第12話 〜幕間〜

「この調子で、彼氏が出来るように頑張ろうぜ」


 片桐くんにそう言われて、


「かれ――⁉ びぶぇっ!」


 わたしは盛大にお茶を噴き出してしまった。

 うぁ~。なにやってんだわたし。最高にダサいじゃん。

 でも、片桐くんがあんなこと言うからいけないんだ。


 ――自分の好きな人から「彼氏できるといいね」なんて死刑宣告とおんなじでしょ。


 かと思えば、


「ちょっと抜けてる人がいいかな。ドジというかさ、不器用な人って可愛いと思うんだよね」


 いや、わたしのことじゃん!

 片桐くんから料理教わった時、わたし思いっきりドジ踏んでたじゃん!

 あの時のわたしナイス!

 人生で初めて、不器用でよかったって思った瞬間だ。

 照れ隠しで殴りつけた右の太ももが痛いぜ。

 加えて、


「ベタだけど笑顔が可愛い人かな。笑った顔が可愛いと、楽しませてあげたいって気持ちが強くなるよね」


 それわたしのことーーー⁉

 片桐くんわたしの笑顔可愛いって言ってくれたよねーーー⁉

 テンション上がりまくる。

 両の太ももがジンジンするけど全然へっちゃらだ。

 これは勝てるんじゃないか? 優勝か?

 ……そう思っていたところで。


 ――あれ? 片桐くん、なんか遠い目してない? わたしのこと見てなくない?


 急転直下するテンション。じわじわと太ももの痛みが気になってくる。

 わ、わたしのこと言ってたんじゃないの?

 あ、そうですかそうですか。

 ふーん。片桐くん、他に好きな人がいるってわけね。なるほどなるほど。納得――


 できるかぁ!


 なんでここまで言ってわたしのこと見てくれないの、片桐くん。

 片桐くんの言ってた条件ドンピシャじゃん、わたし。

 恋愛初心者のわたしには、片思いがこんなにつらくてもどかしいものだなんて知らなかった。

 ううー。つらいよ。


 ――はやく。

 はやくわたしの気持ちに気づいて……片桐くん……。

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