第3話 帰り道
高校の最寄りの駅から電車で七駅離れた場所が俺の地元だ。
多分朝も中学以上に早く起きなきゃならないし、都心方面に向かう電車だから満員電車を毎日経験することになるだろう…
「はぁ、辛すぎんだろ…。今日が金曜じゃなきゃ死んでたぞ… 」
帰り道一人マイナスな思考に陥りながら歩く。当然俺以外は、地元か他県の寮付きの高校に通っているため、駅でも知っている奴に遭遇することはない。
今日の時点で誰とも話せなかったのは結構ダメージがでかい。これで友達の一人や二人出来ていたら、満員電車に乗ることも苦じゃなくなったかもしれない。もしかしたら、同じ方向だったら一緒に登校する約束とかできたかもしれないのに…
ちょっと待てよ。男友達を先に作ろうと焦るばかり、女子の存在を忘れていた‼
だが、クラスの女子にいきなり話しかけるのは絶対に無理だ。誰とも話していない今の状況で話しかけたら、愛想笑い+警戒+よからぬ噂を立てられ、高校生活が開始早々終わってしまう。
「あ、話すきっかけある奴いるじゃん。」
そして、先程カバンにしまったハンカチを見る。これだ‼ 本当は、男友達が最初に欲しかったがコミュ力弱者は、最早高望みしている状況ではないのだ‼
そう決心をしたところでちょうど我が家に着いた。
「ただいま~」
「お帰りなさい。結構早く帰ってきてびっくりしたわ。てっきり友達と遊んでくると思っていたのに。」
うっ…。やめてくれ母よ。今、息子に一番言っちゃいけないこと言ってるぞ…
「いや、なれないことして疲れちゃってさ、今日はもうへとへとだから早く帰ってきたんだよ。」
よし、なかなかうまくかわしたぞ。
「そういうことね。学校落ち着いたら友達の話聞かせるのよ。」
「わ、分かったよ。疲れて少し寝るから、ご飯が出たら起こしてくれる?」
「それはいいけど、部屋に行く前に手洗いうがいしなさいよ。」
「はーい。」
明らかに疲れている風に言い、手洗いうがいをし、自分の部屋がある二階に向かっていく。
自室に入ると、今日何回したか分からないため息がまた出た。そして、荷物を適当に置きベッドに盛大に飛び込み、仲良くなるための作戦を立てるため思考を巡らせた。
正直あの子に自分から話しかけられる自信がない。でも、ハンカチだけは返さなきゃいけないからな。名前もわからないのにどうしようか...
「よし、困ったときにはあいつに相談だな。」
スマホを取り明日暇かどうかのラインを入れた。するとすぐに返信が来た。
とりあえず、明日はゲーセンに集合になった。こういうフットワークが軽いからこそ気分やである俺と、今まで仲良くやってこれたのだろう。
あれ、普通はこんなことで悩むのではなくもっとあの子のこと考えてもだえるのが、正解なんじゃないか?
「くそ~、俺が正統派主人公だったらよかったのにな、小説の中の主人公みたいにあざといセリフとか言ってみて~。」
いろいろ考えすぎて、本当に疲れていたみたいだ。瞼が急に重くなってきて、そのまま眠気に体をあずけた。
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