第2話 欲望とミス
とっさに反応しなければ彼女はどこかに体を強く打っていたかもしれない。反応した俺ナイスと思っていると。
「ご、ごめんなさい‼」
そういうと彼女は俺から離れた。正直言って心臓に悪いから助かったが、もう少しこのままでいたかったという欲の部分もあった。
「助けてくれてありがとうございました。あの、大丈夫ですか ? 私勢いよく飛びついた形になっちゃったので、私のせいで怪我はしてないですか ? 」
「あ、あぁ、大丈夫だよ。それより君が怪我をしなくてよかったよ。」
心配してくれている彼女は顔を真っ赤にしている。
そりゃ誰だっていきなり異性に抱き着くような状況になってしまえばそうなるだろう。だが、やめてくれこっちまで恥ずかしくなっちまうじゃないか。
「本当にありがとうございました!あなたが怪我をしていなくて良かったです。」
俺に怪我がないと確認が取れると安心したようなほっとした表情をした。
いい子だな…
しばらくして車掌からのアナウンスが流れた。
どうやら、踏切内に人がいて急ブレーキをかけたようだ。早めの判断のおかげで最悪の事態には至らなかったらしい。衝撃で怪我をしてしまった人は次の駅で降りてもらうようにアナウンスされた。
「あ、あの、私次の駅で降りてしまうのでお名前を教えてもらってもいいですか?後日お礼をしたいので。」
き、きたー‼ これが小説とかでよくあるやつか、まさか現実でもこのイベントが発生するなんて!
いったいこれからどうなっちゃうの~とキモイ思考をしていたのだが、ここで俺はミスを犯してしまう。これが、イケメンだったらしないであろうミスである。
「お礼なんていいですよ。俺が何か求めて助けたみたいになっちゃうのは嫌なので。」
「そ、そうですか…」
彼女が少し残念そうにしているのは、見て分かった。
くそ、なんでここでかっこつけるんだよ! このくそ陰キャが‼
「じゃ、じゃあ、今これしかないですけど私からの感謝の気持ちってことで受けとってください。」
「そこまで言うなら、有難くいただくよ。ありがとう。」
そういうと、彼女は飴を渡してきた。これなら受け取ってくれるだろうという考えなのだろう。
そのあと、少ししてから電車が動き出し彼女のおりる駅に着いた。彼女は、俺に改めて頭を下げてから降りて行った。
あー、めっちゃかわいかったな。
整った顔立ち、綺麗な腰まで届いてしまいそうな黒髪、ほんのりとした甘い香り、あの礼儀の良さ。男子の理想を具現化したような女子じゃないか。
彼女みたいな人がクラスにいたら、普通の思春期男子ならば話すだけでドキドキが止まらないと思う。
お前は、大丈夫なのかとみんな思っただろう。大丈夫なわけがないだろう‼あんな可愛くて性格もよさげな女の子と話して何も感じていなかったら、病気だ!
冷静に対応できたと思うが、キモイとか思われなかっただろうか。
そんなことを考えていると足元に何か落ちていることに気が付く。
ん?ハンカチか、もしかして落として気づかないで降りて行ってしまったのか。
幸いなことに彼女が着ていた制服はうちの高校のものだったから学校か電車でまた会うだろう。
こんなことなら、名前だけでも聞いとくんだった…
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