三、広大な世界 ~La vasta mondo ~
チューブのような細いトンネルをものすごい勢いで急上昇?
そして目もくらむような光が周りを塗りつぶしてる。
その中に人影があるような感覚。
光の人はすごく大きい。でも、怖いなんて感じは全くなくって、懐かしいような、安心感のような、愛に包み込まれるような感覚の中で、私胸が熱くなってた。
※ ※ ※
――優美、優美、優美……
誰かが私の名前を呼んでる。
だんだんとはっきりしていく意識の中で、その声も次第にはっきりしてくる。でも、耳に聞こえる声というより、胸の中に直接響いてきているって感じ。
「優美!」
私ははっきりと目を覚ました。倒れてる私を上から見下ろしているのは……絵梨香!
私は跳ね起きた。
ていうか、ふわっと体が浮いたって感じ。そのまま、何かに引っ張られるようにすっと立ち上がった。
「絵梨香! どこ行ってたのよ。なんで電話かけてくれないの? メッセは見た?」
学校の制服の絵梨香はそれには答えないで、小首をかしげてニコッと笑う。
「えっと?」
その時、私が気づいたこと……たしか夜の街を絵梨香の家へ自転車で向かってたんだよねえ。
なんで明るいの、ここ? いつの間にか昼間?
夕食の後に絵梨香の家に行く途中で、大きな光の玉が二つこっちに向かってきて、衝撃を受けて……
そのあと私、こんな昼間までずっと外に倒れて寝てた?
だめだ……よく思い出せない。
頭の中の記憶にヴェールがかかってるみたい。
「絵梨香、学校休んで、どうしたのよ」
「もういいじゃん、そんなこと」
「よかないでしょ」
――もう、学校なんて行かなくていいんだし……
「え?」
今の何? 絵梨香の声だけど、絵梨香はしゃべってない。絵梨香の想いだけが私の胸の中に直接響いたの?
「それより、ここどこ?」
私は周りを見てみた。
……ここ、私の住んでた町じゃあない!
どっち見ても大自然の真っただ中って感じで、広い草原が続いてる。遠くに森がある。ずっと遠くにはものすごい高い山があって、でもその向こうにも大地は広がっていて……
広い!
どんなに広い平野でも、たとえ海でも、地球は丸いんだからどこかで地平線や水平線になってその先は見えないはずなのに……。
地平線なんてない! 大地は空へと湾曲して、どこまでも広がっている。
この状態を考えようと思っても、頭が働かない。
「ねえ、ここ、どこなのよ?」
絵梨香は何も言わないで笑ってる。
――そのうち分かるよ……
また、絵梨香の想いが胸の中に響く……。
空の色とか他にもいろいろ気づいたことあるけど、今は状況を整理することが先。
「ねえ。南さんって子は? 実は私、あの子から変なメッセージが来て」
「ああ、朱美ね。朱美はいっしょに来れなかった。なんか足が地面にくっついて動けないって」
ただでさえ状況がつかめないのに絵梨香がまた訳の分からないこと言うから、余計に頭が混乱しそう。
その時、ふと気づいた。絵梨香の首全体に赤い
私がそんなことを思うと、ふっと絵梨香の顔が余計に暗くなった。
「行こう」
「行こうってどこに?」
絵梨香はそれには答えなかったけど、さっさと歩きだすので仕方なくそれを追った。
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