しないのもあれなので、答えることにする。
「そうだね。確かに混合になってるから、整列するには少し大変だよね。」|
「せっかく番号近いんだし、名前教えてくれよ。俺は、
「名前は、木原心哉だよ。よろしく陸上。携帯教室だから、戻ってからでいい?」
「全然いいよ。むしろその方が俺も好都合だし。」
なんでか聞こうとしたとき、予鈴が鳴った。
「それでは、始めて行きたいと思います。」
学年主任らしき人が前に出てきて話を始め、集会が始まった。
集会の内容は、とても退屈なものだった。入学したてだから結構真剣に聞いていたのだが、入学式前にもらった資料の内容を話しているだけだったので聞き流してもいい内容だった。先程のホームルームの件があったため、余計に集中して聞いていた。
教室まで帰る途中は、
初対面だが、なぜか陸上とは仲良くやっていけそうに感じた。
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