僕は君に何度でも愛を伝える【旧:報われないと分っていても諦めちゃいけない?】

早蕨琢斗

第一章 出会い

第1話 ぼっち回避

 また、この季節がやってきた。クラスの連中はそわそわしているが、なぜだかわかるだろうか?


 察しがいい奴らなら想像につくだろうとは思うが、これは新学期の期待と不安からのものだろう。


 ここで友達を作ればしばらくはぼっち回避できるし、最初から高校生活をエンジョイできるからな。そわそわしてるのは、わからんでもない。




 俺は、この浅間あさま高校の新入生であり今絶賛ぼっちを極め始めようとしており、どうでもいい思考をしているのだ。 ん? お前は誰かって、俺は木原心哉きはらしんやだ。



 どうぞ今の俺を見て笑ってくれ、わざわざこの隣町にある地元から離れた高校にきて、完全に話しかけるタイミングを逃し、友達作りに失敗してしまったのだから。

 

「はぁ…。」


 そりゃ深いため息も出てしまうだろう。周りはどんどん打ち解けていっているのに… 。というか地元のやつが多いのか?なんと運が悪い...。




 

 ここにきてもまた何も変わらないのか…


 



 入学式がついに始まった。クラスになじめない俺を置き去りにして…

 





 堅苦しい校長の話やどうでもいい来賓のあいさつなどが終わり、帰りのホームルームで明日の持ち物などの連絡をされ、その日はそのまま下校となった。




 高校デビューを成功した人もいるのだろうが、大体が張り切りすぎてクラスの中で浮いた存在になってしまう。



 俺が物語の主人公でない限り誰かから声などかけられないというのに期待して、待っていた自分が馬鹿みたいだ。と卑下しながら学校から駅まで一人でとぼとぼ歩いた。





 まだ昼を少し過ぎたくらいということもあり、席は比較的空いてはいたが座らずに動きだした電車の中で、ぼっちを回避するための方法を無駄に考えていると、体に強い衝撃が走った。そして、いきなりでバランスを崩してしまったのか、少し離れた場所に立っていた女の子が抱き着くような感じで俺の胸に飛びついてきた。

 


 

 急にブレーキをかけたようでほかの乗客もこの女の子のようになってしまっている人が何人かいた。






 「大丈夫ですか?」

 

そう聞いたとき、彼女がこっちを向いて顔を合わせた瞬間に心臓がとてもうるさくなった。






 ここで俺はいわゆる一目ぼれというやつをしてしまったようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る