五、最初の村 ~Unua vilaĝo~

 周りをうろうろしていた村の人たちも、私たち二人を見ると笑顔で挨拶をくれる。


「こんにちは」


 みんな好奇心旺盛なのかなあ、私たちを取り囲む形になった。

 その中のきれいな長い髪のお姉さんが、にこにこして私たちの前に立つ。

 露出の多い服だけに、わっ、胸でか!


「あなた方はどこまで行くの?」


 そう聞かれても答えようがなくて戸惑っていたら、隣の絵梨香がすぐに答えた。


「どこまでも行くんです」


「そう? どこまでも……」


「はい」


 私は目を上げた。


「ここはどこなんですか?」


「あなたは転生して来たばかりですね」


「はい」


 お姉さん、私だけをじっと見つめてる。


――元気で旅を続けてください。転生して来たばかりの人にはいろいろ大変かもしれませんが、じき慣れます。いいえ、慣れなければだめです……


 お姉さんは何も言っていいないのに、その心の中が私の魂に直接響いてくる。

 お姉さんも私を見て、ふと小首をかしげた。


――あなたはもしかして、マルトクレーム?……


「よくわかりません」」


――特別な方のようですね。たしかにあなたなら、どこまでも行けますよ……


 不思議に思っているうちに、目の前のすべての風景がものすごい速さでぐるぐると回転し始めて、私は思わず絶叫。そして村中の人々が、一人の巨大な人間へと合体していく。


 気がつくともう、私たちは森の外にいた。


「何だったの? 今の!」


 私は顔が引きつっているのが自分でも分かるほどで、とにかく絵梨香に泣きついていた。でも、真理香はいやに落ちついている。


――ここはね、言葉なんていらない世界……


 また、絵梨香の心の中が響いてくる。


「行こう」


 絵梨香はそう言って歩き出すので、私もついて行った。


 広い広い高原のようなところの一本道。ところどころに森がある。遠くには見上げるような山。

 そして相も変わらず太陽は胸の高さの、顔を向けた方にある。

 そんな世界を絵梨香と歩くうちに、いつの間にかハイキング姿の若者がそばを同じ方向へと歩いていた。

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